発表

3A-006

連続して増減する情報と価値判断
:価格変化量による影響の検討

[責任発表者] 野田 理世:1
[連名発表者・登壇者] 田邊 宏樹:2
1:金城学院大学, 2:名古屋大学

 私たちは,自分を取り巻く様々な文脈情報を統合して,行動を選択する。例えば,景気動向指数が,昨年から「徐々に低下して105になった」場合と,「徐々に上昇して105になった」場合,同じ数値が示されても感じ方が異なり,実際の購買行動に異なった影響を与えることもある。これは,判断の基準となる参照点が「低下した場合」と「上昇した場合」では異なり,一般に判断対象が基準よりも高い位置にある時は利得(幸福)を感じ,低い位置にある時は損失(不幸)を感じるためである(Kahneman & Tversky, 1979)。
 判断前に文脈情報が一連の情報として連続して与えられた場合,一般に,人々は,連続して価値が増加するものを好み(Ariely, 1988; Chapman, 1996, Lowenstein & Prelec, 1993; Lowenstein & Sicherman, 1991),連続して価値が減少するものを,好まない傾向がある(Clark & Georgellis, 2004)。Noda & Tanabe (2017, 2018)では,この影響を実験的に検討したが,価値の連続性による明確な影響を確認できなかった。本研究では実験手続きに改良を加え,連続して増加,もしくは減少する文脈情報が,価値判断に及ぼす影響について,価格変化量を変数として導入した検討を行う。
方 法
 独立変数 系列種類(2;上昇,下降),系列数 (2; 2系列,5系列),価格(4; 120円,80円,40円,0円)
 従属変数 売却時の満足感
 材料 刺激は大麦の価格を用いて,価格が上昇する上昇系列条件,下降する下降系列条件で構成された。また,大麦の価格が,2日で変化する2系列条件,5日で変化する5系列条件が設定された。価格の変化量は,120円,80円,40円,0円であった。こらにフィラー系列を入れた合計100系列を用いた。
 手続き 実験参加者は,パソコンを用いた大麦の取引ゲームに参加し,購入した大麦を売るタイミングで満足感に回答した。実験参加者は1000円渡され,そのお金で大麦を購入して,その大麦を売った。1000円と,売買を通して得られた利得(失った損失)の差額は実験の最後に与えられた。
 大麦購入のタイミングは決まっており,最初の画面で購入した (e.g., a月5日 100円ならば,100円で購入),次の画面で翌日の大麦の価格が提示され(e.g., a月6日 130円),「大麦を売りたいか」が質問された。大麦の価格の変化量は4種類あり,2日,もしくは5日かけて,価格は変化した。実際の購入の有無は,ルーレットで決定した(ルーレットは実験者により操作)。ルーレットで〇が出ると,大麦を売り,その時の満足感を7段階で回答した。×が出ると次の日の価格が示され,同じように「売りたいか」が質問され,ルーレットで購入を決定した。大麦を売ると,別の日の一連の大麦の価格が示され,試行は合計100試行あった。
結 果と考 察
 系列数×価格の平均満足度評定値をFigure 1に示す。価格上昇条件で,2要因分散分析を行った結果,価格の主効果(F (3,32) = 15.98, p<.001),系列数×価格の交互作用(F (3,32) = 2.87, p<.05)が認められた。価格の単純主効果検定の結果,2系列条件で,0円よりも,40円(p<.001),80円(p<.05),及び120円(p<.001)で満足度が高かった。5系列条件では,0円よりも,80円(p<.01),120円(p<.001)で満足度が高く,先行研究と一致する結果が得られた(Ariely, 1988; Chapman, 1996, Lowenstein & Prelec; Lowenstein & Sicherman, 1991)。系列数の単純主効果検定の結果,40円条件で5系列よりも2系列で満足度が高い傾向が認められたものの(p<.10),概して,系列数による明確な差異はみられなかった。価格が連続して上昇する場合,明確に,系列数による差異は認められなかったといえる。
 価格下降条件で,2要因分散分析を行った結果,価格の主効果(F (3,32) = 20.07, p<.001),系列数×価格の交互作用(F (3,32) = 3.63, p<.05)が認められた。価格の単純主効果検定の結果,2系列条件で,0円よりも,40円(p<.05),80円(p<.01),120円(p<.001)で満足度が低く,また40円,80円よりも120円でも満足度が低かった(ps<.05)。5系列条件では,0円条件よりも,40円,80円,120円で満足度が低く(ps<.001),先行研究と一致する結果であった(Clark & Georgellis, 2004)。系列数の単純主効果検定の結果,40円(p<.05),及び80円条件(p<.10)で2系列よりも5系列で満足度が低く,徐々に損失が下がる5系列を嫌った結果が認められた。ただし,120円条件では,2系列と5系列に差異が認められなく,損失が相対的に大きな場合は,2系列で一回で損失が与えられた時に満足度が低くなった。
 ただし,この5系列で満足度が低かった結果は,連続して損失が与えられることを嫌ったのか,不確実性を嫌ったのか明らかではない。本実験では,参照点を移動させることを目的として,価格提示後,売りたいかを尋ね,その売却を決める○×ルーレットを実施した。その結果,非常に複雑な手続きとなったため,5系列条件の場合,実験参加者が不確かさを覚え,それを嫌った可能性も否めない。今後は,この点を詳細に吟味する必要がある。

キーワード
相対的価値判断/系列効果/トレンドバイアス


詳細検索