発表

2D-008

日本語Twitterでの政治に関する話題への言及における感情価の分析

[責任発表者] 打田 篤彦:1
1:京都大学

問題
 近年, 日本では直近の統一地方選挙(2019年4月)を含め公職選挙での低投票傾向が続いており, 特に若年層では政治参加への消極的傾向が種々の国際比較調査で指摘されている(例, 内閣府, 2014). 一方で, 若年層に特に人気の高いマイクロブログサービスTwitter(ツイッター)では政治に関して日常的に言及されており, 政治参加の方法の1つとして, また世論の指標として注目を集めている. そこで本研究では, 日本語のツイッターにおいて政治関連の話題はどのような動機からどのように言及されているか, 感情価に着目して検討する.

方法
 最初に, 第48回衆議院議員選挙投票日の2017年10月22日0時から20時の間(選挙運動にあたる投稿が禁止)に投稿され, かつ当日中に200回以上リツート(共有)された日本語のツイート全2,941件を対象に, 次のアカウント群を抽出した. 選挙に関連する単語(候補者や政党の固有名詞, 投票など一般名詞)を含むツイート83件を投稿したアカウント80件を「政治言及群」とした. さらに, それらとリツイート数が最も近く, かつ上述の単語を含まないツイート90件を投稿したアカウント73件を「非政治群」とした. 前者を政治に関する会話を理論上中立的に促進した群とし, 後者を政治以外の話題を促進した群と定義した. なお, 抽出したアカウントは全て一般個人による公開設定(2018年5月17日時点)のもので, プロフィール画面に政治経験者, 選挙候補者, 政党関係者, または団体である旨や実名が記載されているものは除外した.
 続いて, 抽出した各アカウントによる直近3,200件(2018年6月26日時点)までのツイートのデータをTwitter APIを通じて収集し, 計457,189件分のテキストおよびメタデータを取得した. さらに, これらのテキストを形態素解析し, 314,436語の名詞を抽出した. なおこの解析には, フリーウェアTiny Text Miner(松村・三浦, 2017; TTM)を用いた.
 次に, 日本経済新聞社(2018)による内閣支持率に関する世論調査の公開アーカイブ(2018年7月13日当時)から作成した政治関連用語集を基に, テキストデータにおいて政治関連名詞を1語以上含む取得済みのツイートを抽出した. まず, 政治関連用語集での大区分の時事, 政策, および立法それぞれの小区分に該当する名詞を抽出した. 次に, 政治関連用語集の残りの大区分の議会・行政, 政治家・行政官, 政治組織, および選挙名それぞれに該当する名詞を抽出した.さらに, 政治関連用語集の区分に含まれていなかった名詞として, イデオロギーに関するものと特定の漢字および熟語(政, 党, 選挙, 投票のいずれか)を含むものとを抽出した. 以上の手続きから政治関連名詞を計5,384語定義し, TTM(松村・三浦, 2017)を用いてそれらを1語以上含む取得済みのツイート64,974件(全体の14.2%)を抽出し, 政治関連名詞のうち他国政治に関する377語のいずれか以外を含まないツイートを除いた, 57,430件(内政関連ツイート)を分析の対象とした.
 最後に, 感情価の分析では, 三浦・小森・松村・前田(2015)による感情語辞書に記載された, ポジティブ感情語(64語), およびネガティブ感情語(怒り27語, 不安37語)の分類を, 同意異字を含め適用した.

結果と考察
 まず, Welchのt検定を群間で実施した結果(全て両側検定), 政治言及群は非政治群よりも全投稿に占める内政関連ツイート(t(151)=7.386, p<.001)および公式リツイート(t(151)=4.433, p<.001)の割合の平均が有意に高かった. 各感情語を含むツイートの割合に着目すると, 内政関連ツイートでは怒り(t(151)= 4.251, p<.001)と不安(t(151)= 2.342, p<.05)いずれの感情語においても, 政治言及群の方が非政治群よりも割合の平均が有意に高かった.
 また, 内政関連ツイートの割合とその感情価についてスピアマンの順位相関分析を群ごとに実施した結果, 政治言及群でのみ怒り感情で中程度の有意な正の相関がみられた一方で, 非政治群でのみ不安感情で同様の相関がみられた(.55<rs<.69, p<.01). なおポジティブ感情については, 両群で中程度の有意な負の相関(-.53<rs<-.37, ps<.05)がみられた. さらに, 怒り感情語を含むツイートが全投稿に占める割合は, 政治言及群でのみ公式リツイートの割合と中程度の有意な正の相関(r=.37, p<.01)があった.
 以上から, 日本語のツイッターでの政治関連の話題はポジティブ感情とともには言及されにくく, 積極的な層では怒り感情によってその言及や発信が促進されている可能性が示唆された. 一方, 積極的ではない層では不安感情とともに言及される傾向が示唆された.
 今後はより大規模な標本を対象とし, ソーシャルメディアの特性であるアカウント間のネットワークも加味した分析が必要と考えられる.

引用文献
松村 真宏・三浦 麻子(2017). Tiny Text Miner Retrieved from http://mtmr.jp/ttm/(2018年4月23日)
三浦 麻子・小森 政嗣・松村 真宏・前田 和甫(2015). 東日本大震災時のネガティブ感情反応表出── 大規模データによる検討── 心理学研究, 86, 102-111.
内閣府(2014). 平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 Retrieved from http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html(2018年8月25日)
日本経済新聞社 (2018). 支持率を追う Retrieved from https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/cabinet-approval-rating/ (2018年8月20日)

キーワード
ソーシャルメディア/感情分析/政治参加


詳細検索