発表

2D-015

親密な二者関係における合意形成とその神経基盤
安静時fMRIを用いた検討

[責任発表者] 藤澤 隆史:1
[連名発表者・登壇者] 石盛 真徳:2, 牧田 快#:1, 久保下 亮#:3, 笠羽 涼子:3, 友田 明美#:1
1:福井大学子どものこころの発達研究センター, 2:追手門学院大学, 3:大阪大学

目 的
 ペアの態度や行動の類似性は,対人関係の形成や維持においてポジティブに機能することが指摘されてきた。近年では,親密さの度合いに応じて脳活動も類似することが報告されており(Parkinson et al., 2018),類似性が対人関係のコミュニケーションにおけるスムーズさに寄与していると考えられてきた。その一方で,成員間の異質性(多様性)は,潜在的には優れたパフォーマンスを示すことも示唆されるが,異質性はスムーズなコミュニケーションの妨げや共通理解の困難さが高まる可能性もある。そこで本研究では,親密な関係にある男女ペアが合意形成する際において,パフォーマンスの改善に及ぼす要因の検討とその神経基盤について検討する。

方 法
【実験参加者】 夫婦(11組)または交際中(8組)の男女19ペアであった。彼らの平均年齢は34.5歳(SD=10.9),交際期間(結婚期間含む)は105.4ヶ月(SD=89.1)であった。
【測定項目】
行動指標:合意形成課題として有名なHall(1962)のムーン・サバイバル課題に基づき,最初に個人で課題に回答後,ペアで議論して合意形成を行ってもらった。個人での15問に対する回答と正答からの差異を算出し,個人での回答の正答からの距離の指標として用いた。また,ペアでの回答間の差異を,ペア間距離として算出した。さらに,ペアで合意に至った回答が個人の回答からどれだけ正当に近づいたのかをペアによる改善の指標として分析に用いた。なお,ペアによる議論の様子は,二者間のコミュニケーション形式について事後評価するためにビデオ記録した。
心理指標:日本語版のTemperament and Character Inventory(TCI)125項目版,目線読み取り検査(RMET)36課題,およびBeck Depression Inventory第2版(BDI-II)21項目を用いて心理指標の測定を行った。
脳機能指標:親密な二者関係における合意形成の神経基盤を測定するために安静時fMRI(rs-fMRI)を実施した。撮像には,3TMRI装置(Discovery MR 750; GE社製)を用い,以下のパラメータでEPI画像を取得した(TR/TE=2300/30 ms, flip angle=81 deg, FOV = 192*192 mm, matrix size = 64*64, slice gap = 0.5 mm)。脳機能画像の統計的分析にはSPM8を用い,ツールボックスを用いてfALFFによる安静時脳機能を算出した。

結果と考察
 各個人の心理指標と合意形成のパフォーマンス改善の関連性を検討するためにパス解析を行ったところ,感情読み取り能力やメンタルヘルスとの関連性は認めらなかった一方で,個人の持続傾向とペア間での損害回避傾向のばらつきが,合意形成による改善につながっていることが示唆された(χ2(3,10)=.4.45, n. s.; CFI=.952; GFI=.950; AGFI=.749; 図1)。この結果は,心理的特徴では,1) 個人のこだわり傾向,2) ペア間のリスク回避傾向の異質性が,ペアによる合意形成において,パフォーマンス改善に関与している可能性を示唆している。
 次に,パフォーマンス改善と関連する関連する脳機能部位を同定したところ,ペア男性19名では,ポジティブに関連する部位として後部帯状回,前頭眼窩皮質,舌状回,左右小脳Crus IIが同定された(図2A)。同様に,ペア女性18名では,ポジティブに関連する部位として左 の後部中側頭回が同定された(図2B)。同定された領域は性別グループ間で異なったが,これらの領域は,いわゆる安静時脳機能における「デフォルトモード・ネットワーク」に相当する領域であることから,ペアによる合意形成のパフォーマンス改善に社会脳ネットワークの関与が重要な役割を果たしていることが示唆される。

謝 辞
本研究は,追手門学院大学「特色ある研究奨励費制度」による研究成果の一部である。

キーワード
親密ペア/合意形成/安静時fMRI


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