発表

2B-014

親アイデンティティを規定する要因に関する探索的検討(4)
父親の育児行動への評価と親IDおよび関係効力感との関連

[責任発表者] 加藤 陽子:1
[連名発表者・登壇者] 山下 倫実:2, 石田 有理:3, 布施 晴美#:4
1:十文字学園女子大学, 2:十文字学園女子大学, 3:十文字学園女子大学, 4:十文字学園女子大学

【問題と目的】
 本研究の目的は,幼い子どもを持つ親が「親としてのアイデンティティ(以下,ID)」を獲得していく過程を明らかにすることである。
 山下ら(2016)は,母親の親IDと父親の育児行動への評価の関連を検討した結果,第1子誕生後の父親による育児行動のうち,母親への支援が母親の「親としての効力感」を高める一方,子の世話の少なさもまた母親の効力感を高めることを示した。つまり,夫-妻という関係による育児支援は母親の親としての効力感を高めるが,父-子の直接的な育児支援は,逆説的に母親自身の効力感を奪う可能性があるといえるだろう。さらに,母親が父親の対母親支援を評価するほど,父親は自分の親IDを受容していた(山下ら,2018)。ただし,こうした研究からは,父親の育児行動への評価が夫婦それぞれの親IDにどう関連しているのか,また夫婦としての関係効力感とどのような関連があるのかまでは明らかとなっていない。
 そこで,本研究では産後3年未満の夫婦を対象に,父親の育児行動への評価と,夫婦それぞれの親IDおよび夫婦の関係効力感との関連について検討する。
【方法】
・調査時期と方法:2019年 3 月にクロス・マーケティング社に依頼してWEB上で調査した。
・調査協力者:第1子の誕生から3年未満の夫婦100組(男性100名;平均年齢34.83歳,SD=5.44,女性100名;平均年齢32.72 歳,SD=4.90)。
・調査内容:1)夫婦の関係効力感(浅野,2009);6 項目4件法。2)父親の育児行動に対する評価;西尾(2013)の父親育児行動リストを基に,新たに対母親支援4項目を加え独自に作成した計15項目5件法。「対子ども育児(9項目)」,「対母親支援(6項目)」。3)親 ID尺度;山口(2010)の親 ID 尺度を参考に17 項目を選定し,5 件法で夫婦それぞれに回答を求めた。「親としての自信のなさ(7項目)」「親役割の受容(5項目)「自己優先的な親役割 (2項目)」
【結果と考察】
 夫婦それぞれの「対子ども育児」「対母親支援」の平均値を基準に高低群に分け,親ID(母親/父親)と効力感(母親/父親)を従属変数とする2要因の分散分析を行った。
 まず,母親による育児行動評価においては,父親の自己優先的IDのみに有意傾向の交互作用がみられた。そこで単純主効果の検定を行った結果,対母支援低群において,対子ども育児の低群より高群の方が,父の自己優先的ID得点は低かった。すなわち,母親からの対母親支援評価が低い場合,子への育児をしていると評価された父親の方が,していないと評価された父親より自己優先的なIDを持ちにくいことが示された。また,夫婦の関係効力感,親としての自信のなさ,親役割の受容で対母支援の主効果が確認され,対母支援の評価の低群より高群の方が,夫婦ともに関係効力感が高く,親としての自信があり,親役割を受容していることが示された。
 次に,父親による育児行動自己評価においては,母親の自己優先的IDに有意な交互作用,夫の関係効力感,父親としての自信のなさ,父親の自己優先的IDに有意傾向の交互作用がみられた。そこで単純主効果の検定を行った結果,子への育児行動をしていないと自覚がある場合,母親への支援を自覚している方が,また,母親支援をしていないと自覚している場合,子への育児をしている方が,母親・父親ともに自己優先的なIDと父親としての自信のなさを持たないことが示された。また,夫は,子への育児行動への自己評価の行程に関わらず,母親への支援をしていると自覚している方が夫婦関係効力感を感じていた。さらに,妻の関係効力感,母親としての自信のなさ,母親・父親双方の役割の受容において,対母支援の主効果が確認された。つまり,対母支援の自己評価が低い群より高い群の方が,妻は関係効力感を感じており,母親としての自信があり,夫婦ともに親役割を受容していることが示された。
(本研究はH30年度本学のプロジェクト研究費の助成を受けて実施された)

キーワード
親アイデンティティ/育児行動/関係効力感


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