発表

3A-007

保育職への適応
卒業時と就職1年目の比較

[責任発表者] 設楽 紗英子:1
1:作新学院大学女子短期大学部

  目 的
 保育者などの専門職では,養成課程で実習を積み重ねながら成長する。そこで職業や職場,そして個人の適性について得た具体的な情報は,リアリティショックのように,ポジティブにもネガティブにも現実と期待の相違となり,保育職への適応に影響する。本研究では,保育系実習における予期せぬ現実の経験が在学中の保育職への適応,さらに,就職後の保育職への適応にどのように関連するのか縦断的に検討することを目的とする。
  方 法
調査時期:2018年3月(Time 1),2019年3月〜4月(Time 2)。
調査対象者:保育者養成系の短大2年生135名。回答に不備があるものを除き,Time 1(卒業時)で113名,Time 2(卒業後1年)で30名が分析対象となった。Time 1 では108名が保育系に内定し,Time 2では全員が保育系に就いていた。
調査内容:保育系実習における予期せぬ現実(Time 1):松田他(2016)より2因子18項目5件法。
保育職への適応:三木・桜井(1998)の保育者効力感(Time 1, 2),1因子10項目5件法。小平(2011)の大学コミットメント(Time 1),4因子16項目5件法。
予期的社会化(Time 2):尾形(2012)。8項目5件法。
離職意思(Time 3):1項目2件法。
  結 果 と 考 察
予期せぬ現実と卒業時の保育職への適応の関連 
 Time 1のデータを用い,予期せぬ現実と,卒業時の保育職への適応の関連を検討するため,相関分析を行った。その結果,保育者効力感が予期せぬ現実の保育現場の体感(以下,体感)と中程度の正の相関,子どもとの関わりの厳しさ(以下,困難)と低い負の相関を示した。これは松田他(2016)の初回実習後の結果と一致しており,本研究では,卒業時まで,体感や困難の認識が残る重要性が示された。大学コミットメントとは,体感が職業の継続性以外と中程度の,困難が職業の継続性と低い正の相関を示した。これは,濱田他(2017)では見られなかった相関関係であり,短大2年生と4年制大学の3年生の違いを示しているかもしれない。
卒業時と就職1年目の保育職への適応の関連
 Time 1の保育者効力感と,Time 2の保育者効力感及び離職意思の関連を検討するため,単回帰分析を行った。その結果,Time 1の保育者効力感が,Time 2の保育者効力感と正の,離職意思と負の関連を示す傾向を得た(Table 2)。数年の有経験保育者を対象とした若尾・池谷(2017)とは異なる結果である。就職初期における保育の手応えの重要さを示していよう。
予期せぬ現実経験タイプ別の保育者効力感の変化
 Time 1の予期せぬ現実経験と保育者効力感に対して,Ward法によるクラスター分析を行い,3クラスターを得た。3クラスターを比較すると,第1クラスターは体感と保育者効力感が高く困難が低く,第2クラスターは困難が高く保育者効力感が低く,第3クラスターは体感が低かった。この3クラスターにしたがい対象者を3群に分け,Time 1からTime 2の保育者効力感の変化を検討した。その結果,クラスター1では低くなる傾向が見られ,クラスター2では有意な増加が見られた(Table 3)。このことから,在学中の実習で困難な経験は少なく体感をより多く経験しより高い自信を得た者が,就職後もそれを維持もしくは高めていくというものでもない。逆に,ある程度体感を経験したがより多くの困難を経験した者は,自信もより低いが,卒業後に保育者効力感を高めていく。そして,体感も困難も中程度であった者は,保育者効力感に目立った変化は見られなかった。体感の経験や,どの時点で困難を経験するかで,就職後の成長の仕方が変わる可能性が考えられるのではないだろうか。なお,この3群の間では離職意思に有意な差は見られなかった。今後,職場環境の要因なども含めた検討が必要である。

キーワード
リアリティショック/トランジション/保育者


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