発表

2C-016

日常的事象に対する日本人の原因帰属

[責任発表者] 外山 みどり:1
1:学習院大学

 原因帰属に関しては,過去50年以上,多くの研究がなされてきたが,日常遭遇する事象に対して一般の人々がいかなる因果的説明を行うかというHeider (1958)の問いに答える研究はあまり見当たらない。本研究の第1の目的は,日本の一般人サンプルを対象に,日常の事象に対する原因帰属に関するデータを得ることである。同時に,複数の因果要因に関して,独立した尺度を用いた評定法を使用することの問題点を探る。これは原因帰属の文化比較を試みる際に考慮すべき点でもある。
<方法> 
 帰属判断の題材:日常生活で多く見聞きし,自身も経験する可能性がある事象に対して,原因帰属を求めた。10種類の行動またはその結果(ポジティブ・ネガティブ各5個)に対して,4種類の因果要因を挙げ,それぞれ「どの程度,原因として作用するか」の推測を求めた(1~7までの7段階)。事象の正負による帰属の違いについては,同一事象の正負の結果に統一することが困難であったため,比較的類似した内容のものを正負同数集めるにとどまった。同一内容の正負事象の比較は,入学試験での合格・不合格,スポーツの大会での結果の良し悪しの2対に限られる。また提示した事象が多岐にわたり,因果要因を固定させることも困難であったので,各事象に対応する個別の因果要因について評定を求めた。本人の内的要因としては,持続的・傾性的要因(例.性格・能力)と方法・一時的努力などの変動要因(例.勉強方法)の2種類,外的要因としては,他者の影響と偶然・社会状況等の2種類について評定を求めた。
 参加者・手続き:調査会社に委託し,20~49歳までの男女計300名に回答を求めた(20代,30代,40代の男女各50名)。10種類の事象に対して,それぞれ4つの因果要因に関する評定を求めた。「現実にはいろいろなケースがあるでしょうが,一般論としてお答えください」と教示した。事象の提示順は回答者間でランダマイズした。
<結果>
1.全般的な評定結果―4種類の因果要因に対する評定は全般に高く,全40個の平均評定値のうち,7段階の中点4(どちらでもない)を下回ったのは1つのみであった(「交通事故に遭う」における「本人の性格・能力」(3.91))。4要因すべての平均評定値が5を超えている事象もあり(「起業して成功する」),特定の要因への帰属傾向が高いと他の要因への帰属は少ないという相補的関係は見られなかった。
2.内的要因vs.外的要因に対する評定―内的-外的要因に対する評定の傾向を比較すると,全般に内的要因に対する評定値の方が外的要因に対する評定値より高い傾向があった。各因果要因に対する評定は,10事象のすべてで有意に異なっており(参加者内一要因分散分析の結果はすべて0.1%以下で有意),10事象のうち9事象で,評定平均値の1, 2位を内的要因,3, 4位を外的要因が占めるパターンになっている。多重比較の結果は,内的要因同士,外的要因同士には有意差のない場合があるが,内的要因と外的要因の比較ではすべて,内的>外的の方向の差が有意となっている。唯一の例外は「交通事故に遭う」で,ここでは,「本人の性格・能力」や「本人の一時的な心身状態」より,「他人(ドライバーを含む)の行動」,「運・偶然」が原因として高く評定されており,外的要因>内的要因という方向の有意差があった。
3.事象の正負による違い―前述の通り,今回題材とした10事象の中で正負が直接対比できるのは,入学試験の合否とスポーツ大会の結果の良し悪しの2組のみである。図1 にスポーツの大会での結果(優勝vs.初戦敗退)に対する平均評定値を示す。「優勝」に対する評定の方が「初戦敗退」に比べて,全般に評定値が高く(結果の正負の主効果F(1, 897 ) =106.89, p<.001),各因果要因の作用に対する評定はどちらの場合も,「能力・技術」≒「努力・練習方法」>「コーチや指導者の影響」>「運・偶然」の順番になっている。この傾向は入試の合否についても同様であり,「合格」の方が「不合格」よりも全般に評定値が高く,各因果要因の作用の評定は,「能力・才能」≒「努力・勉強方法」>学校や教師の指導>運・偶然の順になっている。
<考察>
 今回の調査は,対象となる事象の選定などで不十分な点があり,予備的なものに留まるが,因果要因を独立に評定させる方法を用いると評定全体が高くなり,帰属判断の細かい差の弁別には不向きである可能性が示唆された。また,本人の意図が含まれる行動やその結果については,内的要因の評定が外的要因のそれよりも高くなるという従来の研究で見られた傾向が再現され,運や偶然の作用は比較的軽視されやすいことも確認された。
 (本研究には,科学研究費補助金(基盤(c)17K04323)の交付を受けた。)

キーワード
帰属理論/内的原因/外的原因


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