発表

3A-013

被虐待児に寄り添う支援とはなにか
――自立援助ホーム職員の寄り添い尺度作成の試み――

[責任発表者] 横山 絵麻:1
[連名発表者・登壇者] 江原 稔#:2, 桂川 泰典#:3
1:早稲田大学, 2:琉球大学, 3:早稲田大学人間科学学術院

 目 的
 自立援助ホームは,15歳から20歳未満の児童や若者(以下,子ども)を主な対象に社会的養護を行なう家庭環境に近い施設である。入所する子どもの約7割が被虐待経験を有しており,職員は虐待を受けた子どもの深刻な心の傷と自尊心を回復することが支援における大きな課題とされる(村井・小林,2002)。自立援助ホームの子どもは大半が就業しており,平均在所期間は約9ヶ月である。その間,職員は子どもをありのまま受けとめ,支援の基本となる寄り添いの専門家としての立ち位置が重要となる(厚生労働省,2015)。
 しかし,「寄り添う支援」の重要性は高まる一方,定義および具体的な内容はいまだ不明確のままであり,実証的な研究も十分ではない。そこで本研究では,虐待を受けた子どもに「寄り添う支援」とはなにかを質問紙尺度の作成を通じて明らかにする。研究1では尺度の項目収集と自立援助ホーム職員による自由記述の分類,研究2では因子分析による尺度作成を行なった。なお,本研究は早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施された(承認番号:2017-052)。
 研究1 職員の寄り添い尺度の項目収集
方 法 調査対象:首都圏の自立援助ホーム職員33名(男性19名,女性14名,平均年齢40.7歳,SD=12.4歳)
実施時期:2017年7月下旬~8月上旬
調査方法:インターネット調査法による質問紙調査
調査材料:職員および子どものデモグラフィックデータ,自由記述質問(虐待を受けた子どもの特徴,職員の「寄り添う支援」,子どもの変化,寄り添うとはなにか)
結 果 KJ法による分類の結果,虐待を受けた子どもの特徴では《外見》,《他者への意識や態度》,《ポジティブ要素》,《ネガティブ要素》,《問題行動》の5カテゴリー,子どもの変化では《他者への安心と信頼》,《外見と内面の変化》,《問題行動の改善》,《自立に向けた意識》の4カテゴリー,職員の「寄り添う支援」では《あたたかみのある家庭的な支援》,《ありのままを受け入れる支援》の2カテゴリー,寄り添うとはなにかでは,《ありのままの理解》,《安心できる味方としての存在》,《子どもに必要な支援の継続》の3カテゴリーが抽出された。次に,自由記述質問項目から尺度項目原案を作成するため,専門家3名による内容的妥当性の検討を行ない尺度の項目原案として38項目を作成した。また,「寄り添う支援」の定義を「あたたかみのある家庭的な関わりの中で子どもをありのまま理解し,安心できる味方として存在しながら必要な支援をし続けること」とした。
 研究2 職員の寄り添い尺度作成の試み
方 法 調査対象:全国の自立援助ホーム職員152名(男性70名,女性81名,無回答1名,年齢不明4名,平均年齢44.2歳,SD=13.5歳)
実施時期:2017年10月下旬~11月上旬
調査方法:インターネット調査法および集合調査法による質問紙調査
調査材料:職員のデモグラフィックデータ,研究1で作成した質問紙(38項目)
結 果 尺度を作成するため,主因子法プロマックス回転による探索的因子分析を行なった。結果,26項目4因子で構成される“自立援助ホーム職員の寄り添い尺度”が作成された(Table1)。
 第1因子は“見つけてかたちづくる”(9項目,α=.84),第2因子は“気持ちと時間の共有”(6項目,α=.75),第3因子は“子どもの気づきを支える”(5項目,α=.72),第4因子は“味方としての子ども理解”(6項目,α=.75)と命名し,Cronbachのα係数は概ね十分な値が示された。また,各下位因子間において有意な正の弱いまたは中程度の相関がみられた(r=.34~.62,p<.01)。次に,年代による差を検討するため一元配置分散分析を行なった結果,すべてにおいて有意な差はみられなかった。また,勤続年数の差を検討するため,3年未満,3年以上10年未満,10年以上に群分けし,一元配置分散分析を行なった結果,3年未満の職員は他の2群に比べて第1,2,3因子のすべてにおいて5%水準で有意に得点が低く,10年以上の職員は他の2群に比べて第1,2,3因子のすべてにおいて5%水準で有意に得点が高いことが示された。
 考 察
 研究1では,尺度の項目収集と自由記述の分類を行なった。結果から,職員は虐待を受けた子どもの特徴と変化を外見,内面,行動から丁寧にとらえており,村井・小林(2002)の指摘する深刻な心の傷と自尊心の回復に大きく寄与していると考えられる。
 研究2では,因子命名と因子構造から「寄り添う支援」の構成要素を具体的に明示できたと考えられる。また,勤続年数3年未満の職員は,10年以上の職員との得点差が第4因子以外すべて低かった。よって,「寄り添う支援」には職員の年齢よりも勤続年数すなわち子どもとの時間や経験の多さが影響する可能性が考えられる。今後は,職員が実際に行なう寄り添いと尺度得点との関連を検討する必要がある。

キーワード
自立援助ホーム/寄り添う支援/子ども虐待


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