発表

2C-010

日本の勤労者における心理的ディタッチメントと心理的適応の関連

[責任発表者] 田仲 由佳:1
[連名発表者・登壇者] 石井 国雄:1
1:清泉女学院大学

近年のIT技術の発展や働き方改革により,日本の労働者を取り巻く環境や就労形態は多様化してきている。そのような変化の多い労働環境において,働く人々の心身の健康の維持・増進を図ることは重要な課題であり,1つのキーワードとして近年,心理的ディタッチメント(psychological detachment)という概念が注目されている。これは仕事のストレスや疲労の回復には,仕事を終えて物理的に仕事(職場)から離れるだけでなく,心理的にも仕事から離れることが重要であるという考えであり(西田・寺嶋,2017),EU諸国では,勤務終了後から次の勤務開始までのインターバルを制度化する動きも生じている。一方,日本では心理的ディタッチメントの概念自体が十分に浸透しておらず,その影響についても明らかになっていない。そこで本研究では,日本で働く人々の心理的ディタッチメントをとらえ,ストレスや心理的適応との関連を検討することで,心理的ディタッチメントがもたらす影響について探索的に明らかにすることを目的とする。
方法
調査実施および調査協力者 インターネット調査会社楽天インサイトの保有するモニターを対象に2018年11月にweb調査を実施した。30歳から60歳の男女で役員職ではない有職者600名から回答を得た。仕事に関して,雇用形態および仕事内容,1週間あたりの平均労働時間を尋ねた。本分析では,終業から次の始業までのインターバルが課題となる就業者を対象とするため,パート・アルバイトの者および週の平均労働時間に不備がみられた者は除外し,443名を分析対象とした(平均年齢44.88歳,SD=8.85)。対象者の職業の内訳は,医療・福祉職39名,専門職11名,技術職61名,教育・対人援助職8名,サービス・接客職41名,営業職44名,作業職27名,事務職181名,その他31名であった。なお職種による違いを検討する際には,仕事内容でその他を選択した31名も除いて分析を行った。
調査内容 属性:性別,年齢,婚姻状況,配偶者と子どもの有無,世帯収入,最終学校
心理的ディタッチメント尺度:西田・寺嶋(2017)による14項目(4件法)
満足感:現在の仕事,家庭生活,生活全般に対する満足度(各0-10点)
主観的幸福感尺度:大石(2009)による5項目(7件法)
職業性ストレス:下光(2000)による職業性ストレス簡易調査票より,ストレス要因17項目(A領域:仕事に関する負担感,4件法),ストレス反応29項目(B領域:心理的・身体的ストレス反応,4件法)を用いた。また,久保・田尾(1992)のバーンアウト尺度を用いて,情緒的消耗感(5項目),脱人格化(6項目),個人的達成(7項目)を測定した。
結果と考察
(1)職種および労働時間による心理的ディタッチメント
まず,職種による心理的ディタッチメントについて検討を行ったところ,専門職,教育・対人援助職の得点が低く,営業職⇒技術職⇒接客⇒医療・福祉⇒作業職の順に高くなっていくことが示された。また,職位との関連から,役職が上がるほど心理的ディタッチメントが低いことも示された。
次に,週の平均労働時間と心理的ディタッチメントの関連では,男女とも有意な相関がみられず,労働時間の長さが心理的ディタッチメントを規定しているわけではないことが示唆された。
(2)心理的ディタッチメントと心理的適応の関連
職種ごとに,心理的ディタッチメントと満足感,主観的幸福感,職業性ストレス,バーンアウトとの相関を算出した(Table1)。その結果,医療・福祉職では心理的ディタッチメントと満足感に正の相関が見られた(r=.356)。また,営業職および事務職においては心理的ディタッチメントと職業性ストレスのA領域に有意に負の関連が見られた(r=-.471,r=-.364)。加えて事務職においては,心理的ディタッチメントと職業性ストレスのB領域にも有意な負の関連が見られた(r=-.248)。
心理的ディタッチメントと心理的適応に最も多くの関連が見られたのは技術職であり,満足感,主観的幸福感,バーンアウト(情緒的消耗感,脱人格化),職業性ストレスのA・B領域に有意な関連が見られた。
以上の結果から,職種や職位により心理的ディタッチメントの程度が異なること,心理的ディタッチメントは心身の健康とも関連しており,その影響は仕事内容によって異なることが考えられる。

キーワード
心理的ディタッチメント/心理的適応/ワーク・ライフバランス


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