発表

2B-021

大学生が苦手とする高齢者の特徴

[責任発表者] 河野 理恵:1
[連名発表者・登壇者] 小野寺 敦子:1, 元井 沙織:1
1:目白大学

目的
 総務省統計局(2018)によれば,我が国の高齢化率は毎年増加し続けており,過去最高の28.1%になったとされる。このような現代社会においては,高齢者に対して「敬老」というポジティブな考え方がある一方,「嫌老」「老害」などネガティブな表現も見受けられるようになっている。後者の高齢者に対するネガティブな表現は,高齢者の増加に比例して聞かれるようになってきたものであり,日常生活の中で見聞きした,あるいは関わった高齢者の言動やメディアからの様々な情報などをもとに形作られているのではないかと推測される。しかしながら,高齢者のどのような言動が受け入れられないのかに関する具体的な検討はほとんど行われていない。今後,高齢者のさらなる増加が見込まれている我が国において,高齢者の言動や行為がどのように捉えられているのかについて明らかにしておくことは必要だと考える。そこで本研究では,若い世代における高齢者の言動や行為に対するネガティブな視点に焦点をあて,大学生が苦手とする高齢者の特徴を詳細に検討することを目的とする。
方法
調査対象者:東京都にある大学に通う大学生89名(男性28名,女性52名,無回答9名)。平均年齢は20.05歳であった。
調査時期:2019年1月。
調査方法:調査は大学の講義が終了した後に,教室にて質問紙を配布し,一斉に実施した。口頭とフェースシートにて調査目的を説明した後,フェースシートに記載された同意非同意のチェックボックスを用いて調査協力への同意を得た。
調査内容: 1. 調査対象者の属性 性別,及び高齢者との生活経験と高齢者との関係の持ち方などについては4件法で選択肢を設け,回答を求めた。2. 自由記述 「高齢者について苦手だと思うところ(嫌なところ,関わりたくないところ)はどのような点ですか。自由に記述してください。」という教示を明記した上で,自由記述欄を設けた。
結果
1. カテゴリの設定とコーディング:得られた自由記述のスクリプトデータの中から,大学生が考える高齢者の短所を示していると判断された具体的箇所を抽出した。そのうち,意味の内容が同一,あるいは類似した記述ごとにまとめ,カテゴリを作成した。作成したカテゴリについて著者を含む3名で協議し,10名以上の回答者からあてはまる記述箇所が抽出された7つのカテゴリ(「自己中心的」「マナーの欠如」「年功序列」「頑固」「話が通じない」「怒鳴る」「過去ばかり」)を最終的に採用した。次に,得られた記述のうち,7つのカテゴリリストに該当する場合は「2」,該当しない場合は「1」と数値変換をした。その結果,該当率が多かったものは,「自己中心的」「マナーの欠如」というカテゴリであった。
2. 大学生が苦手とする高齢者の特徴の検討:大学生が苦手とする高齢者の特徴を分析するために,7つのカテゴリに対して数量化理論Ⅲ類を行った。その結果,解釈可能性から2軸を採用した。それぞれの軸の固有値は第1軸が.20,第2軸が.19であり,累積寄与率は39.89であった。第1軸を横軸に,第2軸を縦軸にとり,「2」とコーディングされた7つのカテゴリスコアを用いて散布図を作成した。次に,すべてのカテゴリスコアに対し,Ward法によるクラスタ分析を行い,解釈可能な3つのクラスタを抽出し,散布図上に図示した(Figure 1)。第1クラスタには,「自己中心的」「マナーの欠如」「年功序列」というカテゴリが含まれていた。これらは高齢者が自分の都合のよいように振舞っているようにみなされていると考えられ,「自己優先」クラスタと命名した。第2クラスタには,「過去ばかり」「頑固」というカテゴリが含まれていた。これは高齢者が昔や自分の考えに固執しているようにみなされていると考えられ,「執着」と命名した。第3クラスタには,「怒鳴る」「話が通じない」というカテゴリが含まれていた。これは高齢者とのコミュニケーションが難しいとみなされていると考えられ,「会話困難」と命名した。
考察
 本研究の結果から,大学生が苦手とする高齢者の特徴として, 7つのカテゴリと3つのクラスタが抽出された。これらは大学生が高齢者と関わることを敬遠する理由の一端になると考えられる。しかしながら,「電車において,なにがなんでも座ろうとする(自己中心的)」「大声で話す(マナーの欠如)」などは,高齢者における体力や聴力の低下という身体的な変化がその行動の根底にあるのではないかと推測される。そのため,受け入れられない高齢者の言動に接した場合,ネガティブな感情をもつだけでなく,高齢者がなぜそのような言動をしているのかという理由や背景について,若い世代が理解していくことも必要なのではないかと考える。

付記)本研究は,2018年度科学研究費補助事業(基盤研究(C),課題番号15K04082)の助成金交付を受けて実施された。

キーワード
大学生/高齢者/苦手なところ


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