発表

2D-012

SNS上のネガティブな自己開示に対する被開示者の反応

[責任発表者] 三好 隼人:1
1:大阪大学

【背景と目的】
 自己開示とは,”個人的な情報を他者に知らせる行為” (Jourard, 1971)である。自己開示は精神的健康との関係も深く,精神的健康における自己開示の機能は感情浄化機能 (安藤, 1986),つまり,自身の抱えている問題や思考をあらわにし,他者に伝えることでカタルシスを得る機能である。しかし,自己開示が常にポジティブな結果をもたらすわけではなく,例えば,ネガティブな内容の自己開示は被開示者からの拒絶感を増加させ,被開示者のネガティブ感情が高まることが示されている(Gurtman, 1987)。
 近年の自己開示の手段の1つとして,やSNS(Social Networking Service)が挙げられる。Twitterは2008年の3月に日本語版でのサービスが提供された。村益・竇(2014)は,Twitterがフロー型のSNSであり,投稿が時間と共に流れていく分,深い自己開示やネガティブなことを投稿しやすいと指摘している。
 それでは,ネガティブな投稿が行われやすいTwitterにおける自己開示は精神的健康とどのような関係を持っているだろうか。Twitterは顔や名前を知らない相手の投稿が可視化される故に,利用者は日常的に様々な人の様々な内容の投稿にさらされていると考えられる。その投稿がネガティブな内容ならば,被開示者の精神的健康に悪影響を及ぼす可能性がある。しかし,実際にその投稿を見た被開示者の反応についてはまだ研究がなされていない。
 そこで,本調査ではTwitterにおけるネガティブな自己開示に対する被開示者の心理的反応を調べることを目的とする。
【方法】
 調査協力者は大学生・大学院生163名(男性93名,女性68名,他2名)であり,平均年齢は20.78歳であった(SD=3.31)。まず,調査協力者はフェイスシートの項目を回答の後,後述の3つの心理的距離にある他者がツイートを行った際の心理的反応をそれぞれ回答した。「以下の画像のようなツイートをしたとします」という教示文と共に,その他者によるネガティブな内容の刺激文をツイートの形で提示した。刺激文は,Gurtman(1987)の抑うつ的な文章を日本語訳したものを用いた。その後,「タイムラインにこのツイートが流れてきたそのとき,どんな気分になりますか」という教示文と共に感情と心理的反応を回答させた。感情は佐藤・安田(2001)の作成した日本語版PANASのうち,ネガティブ情動8項目のみを用いた。心理的反応は聞き手の受容的反応尺度および聞き手の拒絶的反応尺度(森脇・坂本・丹野, 2002)を用いた。
 心理的距離は堤(1992)を参考に,開示者との心理的距離が近い群("最も親しい友人"),中程度の群("話はしたことはないが,顔や名前は知っている人"),遠い群("顔も名前も知らず,会ったことのない他人")の3名を設定した。つまり,調査協力者は,ネガティブなツイートに対する反応を開示者ごとに合計3回回答した。
【結果】
 心理的距離によるネガティブ情動の違いを分析するために,1要因の分散分析を行った。その結果心理的距離の効果が有意であった(F(1.91,309.61)=118.22, p<.001)。Bonferroni法を用いた多重比較によると,全ての心理的距離間において1%水準で有意な差が見られ,開示相手との心理的距離が近いほど有意に得点が高かった。
次に,心理的距離による受容的反応の違いを分析するために1要因の分散分析を行った。その結果,心理的距離の効果が有意であった(F(1.71,276.87)=280.80, p<.001)。また,Bonferroni法を用いた多重比較によると,全ての心理的距離間において1%水準で有意な差が見られ,開示相手との心理的距離が近いほど,有意に受容的反応尺度の得点が高かった。最後に,拒絶的反応における心理的距離の影響を分析するために1要因の分散分析を行った。その結果,心理的距離の効果が有意であった(F(1.92,310.20)=58.71, p<.01)。また,Bonferroni法を用いた多重比較によると,全ての心理的距離間において5%水準で有意な差が見られ,開示相手との心理的距離が遠いほど,有意に拒絶的反応尺度得点が高かった。
【考察】
 開示者との心理的距離が近いほどネガティブ情動が高まっていたが,これはTwitterがフロー型のSNSであることが理由として挙げられる(村益・竇, 2014)。投稿がタイムライン上を流れていく故に,心理的距離が近いほどよりそのネガティブな内容のツイートを意識し,その結果としてネガティブ情動が高まったと考えられる。親しい友人の自己開示が大量に含まれるタイムラインを閲覧することは,投稿の内容次第ではネガティブ情動が高まる一因になりうるだろう。SNSが場所を選ばないやり取りを可能にした反面,どこでも他者の自己開示にさらされるようになった。ツイートの閲覧頻度の高さによるネガティブ情動の高まりには十分に注意する必要があると言える。
【参考文献】
Gurtman, M. B. (1987). Depressive Affect and Disclosures as Factors in Interpersonal Rejection. Cognitive Therapy and Research, 11, 87-100.
森脇 愛子・坂本 真士・丹野 義彦 (2002). 大学生における自己開示方法および被開示者の反応の尺度作成の試み パーソナリティ研究, 11(1), 12-23.
村益 有那・竇 雪 (2014). ソーシャルネットワーキングサイト上における若者の自己開示と感情表現に関する研究 第31回情報通信学会大会
堤 雅雄 (1992). 想像的他者との心理的距離の関数としての羞恥感 島根大学教育学部紀要,人文・社会科学, 26, 87-92.

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