発表

2C-014

大学生の部活・サークルにおけるフォロワーシップとリーダーシップの相補的関係の検討

[責任発表者] 三木 博文:1
[連名発表者・登壇者] 池上 知子:1
1:大阪市立大学

 Carsten, Uhl-Bien, West, Patera, & McGregor. (2010)のインタビュー調査による質的研究では,フォロワーの役割スキーマと行動の関係について,また,フォロワーがおかれている組織的環境(リーダーシップ・組織風土)との相互作用で生じる心理的影響について論及している。それによると,権限委譲的なリーダーシップの下で率先的な役割スキーマを保持するフォロワーは,スキーマと合致した行動の表出が容易で,かつリーダーとの齟齬も起こらず組織生活を快適に過ごせる一方で,権威的リーダーシップの下では受動的な役割スキーマを保持している方が適合的であり葛藤が少ないことが示唆されている。上記のCarsten et al.(2010)の知見は,支配の相補性理論と整合する。支配の相補性とは,二者関係において一方が支配的であるとき,他方が服従的である場合に,効果的なパフォーマンスが生まれ,特に,その相補性は上司と部下のような上下関係において成立しやすい(Carson, 1969; Grant, Gino, &Hofmann, 2011)。三木・池上(2017)は,この相補性について,直属の上司のいる社会人を対象に検討している。その結果,権限委譲的リーダーシップの下では能動的行動を多くとるフォロワーほど職務満足度が高いことは示されたが,権威的リーダーシップの下で受動的行動をとるフォロワーほど職務満足度が高いという結果は見られず相補的関係が完全に成り立っているとは言えなかった。
 本研究では,三木・池上(2017)の結果が,学生の部活・サークル集団でもみられるか検討することを目的とする。ただ,会社組織と学生集団を同列に扱うことは難しいと考えられる。両者は集団フォーマル性においてかなり異なるからである。集団フォーマル性とは明文化された階層構造,明確な規則,地位が規定されていることを指す(新井, 2004)。ただし,学生の部活・サークル集団のなかでも,会社組織に似た集団フォーマル性を有する場合は,会社組織で見られたリーダーとフォロワーの相補的関係が認められることが予想される。そこで,本研究では集団フォーマル性の変数を取り入れて検討することとした。仮説は以下の通りである。リーダーシップとフォロワーシップが相補的であれば,フォロワーの活動への満足感は高まるが,この関係は集団のフォーマル性が高いほど成立しやすい。
 方法
調査対象:大学生167名(男性46名,女性120名,性別不明1名,平均年齢19.9歳(SD=.87))。部活・サークルに所属し,かつ,部長・キャプテン相当でない者を対象とし,大学の授業終了後に調査への協力を呼びかけ,同意した者に質問紙を配布しその場で回答を求め回収した。
質問紙の構成:基本属性と以下の1~4を測定する項目を含めた(7件法)。1.集団フォーマル性 集団内役割・上下関係・集団規則の3項目について明確かどうか尋ねた(α=.77)。2.リーダーシップ リーダーの権威にもとづいた行動とリーダーの権限を委譲する行動を測定する項目を独自に作成し使用した(権威(α=.87)・権限委譲(α=.61)。両尺度の残差得点を求め,委譲から権威を減算し一次元化した(委譲>権威)得点を使用した。3.フォロワーシップ 三木・池上(2016)で使用されている項目のうち,確認的因子分析でモデルの当てはまりの良い13項目を使用した(率先的行動5項目(α=.92)・能動的行動5項目(α=.87),受動的行動3項目(α=.60))。4.活動への満足 安達(1998)の「職務内容の満足」の5項目を部活・サークル活動に当てはまるように改変して使用した(α=.85)。
 結果・考察
 仮説を検証するために,活動への満足を従属変数とし,独立変数にフォーマル性とリーダーシップ(委譲>権威),フォロワーシップを投入し階層的重回帰分析を行った(Table 1)。その結果,フォーマル性(β=.23)と能動的行動(β=.36)の主効果が有意,リーダーシップ(β=-.13)の主効果が有意傾向であった。しかし,交互作用を含むモデルは,R2の変化量がいずれも有意とならず,仮説は支持されなかった。本研究から,フォーマル性が高いほど(集団のルール,階層性,役割が明確で組織立っていること),リーダーが権限委譲的であるほど(リーダーがフォロワーに自由な裁量権を委譲すること),フォロワーが能動的にリーダーに振る舞えるほど,フォロワーの活動満足が高まることが示唆された。本研究は,学生集団と会社組織の差異としてフォーマル性の要因を考慮し検討したが,社会人においてみられたリーダーとフォロワーの相補性は学生集団では認められなかった。その理由として,まず社会人と学生のフォーマル性の認知が乖離していることが挙げられる。また,権威的リーダーシップの知覚(M=2.72)と受動的行動(M=3.17)の得点が尺度の中点(4)と比べかなり低く,部活・サークル集団の場合,全般に成員が能動的に活動に関与するため,相補的関係が成立しにくい可能性がある。
付記:本発表は,三木・池上(2018)がグループダイナミックス学会第65回大会で発表したデータに,サンプルを取り足し,別の視点で再分析した結果に基づいている。

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