発表

2B-015

対人場面における認知の確信度と不安・怒りの関係性

[責任発表者] 藤原 由佳:1
1:江原積善会積善病院

目的
 ToMに関する研究は,主に幼児期を対象とした研究が多かったが,近年青年期以降のToMに関する研究も行われている(e.g., 辻ら,2016)。しかし相手の意図等について正答がある課題はToMの成立を検討するために有用だとしても,成人に関する臨床心理的観点では,推測についてある程度曖昧さがある課題を用いて,自信の強さ(回答への確信度)と,対人場面で相手に対して感じるネガティブ感情との関係を検討する必要があると思われる。
そこで,本研究では青年期以降について,通常のToM課題ではなく,意図などの推測が確実ではない他者観察課題の質問紙版を作成し(ToM形式課題),他者の内面推測に係る確信度も答えるものを作成した。そして他者が自分に働きかけてきたという想定の文章から,自分が持つであろう感情を答える場面想定法(相澤,2014)との関係を検討した。
方法
Bosacki,(2000)のインタビュー形式ToM課題を,辻・山崎・藤原(2016)が日本語訳したものを参考に,中心人物と2人の周辺人物が相互作用するストーリーの質問紙ToM形式課題を作成;まず,辻ら(2016)の「女の子とブランコ」と基本的な構造は同様だが登場人物の内面記述などはできるだけ省いた行動観察記述になるようにして,意図等の推測に関する確信度が回答者間でバラつきやすくした。他の課題も同様に,ただし相手が回答者と同世代,年下,また年上と年齢に幅を持たるようにされた。中心人物と周辺人物の内面推測を自由記述,各々の回答への確信度を5点尺度評定とした。6課題作成し,予備調査に基づいて各年齢層の課題(計3課題)を選んだ。また確信度が文章理解の困難度に従属していないかを見るため,再読回数も質問に加えた。
場面想定法(相澤,2014)の文章は,“あなた”がある場面で,他者からある働きかけを受けたというものであり,これも8課題を作り,予備調査に基づいて3年齢層が含まれるように4課題を選んだ。行為者の行動が”わざとだと思う・わざとではないと思う・判断できない”の3選択肢と,自分が感じる怒り・不安の各々について5点尺度評定。
本調査では大学1年生と3年生計146名を対象に調査を行った。有効回答は回答不備33名を除く113名(男35,女78)。フェイスシートにインフォームドコンセント関係の記載を行い,口頭でも同様の説明。研究倫理委員会の承認を得て実施。
結果
ToM形式課題の確信度と各文章の再読回数の関係をFisherの直接法で検討したが,その関連は有意ではなく,確信度は文章理解困難度を示すのではないと判断した。そこでToM形式3課題の確信度を変数として因子分析を行った。その結果,中心人物・周辺人物の両方で明確に一因子となり, 3課題の確信度平均が確信の持ちやすさに関する個人特性を表すと判断した。
各場面想定における怒り・不安を各々従属変数とし, (a)ToM形式課題中心人物・周辺人物各々の確信特性(3課題の平均),(b)確信特性の一貫性(3課題の標準偏差),(c)性別の3変数を独立変数とし,性別との交互作用も検討できる階層的重回帰分析(West, et al.,1996)を行った。怒り・不安と中心人物確信特性について一部場面を除いて男性は確信特性が高いほど怒り・不安を感じる傾向がみられた。一方女性はどの場面においても確信特性と感情の関係性が弱く,ほぼ関係性がみられなかった。また怒り・不安と周辺人物確信特性についても同様の傾向がみられた。
各場面想定法課題での怒り・不安各々を従属変数とし,(a)性別と,(b)他者行動が意図的・無意図・判断不可の選択肢回答をWest, et al.,(1996)の方法でダミー変数セットに符号化したものを独立変数とした階層的重回帰分析の結果,一部場面を除き,男女共に意図的と判断した場合は怒り・不安が強くなる傾向がみられた。
今回の調査結果から男性は確信特性と場面ごとの意図推測両方がネガティブ感情(怒り・不安)の強さに影響している傾向(図1)であるが,一方で女性は意図の推測は感情の強さに影響を与えるが,確信特性の影響は小さいと考えられる (図2)。
引用文献
相澤直樹(2014) 対人恐怖における認知の偏りの内容特定性について:敵意帰属との関連から 神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要,8:103-106
Bosacki,S. L. (2000).  Theory of mind and self-concept in preadolescents: Links with gender and language. Journal of Educational Psychology, 92:709-717.
辻弘美・山崎綾香・藤原はづき(2016) 心の理論インタビューの青年期後期から成人期の日本人女性への応用―心の理論インタビューでどこまで他者の心的状態理解が測定できるのか― 大阪樟蔭女子大学研究紀要 6:13-19
West, S.G., Aiken, L.S., and Krull, J.L. (1996) Experimental personality designs:analyzing categorical by continuous variable interactions. Joumal of Personality, 64:1-4

キーワード
心の理論/対人認知/確信度


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