発表

2B-020

怒り反すうがゆるせなさに及ぼす影響

[責任発表者] 八田 武俊:1
[連名発表者・登壇者] 若山 和樹:2, 八田 純子:3
1:岐阜医療科学大学, 2:ひだまりこころクリニック, 3:愛知学院大学

 目的
 これまで,怒り反すうは怒りの緩和を妨げ,持続させる心理的要因であることが示されている。一方,ネガティブな認知や感情,動機づけをポジティブな方向に意図的に変化させるゆるしは怒りの解消をもたらす。先行研究において,反すうは怒りを媒介してゆるしを妨げることが示されている(McCullough, Bono, & Root, 2007)。ただし,その研究ではおもに侵入思考を測定する尺度を反すうの測定として用いており,反すうが怒りを介してゆるせなさを助長するのであれば,その測定には怒りに特化した反すう尺度を用いることで,これらの関連性をより明確にできると考えられる。そこで,本研究では,反すうの測定にSukhodolsky, Golub, and Cromwell (2001)が開発した怒り反すう尺度を用い,怒り反すう特性が高い人はそれが低い人よりもゆるせないと知覚しやすいという仮説とともに,怒りの媒介効果について検討する。
 方法
 本研究における参加者は4年制大学の学生151名(男性80名,女性71名)で,本研究への参加に同意できるものだけが回答した。参加者は,怒りが喚起されるシナリオを読んだ後,怒りとゆるせなさの知覚についてそれぞれ2項目に回答し,17項目からなる日本語版怒り反すう尺度(ARS)に4件法で回答した。日本語版ARSは,怒り体験に注意を向けやすく,分析的に思考し続けることを表す怒り熟考(7項目),類似した怒り体験の想起しやすさを表す怒り体験想起(6項目),現実には起きていない報復や攻撃行動に関する思考や空想を表す報復思考(4項目)からなる。
 結果
 本研究では,怒り反すう尺度の総得点と下位尺度ごとに平均点を求め,それぞれについて中央値より大きい参加者を高群,それ以下を低群とした。つぎに,怒り得点とゆるせなさ得点について,怒り反すうとその下位尺度を要因とするt検定を行った。怒り反すう得点が高い群は低い群よりも強い怒りを感じる傾向にあり(M = 4.72 vs. 4.16; t(149) = 1.81, p = .07),ゆるせなさを強く知覚していた(M = 4.48 vs. 3.88; t(149) = 2.00, p < .05)。さらに,怒り反すうの下位尺度である怒り体験想起得点が高い群は低い群よりも強い怒りを感じる傾向にあり(M = 4.73 vs. 4.21; t(149) = 1.70, p = .09),報復思考得点が高い群は低い群よりもゆるせなさを強く知覚していた(M = 4.56 vs. 3.83; t(149) = 2.46, p < .05)。
 つぎに,怒り反すうとゆるせなさが怒りによって媒介されることを検討した。図1に示したように,怒り反すうからゆるせなさへの直接のパス係数は.19であるが,怒りを媒介した場合のパス係数は.07となり,ブートストラップ法(リサンプリング回数3000回)による間接効果は有意であった (95%信頼区間[.01, .24])。
 考察
 本研究の結果は,怒りを反すうしやすい人がそうでない人に比べてゆるせないと知覚しやすいことを示しており,仮説を支持するものであった。それゆえ,反すう特性はゆるしを妨げる個人要因であるといえる。ただし,これは怒りに関する反すう特性に限定されるかもしれない。なぜなら,本研究では,怒り体験に注意を向け,思考し続けることや過去の類似した怒り体験を想起することはゆるせなさと関連がなく,怒りによって喚起されやすい報復や相手への攻撃に関する侵入的,再帰的思考のみがゆるせなさに影響していた。つまり,ゆるしを妨げるのは単なる怒り体験の反復的思考ではなく,報復にまつわる思考であると考えられる。McCulloughらが定義したようにゆるしを報復動機の低下と捉えるなら,怒り反すうやその下位尺度である報復思考との関連性が示されたことは当然のことであろう。
 本研究において,怒りを媒介させた場合には怒り反すうとゆるせなさとの関連が有意でなくなった。したがって,怒り反すうとゆるせなさとの関係は,怒りを媒介するといえよう。この結果はMcCulloughらの結果と合致するものであり,怒り反すうが直接ゆるせなさに影響するというよりも,怒り反すうによって生じる強い怒りがゆるせなさに影響することを示唆している。
 引用文献
Sukhodolsky DG, Golub A, & Cromwell EN. (2001). Development and validation of the anger rumination scale. Personality and Individual Differences, 31(5), 689-700.
McCullough ME, Bono G, & Root LM. (2007). Rumination, emotion, and forgiveness: three longitudinal studies. Journal of Personality and Social Psychology, 92(3), 490-505.

キーワード
怒り反すう/ゆるし/怒り


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