発表

2A-021

IPV(Intimate partner violence)被害・加害経験尺度の短縮版の作成(3)
加害経験尺度短縮版の作成と性差の検討

[責任発表者] 松井 めぐみ:1
[連名発表者・登壇者] 寺島 瞳:2, 宇井 美代子:3, 竹澤 みどり:4, 宮前 淳子:5
1:岡山大学, 2:和洋女子大学, 3:玉川大学, 4:富山県立大学, 5:香川大学

目的
 親密な交際相手からの双方向の暴力を検討するためには,被害経験を測る尺度と,それに対応した加害経験を測る尺度も必要である。加害尺度については越智他(2016)の「デートバイオレンス・ハラスメント加害尺度」等があるが,様々な深刻度を考慮した心理・身体・性的暴力を測る質問紙は作成されていない。またこれまで宮前他(2017),松井他(2017)によって被害経験に性差があることは明らかにされているが,加害経験にも性差がある可能性が考えられる。
 本研究では竹澤他(2019),宇井他(2019)で作成された被害経験尺度の短縮版を利用し,加害経験尺度についても短縮版を作成し,因子構造の確認と性差の検討を行う。
方法
 被害経験尺度の調査対象者と調査方法は,全て「IPV (Intimate partner violence)被害・加害経験尺度の短縮版の作成(1)」(竹澤他,2019)と同じであった。
被害経験尺度の分析項目:竹澤他(2019),宇井他(2019)で作成された被害経験尺度短縮版の項目を用いた。
加害経験尺度の作成手続き:宮前他(2017),松井他(2017)が作成した被害経験を尋ねる「包括的IPV尺度」の項目を,加害経験を尋ねる内容に変更して使用した。80項目(1項目はダミー項目)の心理的,身体的,性的暴力に対して,加害経験の頻度を4件法(全くなかった,1~2度あった,ときどきあった,ひんぱんにあった)で回答を求めた。
調査対象者:現在独身で交際相手がいる18歳~29歳の男女800名(男性400名,女性400名)を分析対象とした。平均年齢は23.87歳(SD=3.34)であった。
調査方法:調査はWEB調査会社に依頼し,2018年10月にオンライン上で実施した。本研究の実施については,富山大学の人間を対象とし医療を目的としない研究倫理審査委員会の承認を得た。
分析項目:竹澤他(2019),宇井他(2019)で作成された被害経験尺度短縮版に対応する加害経験項目を用いた。
結果と考察
被害・加害経験尺度の確認的因子分析:加害経験項目も被害経験尺度短縮版と同じ因子構造であると仮定し,両尺度に対して構造方程式モデリングによる確認的因子分析を行った。その結果,全てのパス係数は1%水準で有意で.35以上を示し,各適合度指標(Table 1)は中~高程度の適合度を示した。よって加害経験項目が被害経験尺度短縮版と同様の因子構造を持つとするモデルは妥当なものと判断され,24項目8因子の加害経験尺度短縮版が作成された。今後,さらに妥当性や信頼性を詳細に確認していく必要がある。
性差の検討:各因子に含まれる項目の合計点を下位尺度得点とし,男女で差があるかどうか検定を行った。その結果有意な差が見られ(Table 2),男性は「性的無理強い行為」

t(713)=2.36, p<.05)の加害経験が多く,「自傷行為による脅迫」(t(691)=2.66, p<.01),「人権侵害・監視行為」(t(725)=2.06, p<.05)の被害経験が多かった。女性は「束縛」(t(781)=2.32, p<.05),「軽~中程度の身体的暴力」(t(772)=2.26, p<.05)の加害経験が多く,「性的無理強い行為」(t(1098)=4.68, p<.01),「見下し・怒りをぶつける行為」(t(905)=3.43, p<.01)の被害経験が多かった。これらの結果から,被害・加害それぞれで経験する暴力には男女で差があることが明らかとなった。「性的無理強い行為」だけは男性は加害,女性は被害を多く経験しているが,有意差が見られた他の行為は,片方が被害と思っていても他方は加害と認識していない,あるいはその逆である可能性が考えられる。
 今後は作成した短縮版を用いて,パートナー間での双方向の暴力がどのように影響し合っているのかについての検討を行っていく。
引用文献
松井他(2017)日本健康心理学会第30回記念大会発表論文集
宮前他(2017)日本健康心理学会第30回記念大会発表論文集
越智他(2016)法政大学文学部紀要 72, 161-171.
竹澤他(2019)日本心理学会第83回大会発表論文集
宇井他(2019)日本心理学会第83回大会発表論文集
*本研究はJSPS科研費18K03091の助成を受けたものです。

キーワード
加害経験/短縮版作成/性差


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