発表

2B-012

お辞儀の丁寧さが顔の魅力に及ぼす影響

[責任発表者] 大杉 尚之:1
[連名発表者・登壇者] 河原 純一郎:2
1:山形大学, 2:北海道大学

背景と目的
お辞儀が人間関係にとって重要であることは,入社後の新人研修セミナーでお辞儀の仕方に関する講習が組まれる等,一般的に信じられているが,お辞儀が顔の魅力に及ぼす影響は十分に検討されていない。Osugi & Kawahara (2015)は一連の実験によって,お辞儀動作をすることで顔の主観的魅力が上昇することを明らかにした。具体的には,3Dモデルがお辞儀動作をした条件の魅力評定値が,仰け反り条件および静止条件よりも高くなった。しかし,この研究ではお辞儀動作の運動情報は操作していない。お辞儀動作の屈体,静止,伸展動作の時間によりお辞儀の丁寧さの印象が変化すること(e.g., 柴田・高橋・行場, 2014)から,お辞儀の運動情報により,顔の魅力に及ぼす影響が異なる可能性がある。そこで本研究ではお辞儀の運動情報を操作することで,お辞儀が顔の主観的魅力に及ぼす影響を検討した。実験1では静止時間(0秒または1.5秒),実験2では屈体と伸展動作の運動時間(合計で0.5秒または1秒)を操作した。

方法
実験1,実験2ともに16人が参加した。実験参加者はディスプレイから約60cm離れた位置で座って画像を観察した。各刺激は,Facegen modeler 3.5と Daz studioを用いて作成した。各刺激の大きさは縦14.5cm で横14.5cm であった。3Dモデルが液晶ディスプレイ上に提示された。24種類の女性の3Dモデルが実験に用いられた。
各試行では,静止したモデルの画像が画面中央に1秒提示された後,お辞儀動作および仰け反り動作を行なった。実験1では屈体と伸展動作はそれぞれ0.5秒で,最大角度における静止時間が0秒と1.5秒の2条件設けられた。実験2では静止時間が0秒で固定され,屈体と伸展動作の時間が操作された(各0.25秒で合計0.5秒または各0.5秒で合計1秒)。これらの動作後に0.5秒の静止時間があった。静止条件では動作条件と同じ時間,静止したモデルの画像が提示された。全ての条件でその後に魅力評定のためのスケール(魅力的ではない:1から魅力的である:100まで),礼儀正しさ評定のためのスケール(礼儀正しくない:1から礼儀正しい:100まで),従順さ評定のためのスケール(従順でない:1から従順である:100まで)が提示された。課題は,提示されている顔刺激と一致する評定値をマウスクリックで答えることであった。各刺激は提示条件ごとに1回ずつ提示され,全部で144試行が行われた。

結果
 図1に実験1と実験2の平均魅力評定値をそれぞれ示す。各実験でお辞儀条件が最も魅力評定値が高く,静止条件,仰け反り条件の順番になった。また,お辞儀条件では静止時間(実験1)または運動時間(実験2)が長くなるほど魅力評定値が高くなった。分散分析の結果,動作と静止時間(実験1),および動作と運動時間(実験2)の交互作用が有意であり(Fs(2,30)>9.82, ps<.001),下位検定の結果,お辞儀条件のみ単純主効果が有意であった(Fs(1,45)>21.27, ps<.001)。以上の結果より,お辞儀の静止時間および運動時間が長くなるほど,お辞儀が顔の魅力に及ぼす影響が大きくなることが明らかとなった。また,礼儀正しさ評定値,従順さ評定値でも同様の結果が示されており,お辞儀条件のみ静止時間と運動時間が長くなるほど,評定値が上昇した。

考察
 実験の結果,静止時間や屈体と伸展動作の運動時間が長くなるほどお辞儀が主観的魅力に及ぼす影響が大きくなった。また,礼儀正しさ評定値および従順さ評定値でも同様の傾向が示された。静止時間や屈体と伸展時間はお辞儀の丁寧さの印象に影響することから,お辞儀が丁寧に感じられるほど魅力の上昇量が増加することが明らかになった。Osugi & Kawahara (2015)でも指摘されているようにお辞儀効果は礼儀正しさや従順さの認知的なスキーマと密接に関連している。丁寧なお辞儀動作は,このスキーマをより活性化させることでポジティブな評価を生み出すことが明らかとなった。

引用文献
Osugi, T., & Kawahara, J. I. (2015). Effects of bowing on perception of attractiveness. Attention, Perception, & Psychophysics, 77, 1697-1714.
柴田寛・髙橋純一・行場次朗 (2015). お辞儀の主観的印象と社会的文脈に対する適切さ. 心理学研究, 85, 571-578.

キーワード
顔の魅力/お辞儀/文化的背景


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