発表

3A-019

駅・車内の安全設備に関する利用者の知識と使用経験

[責任発表者] 山内 香奈:1
[連名発表者・登壇者] 小野間 統子:1, 菊地 史倫:1
1:鉄道総合技術研究所

目 的 駅ホームや車内には,緊急時に利用者が列車を止める非常停止ボタン等が配備されている。近年,車内の非常停止ボタンに,従来搭載されていなかった係員と通話ができるインターホン機能を備えた設備(非常通報器)を設置する鉄道会社も増えている。また,駅ホームでは,非常停止ボタンとは別に,インターホン設備(連絡装置)を設置する鉄道会社も増えている。そのため,非常停止ボタンやその関連設備の仕様や設置状況は,駅と車内で,また,鉄道会社間でも異なることがある。ただし,利用者は,このような差異に気づく機会は少ないと考えられ,いざという時に適切に使用してもらうためには,日ごろからの啓発活動の強化が必要である。従来の啓発活動は,駅や車内のポスター,案内放送,冊子などによる一方向的な訴求が多く,これらの方法では,そもそも関心の低い利用者や鉄道を利用する機会が少ない利用者にメッセージが届きにくいという問題がある。これらを少しでも解消するため,新たなタイプの啓発活動を探索することも重要と考えられる。そこで本研究では,その初期段階として,(1)設備間での利用者の知識と使用経験の差異,および,(2)知識や使用経験に関する利用者の属性差(性別,年代,鉄道利用頻度)について検討する。方 法 参加者 鉄道を月数日以上利用している関東地方在住の18~80歳の2655人(男性1327人・女性1328人)。平均年齢は45.59歳(SD = 18.29)。
手続き Web調査による質問紙調査を実施。参加者は車内の非常通報器(通報器),駅ホームの非常停止ボタン(ボタン)と連絡装置について,実際に使われている複数の写真をみて,下記の項目を評価した。
調査項目 知識_使用目的・設置場所の2項目について2件法(知っている・知らない),経験_実物をみた,使用を迷った,使用した,の3項目について2件法(有・無)で評定を求めた。利用者属性_年齢,性別,普段の鉄道利用頻度(月に数日,週1・2回,週3・4回,週5回以上)について尋ねた。なお,分析の際,年齢を4つのカテゴリ(18ー24歳,25ー44歳,45-64歳,65-80歳)に分類し用いた。
以降の分析では,有意水準は5%に設定した。
結 果 と 考 察 (1)設備間による差異 各設備の知識と使用経験に関する5項目について,「知っている」と回答した人の割合を求めた(表1)。設備間の割合について検定(Cochran’s Q test)を行った結果,使用を迷った経験以外の4項目は有意であった。これら4項目について,Bonferroni法を用いて,98.3%信頼区間を推定し,有意差がある組み合わせを表1に併記した。
 
知識2項目については,表1から,設備間で差がみられ,非常停止ボタン,通報器,連絡装置の順に,使用目的や設置場所を知っている人が少ないことが明らかになった。ただし,知っている人の割合は,いずれも6割を超えず,利用者の周知状況は高くはない。
設備を実際にみたことがある人の割合は,設備間に有意な差がみられ,非常停止ボタンが最も高く,通報器,連絡装置の順に低くなる。連絡装置は,ホームに設置されていない会社もあるため,最も低い割合になったと考えられる。設備を使うことを迷った人の割合は,設備間で差はなかったが,設備を使ったことがある人の割合は,通報器と連絡装置,および,非常ボタンと連絡装置の間に有意差がみられ,連絡装置が最もよく使われていることが明らかになった。ただし,連絡装置の使用経験がある人の割合は1割未満と少ない。
(2)年代・性別・利用頻度による差異
知識 3つの設備について,知識を問う2項目の得点を合計した合成変数(α=.67)を求め,それを従属変数,利用者の年代,性別,利用頻度を説明変数とする3要因分散分析を行った。その結果,主効果,交互作用効果とも有意ではなく,設備に関する知識の多寡に,利用者の属性による顕著な差異は認められないことが示された。
経験 3つの設備について,使用を迷ったり,実際に使ったりした経験を問う2項目の得点を合計した合成変数(α=.50)を求め,それを従属変数,年齢,性別,利用頻度を説明変数とする3要因分散分析を行った。その結果,知識と同様,主効果,交互作用効果ともに有意ではなく,設備の利用経験に,属性差はみられないことが明らかになった。
駅や車内の安全設備に関する知識や経験について,利用者属性による顕著な差異は認められなかったことから,普段,鉄道を利用している人のみならず,鉄道をあまり利用していない人にも広く啓発活動を行う必要があると考えられる。そのため,現在の駅や車内で行われている啓発活動に加え,他の媒体などを用いた従来とは異なる方法も取り入れ,社会に対し,広く啓発活動を行うことが課題となる。今後は,そのような啓発活動の具体的方法について検討する。

キーワード
鉄道/緊急対応/安全設備


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