発表

3A-010

チームによる失敗と成功の振り返りがチームの成果に及ぼす影響

[責任発表者] 藤村 まこと:1
1:福岡女学院大学

 【目的】
 人は自他の失敗や成功の振り返り(reflection)を通して経験から学ぶことができる。そして,振り返りとは"行動の原因と結果の因果関係に関する原因分析”,ならびに"その分析結果にもとづく今後の行動に関する仮説生成”によって構成される(藤村,2014)。本研究では,チームレベルでの失敗と成功の振り返りの効果を明らかにするため,大学生のスポーツチームを対象として振り返りとリーグ戦の順位結果との関連を検討する。
 チームによる失敗と成功の振り返りについては,After Action Reviews(AAR)が軍隊や医療などの高リスク環境におけるチームや組織の学習プロセスとして知られている。これは,行為(Action)を実行した後に振り返る(Review)ことで,行為者の意思決定や行為の分析,結果や成果に対する行為者の貢献を体系的に評価する手法である(cf. Ellis & Davidi, 2005; Ellis, Ganzach, Castle & Sekeley, 2010)。AARの効果を検証する実験室実験では,個人レベルの振り返りは失敗情報と成功情報のいずれでも(Ellis, Mendel, & Nir, 2005),また,自己経験だけでなく録画された他者経験(Ellis et al., 2010),学習効果があることが示されている。そしてすでにチームレベルの振り返りも学習効果が確認されている(Villado & Arthur, 2013)。
 このように,チームによる振り返りの効果は,すでに実験室実験にて確認されている。よって本研究では,実存するチームでの振り返りの効果検証を行うことを第一の目的とする。そして第二の目的として,チームの振り返りを促進する要因として,チームの能力の可変性や拡張性に対する信念,ここでは知能観を測定し,その影響を検討する。

 【方法】
 調査対象者は福岡地域にて同一競技を行っている部活動の男女チーム。10チーム209名から回答が得られた(年齢:M=19.80,SD=1.13,男性:4チーム,47名,女性:6チーム,162名)。調査時期は2016年度の11月から1月頃。質問項目として,①自チームの失敗の振り返り,②自チームの成功の振り返り,③他チームの失敗の振り返り,④他チームの成功の振り返りについて,藤村(2014)の尺度をもとに各振り返りの程度を2項目5件法で尋ねた。また,⑤チームの知能観は,Hong, Chiu, Dweck, Lin, & Wan(1999)による個人の知能観尺度をチーム用に修正し3項目5件法で尋ねた。逆転項目として扱い,得点が高いほどチームの能力や技術は,柔軟で可変性を持つと捉えていることを示す。⑥チームの順位は,その年度のリーグ戦の結果をもとに算出した。

 【結果と考察】
 得られたデータより,各尺度の記述統計と相関関係を算出した(Table1)。そして,尺度間の関係性を明らかにするため,構造方程式モデリングを実施した結果,Fig.1に示したモデルにおいて十分な適合指標が得られた。
 この結果から,チームによる「失敗の振り返り」と「成功の振り返り」は,「チームの意欲」と「チームの自信」を高め,その結果リーグ戦での「チームの順位」に影響を及ぼし,チーム・パフォーマンスを高めることが分かった。このことから,実際に存在するスポーツチームにおいても,チームでの振り返りが効果を持つことが示されたといえるだろう。また,振り返りの影響は,チームの意欲や自信といった心理的な指標だけでなく,間接的ではあるがリーグ戦順位という客観的な指標に対しても,ポジティブな効果を持つことが示された。次いで本研究の結果では,チームの振り返りの促進要因として「チームの知能観」の影響が明らかとなった。知能観とは,チームの能力は変化可能であり,成長の余地があるという価値観や信念であり,学習志向性の高さと関連を示す。本研究では,チームの知能観として可変性を信じ,学習志向性が高いほど,チームでの失敗と成功の振り返りを行うことが示された。今後は,チームにとって効果的な振り返りの手続きや内容について明らかにすることがチーム学習の理解と促進のために必要だろう。また,本研究では,他チームの失敗や成功の振り返りの影響は示されなかった。この点については今後方法論を見直すなどしてその影響を検証する必要がある。

キーワード
失敗と成功/振り返り/リフレクション


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