発表

3A-017

畏敬の念が内集団に対する協力的態度に及ぼす影響

[責任発表者] 高野 了太:1,2
[連名発表者・登壇者] 野村 理朗:1
1:京都大学, 2:日本学術振興会

目的
 現在の認知的枠組みを更新するような,広大な刺激に対する感情反応をawe(畏敬・畏怖)と呼ぶ (Keltner & Haidt, 2003)。aweを構成する2つの中心的特徴として,自分よりも大きな存在を感じるperception of vastnessと,既存のスキーマの更新を求めるneed for accommodationが提案されている。さらに,哲学的・理論的研究に基づき,aweは経験や評価等の周辺的特徴により多様となる。重要な点として,先行研究では,大自然の絶景等から喚起されるpositive-aweと,自然災害等から喚起されるthreat-aweが弁別され,認知的評価に対する効果が異なることが示されている(Gordon et al., 2017)。
 先行研究では,positive-aweが自己の利益へのこだわりを低下させ,見知らぬ他者への協力傾向を促進することが示されている(Piff et al., 2015)。一方で,他者との関係性の違いによってaweの影響がどのように異なるのかについては明らかにされていない。東日本大震災の後,「家族とのつながりの意識が高まった」と回答した割合が67.2%にのぼることが,内閣府の調査(2012)で示されている。存在脅威管理理論では,死の脅威(自身の死やテロ等も含む)が自身の文化的世界観に対する固執を促し,内集団を好み,外集団を嫌う集団間バイアスを強めることが明らかにされている(Greenberg et al., 1990)。これらの知見から,特に脅威知覚を伴う刺激から喚起されるthreat-aweがもたらす利他性は,内集団に偏る可能性が示唆される。ゆえに本研究ではthreat-aweの方がpositive-aweよりも,内集団(親類や友人)に対する協力的態度を高める可能性について検討した。

方法
実験計画 Awe導入の種類(positive-awe,threat-awe)による参加者間2要因計画であった。
 実験参加者 オンラインで募集したモニター432名(女性256名,平均年齢38.93±10.37歳)が参加した。
 材料と手続き 参加者はpositive-aweあるいはthreat-awe経験に関する文章と画像が呈示され,それをもとに過去のawe経験を思い出し,記述した(Gordon et al., 2017)。その後,感情状態(畏敬・畏怖等の16感情について9件法),対象(自然・人間・スピリチュアル・その他),自己縮小感(7件法),親類や友人への協力的態度(3項目7件法)について回答した。

結果
 感情評定について,いずれも評定平均値が5.5を上回ったが,畏敬はpositive-aweの方が,畏怖はthreat-aweの方が高かった(|ds| = .48, ps < .01)。自己縮小感について,positive-aweとthreat-aweいずれも平均評定値が2.5を下回ったが,条件間に有意な差はなかった(d = .06, p = .51)。
 親類や友人への協力的態度について,対応のないt検定の結果,positive-aweよりもthreat-awe条件においてより高い評定値が得られた(d = .54, p < .01)。
 さらに,threat-awe条件において,喚起させた対象の種類によって,協力的態度に対する効果がどのように異なるのかについて追加分析を行った結果,対象の主効果が有意であり(η2p = .17, p < .01),多重比較(Holm法)によって,自然だけでなくスピリチュアルな経験も親類や友人への協力的態度を高めることが示された(図1)。 

考察 
 実験の結果,threat-awe条件においてpositive-awe条件よりも親類や友人への協力的態度が高まることが示された。一方で,自己縮小感の評定は変わらなかったことから,positive-awe同様,threat-aweも自己の利益への囚われを低下させるが,その結果もたらされる利他性は内集団に偏る可能性が示唆された。興味深いことに,threat-awe条件において,自然だけでなくスピリチュアルな経験においても協力的態度が高まった。この結果から,aweの対象の種類によって社会性に対する効果が異なることが示唆された。以降の研究では,外集団への態度に対するaweの効果についての検討が求められる。

主要引用文献
Gordon, A. M., Stellar, J. E., Anderson, C. L., McNeil, G. D., Loew, D., & Keltner, D. (2017). The dark side of the sublime: Distinguishing a threat-based variant of awe. Journal of personality and social psychology, 113(2), 310.

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