発表

3A-009

線描を用いた心的イメージの測定
感情語と幸福概念を題材に

[責任発表者] 井出野 尚:1
[連名発表者・登壇者] 玉利 祐樹:2, 竹村 和久:3
1:徳山大学, 2:静岡県立大学, 3:早稲田大学

 はじめに
 線分の象徴性に関して,これまで芸術心理学や言語心理学などの諸領域において,感情や質感などを表現した言葉との対応関連が検討されてきた(Lundholm,1921, Werner & Kaplan, 1963, Maurer, Pathman, & Mondloch, 2006)。先行研究では,線分の方向や曲線が特定の言語イメージや感情と対応することが示されている。
 本研究では,自由に線分を描くことによって,主体のもつ当該概念のイメージが線分に投影されると仮定し,複数の概念へのイメージの測定を試みた。また,先行研究では,曲線の有無などの定性的な解析にとどまっていたが,本研究では,定型フォームを作成し,右から左へと線分を描くことにより,定量的な検討を試みた。
 方法
調査対象者 大学生23名(女性2人,男性21人,平均年齢19.73 (SD0.94))。
線描課題 Figure 1に示したように点線での正方形(68mm ×68mm)の枠組み内に,2本の垂直方向の線分(55mm)を50mm間隔で配置した。線描の対象とした項目は,自分・社会・家族・未来・過去・現在・幸福・不幸・健康・不健康と,感情として喜び・怒り・悲しみ・楽しみ・安心・恐れ(恐怖)を,そして評価語として好き,嫌いの18項目を採用した。A4用紙に6つの正方形と,その左上に概念を示し,回答用紙を作成した。
手続き 線分課題では,それぞれの言葉について,その言葉からイメージされる線を1本だけ自由に描くこと,左側の垂直方向の線分から出発して,右側の垂直方向の線分に着くように描くこと,そして具体的な図を描かないことを教示した。線分課題の実施後に,幸福尺度の測定を行った。
分析 始点・終点の位置,方向性,ピーク数,ピーク間距離などの指標を作成することが可能であるが,本研究では,Figure 2に示した始点・終点間の垂直方向距離とピーク数について報告する。
 結果
 Figure 3は,左側の線分上の始点と,左側の線分上の終点との間の垂直方向の距離を概念ごとに示している。Figure 3から,悲しみ・恐れ,不幸・不健康といったネガティブな感情・概念は右上がりの線分であり,また,喜び・楽しみ,健康・幸福といったポジティブな感情・概念の線分は,右下がりであることが示されていた。一方,怒りに関しては,右上がりであった。時制の概念では,未来は右上がり,過去は右下がり,そして現在は両者に比べて,比較的平坦な線が描かれていた。Figure 4には概念ごとの平均ピーク数を示した。怒りが最多ピーク数を示し,次いで恐れのピーク数が多かった。一方,安心が最も少ないピーク数を示し,次いで過去,現在,幸福のピーク数が少なかった。
 考察
 線分の方向性(上昇・下降)とピーク数と,感情の質(ポジティブ・ネガティブなど)や強度との関連が示唆された。今後は,タブレットPCを用いた線描測定のプラットフォームの作成と,フーリエ解析などを用いた線分の定量的解析手法の確立を課題とする。
 引用文献
Lundholm, H. (1921). The Affective Tone of Lines.  
 Psychological Review, 28(1), 43-60.
Werner, H., & Kaplan, B. (1963). Symbol formation.  
 New York : Wiley.
Maurer, D., Pathman, T., & Mondloch, C. J. (2006). The
 shape of boubas. Developmental science, 9(3), 316- 
 322.
 謝辞
 本研究は,文部科学省私立大学研究ブランディング事業の助成を受けたものである。

キーワード
線描/潜在的測定/幸福


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