発表

2D-019

データ駆動処理による顔魅力評価の普遍性と文化差のモデル化

[責任発表者] 中村 航洋:1,2,3
[連名発表者・登壇者] 三國 珠杏#:3, ヘルムート レダー#:4, 渡邊 克巳:1,5
1:早稲田大学, 2:日本学術振興会, 3:慶應義塾大学, 4:ウィーン大学, 5:ニューサウスウェールズ大学

目 的
「美は見る者の目に宿る」という諺に象徴されるように,顔魅力の評価基準は個人を取り巻く環境や経験によって多様化する。これまでの顔魅力研究は,さまざまな人種の顔に対する魅力の印象評定値が異文化間で相関することを根拠に,顔魅力評価の通文化的普遍性を強調してきた。実際に,平均性や対称性といった顔の物理特性については,文化や国を超えて魅力の判断基準となっていることが分かっている (Langlois et al., 2000)。その一方で最近の文化比較研究では,肌の色に対する選好がヨーロッパとアジアの2つの文化圏の間で異なっているなど,魅力評価の文化的多様性が指摘されるようになった (Han et al., 2018)。しかしながら,顔の個性はさまざまな顔の形態特徴 (顔パーツの配置,大きさ,形状など)と表面特徴 (肌の色,明るさ,テクスチャなど)によって表現され,そのうちどの顔特徴において魅力評価の文化差が生じているかについては未だ十分に検討されていない。こうした問題に対してNakamura & Watanabe (in press)は,データ駆動処理を用いることで,魅力印象を規定する顔の形態・表面特徴の組み合わせを同時にモデル化できることを示している。本研究では,Nakamura & Watanabe (in press)の顔印象のモデル化手法を拡張し,日本人とオーストリア人の顔魅力評価を比較することで,魅力評価の普遍性と文化差をモデル化することを目的とした。
方 法
実験参加者 日本人の成人20名 (女性10名; 平均年齢19.35歳, SD = 1.31)およびオーストリア人の成人15名 (女性10名; 平均年齢22.88, SD = 2.66)が本実験に参加した。
刺激 FaceGen Modellerを用いて無作為に生成された男性顔200枚と女性顔200枚を用いた (Nakamura & Watanabe, in press)。
手続き 評価者に顔刺激を1枚ずつ提示し,その顔魅力を9件法で評価することを求めた (1:全く魅力的でない,9:とても魅力的である)。男性顔と女性顔は別ブロックで提示され,評価の順序は評価者間でカウンターバランスを取った。
魅力印象のモデル化 日本人とオーストリア人の両方において,顔魅力評価の評定者間一致度は高かったため (Cronbach’s alpha > .90),日本人20名とオーストリア人15名それぞれの平均魅力度評定値を分析に用いた。
 本研究ではFaceGen上で構成された顔空間モデルを用いて分析を行った。この顔空間上では,多数の顔画像に対する主成分分析の結果,個々の顔の形態と表面特徴が100次元の顔特徴ベクトルとして表現される (Nakamura & Watanabe, in press)。この100次元の顔特徴ベクトルと魅力印象が線形的な関係にあると仮定した上で,主成分と魅力度評定値の内積を計算し,標準偏差 (SD)を単位として顔特徴を強調した。これにより,魅力印象に寄与する顔特徴を可視化した。

結 果 と 考 察
図1に,日本人評価者とオーストリア人評価者それぞれの平均魅力度評定値に基づく魅力印象の変調の例を示した。図1より,日本人評定者の魅力モデルに基づいて顔特徴を強調すると,顔の性別にかかわらず,大きな目,長く幅の狭い鼻,明るい肌色を持つ顔が現れることが明らかになった。一方で,オーストリア人評定者の魅力モデルに基づいて顔特徴を強調すると,顔の性別にかかわらず,大きな目,長く幅の狭い鼻,鋭角的な輪郭を持つ顔が現れることが明らかになった。日本人評価者とオーストリア人評価者の魅力モデルを比較すると,日本人は明るい肌色に対しての選好が強く,オーストリア人は厚い唇に対する選好が強いことが示唆された。本研究での文化比較により,アジア文化圏に属する日本人とヨーロッパ文化圏に属するオーストリア人の間での魅力評価の普遍性と文化差をモデル化し,可視化することができた。本研究では,データ駆動処理により顔魅力の普遍性と文化差がどのような顔特徴にあらわれるかをモデル化することはできたが,魅力評価の文化差がどのような要因によって引き起こされるのかについてはさらなる実証研究が必要とされる。
引 用 文 献
Han, C., Wang, H., Hahn, A. C., Fisher, C. I., Kandrik, M., Fasolt, V., … Jones, B. C. (2018). Cultural differences in preferences for facial coloration. Evolution and Human Behavior, 39(2), 179–190.
Langlois, J. H., Kalakanis, L., Rubenstein, A. J., Larson, A., Hallam, M., & Smoot, M. (2000). Maxims or myths of beauty? A meta-analytic and theoretical review. Psychological Bulletin, 126(3), 390–423.
Nakamura, K., & Watanabe, K. (in press). Data-driven mathematical model of East-Asian facial attractiveness: The relative contributions of shape and reflectance to attractiveness judgements, Royal Society Open Science.

キーワード
顔魅力/データ駆動型モデル/文化差


詳細検索