発表

2D-017

周産期のグリーフ・ケアの具体的な行為に対する一般的な態度の多重応答分析を用いた探索的分析

[責任発表者] 増田 匡裕:1
1:和歌山県立医科大学

目的
 本研究は周産期のグリーフ・ケアの具体的な行為に対する態度の構造を,多重応答分析(Multiple Correspondence Analysis: MCA)を用いて分析するものである。赤ちゃん(乳児・新生児・胎児)を亡くした家族に対するグリーフ・ケアに対する一般からの関心も徐々に高まりつつあり,周産期における喪失体験(ペリネイタル・ロス)は,最近はマンガやドラマにも取り上げられている。グリーフ・ケアへの取り組みの早い施設では対応のマニュアル化や遺族会によるピア・サポートの組織化などの整備が進んでいる一方,取り組みに関心の弱い施設との差が広がっている。但し,医療者がグリーフ・ケアを実施しても,サポートと見なされるか否かは別問題である。ソーシャル・サポート研究が一貫して主張しているように,実際にサポートの効果が確認できるのは被援助者にサポートとして知覚された行為であることを鑑みれば,マニュアル化は必ずしも医療者が目指すケアの実践とはなり得ない。
 本研究では,2018年現在専門家には“定番”と見なされる医療者による15種類の具体的な行為が,一般的にどのように受けとめられるかを探索的に分析する。今回の刺激となる15項目は2006年から2007年にかけて実施した周産期の医療者を対象とする調査でグリーフ・ケアの行為として好評価を得たものとして抽出されたものである。これらをウェブ調査会社のリサーチ・パネルを通じて募った回答者に対して提示することで,現在の我が国の成人一般の反応を探索的に分析する。医療従事者の中においても,グリーフ・ケアの意義や効果については一様ではないため,本研究ではそれぞれの行為の認知度や肯定的・否定的評価を8つの質問への多重回答で調査する。
方法
 20代,30代,40代,50代,60代以上の5つの男女サンプル群に各150名の割り付けを行い,2018年12月18日から25日までの8日間で日本国内在住の成人男女1533人からの回答を得た(同意画面総回答数は2272である)。ほぼ全問無回答またはあり得ない回答をした回答者をスクリーニングした後,必要な項目の質問への無回答者を除いた1053人を分析対象とした。
 質問票の主な構成はデモグラフィック変数測定項目の他に,子どもの喪失体験に関する質問,ピア・サポートに対する態度に関する質問項目,及び15項目のグリーフ・ケアの具体的な行為への評価をマトリックス形式の8問で尋ねる項目からなる。質問票の内容を含め本研究は和歌山県立医科大学研究倫理委員会の承認を受けて実施されている(承認番号2489「赤ちゃん・子どもを亡くした家族に対する心のケアに関する意識調査」)。呈示された15の行為は以下の通りである(一部簡略化):黙って一緒に泣く,じっくり聞く,希望を聞く,感情表出援助,現実受容の情報提供,出産の意義を話す,普通の赤ちゃんとして扱う,記念品を渡す,赤ちゃんと面会できるようにする,家族の時間を作る,母子を励ます,母をほめる,児をほめる,タッチング,退院後の連絡。これらに対して,「これがケアかと意外に感じたのはどれか」「実際には難しいと思われるのはどれか」「相性次第と思われるのはどれか」「自分だったら嫌だと思うのはどれか」「これは医療者の仕事かと疑問に思うのはどれか」「してもらえることを後で知ったら後悔しそうなのはどれか」「よそでは可能と知ったら残念なのはどれか」「実際にした/されたのはどれか」という8つの質問で認知度を含む態度を測定した。この質問項目については,15項目の行為がランダムにリスト化されたマトリックスに対して,該当するものに全てチェックを入れる多重回答方式である。
 これらに加えて,MCAに投入された質的変数は男女別サンプル群(10カテゴリー),医療・福祉関連の職業経験及び教育関連の職業経験に関する2変数(2カテゴリー)。子どもの人数(4カテゴリー),周産期の喪失体験及びケアの経験(7カテゴリー),ペリネイタル・ロスのピア・サポートの認知(3カテゴリー),ピア・サポートの認知・態度(7項目),専門家をピアと見なせるか否かに関する2変数(5項目)の9変数である。これらの変数のカテゴリーのプロット図の位置から,グリーフ・ケアの行為への態度と関連のある要員を探るためである。

結果と考察
 欠損値を除いた1006ケースがMCAの対象となり,Cronbachのα係数及び固有値の減衰パターンから,妥当と判断できる次元数は6とした。但し,マトリックス形式の2値の回答については,チェックありに対してチェックなしの比率が非常に高いため,各次元の説明率は小さくなり6次元の合計の説明率は26.9%に留まっている。α係数と説明率は第1次元から順に以下の通りである:941(11.2%); .85(4.9%); .81(4.0%); .67(2.3%); .67(2.3%); .66(2.2%)。第1次元は回答者の関心の度合いを示すものである。第2次元は負方向に「後で知ったら後悔」及び「よそでは可能なら残念」というグリーフ・ケアに対して肯定的な評価や期待を込めた回答が付置された。一方,正方向には「実際にした/された」という実体験に加えて「医療者の仕事か?」と「自分だったら嫌」という否定的な評価が混在する結果となった。医療者に対するグリーフ・ケアに対して懐疑的な位置に付置された他の変数のカテゴリーは,実際に子ども(胎児を含む)を亡くした親としてグリーフ・ケアを体験した回答者(n=56)や立場不明ながらグリーフ・ケアを経験している回答者(n=111)であった。グリーフ・ケアの実体験(被援助者または援助者として)の違いから見ても,具体的な行為への態度には矛盾する対立が見られていることが明らかになった。グリーフ・ケアに対する期待がそのまま家族のコーピングにつながるのか,逆効果となって医療者・対人援助者への不信につながるのか,更なる要因の検討が必要である。

キーワード
グリーフ・ケア/医療従事者/ソーシャル・サポート


詳細検索