発表

2A-019

IPV(Intimate partner violence)被害・加害経験尺度の短縮版の作成(1)
心理的暴力被害尺度について

[責任発表者] 竹澤 みどり:1
[連名発表者・登壇者] 宮前 淳子:2, 寺島 瞳:3, 宇井 美代子:4, 松井 めぐみ:5
1:富山県立大学, 2:香川大学, 3:和洋女子大学, 4:玉川大学, 5:岡山大学

目的
 親密な関係における暴力(Intimate partner violence: IPV)が社会問題となっている。海外では,多くの研究でカップルの双方が暴力を振るう双方向のIPVが最も生起頻度が高いことが示されている(Langhinrichsen-Rohling, Misra, Selwyn & Rohling, 2012など)。さらに,日本においては西岡・小牧(2008, 2009)が,被害者でも加害者でもある群を“バトル群”として抽出しているが,ほとんどの研究は加害や被害の一方のみをたずねる研究であり,双方向のIPVを考慮に入れた研究はほとんど行われていないのが現状である。双方向の暴力を検討するためには,調査協力者の負担を考慮した項目数の少ないIPV測定尺度が必要である。これまで著者らはIPVの被害経験を測定するための3つの尺度(心理的暴力・身体的暴力・性的暴力)の開発を行ってきた(宮前他,2017,松井他,2017)。本研究では,これらの尺度の短縮版を作成することを目的とした。本発表では,心理的暴力尺度について報告する。

方法
調査対象者:現在独身で交際相手がいる18歳~29歳の男女2670名(男性544名,女性2122名,その他4名)を分析対象とした。平均年齢は24.58歳(SD=3.04)であった。
分析項目:宮前他(2017)で作成した心理的暴力被害経験尺度を用いた。
調査方法:調査はWEB調査会社に依頼し,2017年4月にオンライン上で実施した。本研究の実施については,富山大学の人間を対象とし医療を目的としない研究倫理審査委員会の承認を得た。

結果と考察
 心理的暴力被害経験尺度36項目について,因子分析(一般化した最小2乗法・プロマックス回転)を行った。歪度と尖度が他の項目に比べて極端に高かった1項目,負荷量が.35未満であった2項目,複数の因子に.35以上の因子パターンを有する1項目を削除して再度同様の方法で因子分析を行った。その結果,宮前他(2017)と同様の4因子(「見下し・怒りをぶつける行為」「人権侵害・監視行為」「束縛」「自傷行為による脅迫」)が抽出され,因子間相関は.50~.69であった(Table 1)。初期の固有値は11.38~1.19で,累積寄与率は48.10%であった。下位尺度ごとにCronbachのα係数を算出した結果,それぞれα=.84~.91の間であった。
 次に,因子ごとに各項目の平均およびSD,項目間相関を算出した。各因子を構成する項目数を減らすために,まず,項目間相関が高い項目のうちSDが低い項目を削除した。次に残った項目のうち因子ごとに因子パターンが高い上位3項目を残し,それ以外の項目を削除した。残った全12項目に対して,4因子を指定して因子分析(一般化した最小2乗法・プロマックス回転)を行った。その結果,各因子に3項目ずつ想定通りに高い因子パターンを示し,因子間相関は.37~.68であった(Table 2)。よって,短縮版の項目でも4因子構造が確認され,妥当性は有していると考えられる。初期の固有値は4.47~.85で,累積寄与率は49.50%であった。下位尺度ごとにCronbachのα係数を算出した結果,それぞれα=.66~.84の間であり,項目数を考えれば内的な一貫性も備えていると考えられる。
 以上の結果より,因子的妥当性や信頼性を備えている心理的暴力被害経験尺度の短縮版が作成された。

引用文献
西岡・小牧(2008)国際研究論叢,21(3)
西岡・小牧(2009)国際研究論叢,22(3)
Langhinrihsen-Rohling et al. (2012) Partner Abuse, 3(2)
松井他(2017)日本健康心理学会第30回記念大会発表論文集
宮前他(2017)日本健康心理学会第30回記念大会発表論文集

*本研究はJSPS科研費18K03091の助成を受けたものです。

キーワード
心理的暴力/被害経験/短縮版尺度作成


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