発表

2A-018

大学生を対象としたDV予防プログラムに用いるDV場面の特徴

[責任発表者] 古村 健太郎:1
[連名発表者・登壇者] 相馬 敏彦:2, 山中 多民子:3, 杉山 詔二#:4
1:弘前大学, 2:広島大学, 3:武蔵野大学心理臨床センター, 4:東京都立松沢病院

 青年期から成人期において,恋人間でのDV加害及び被害を経験した人が少なからずいることが,様々な調査から明らかにされている(内閣府男女共同参画局, 2013;日本性教育協会, 2008, 2013, 2018)。青年期や成人初期における社会性の発達や社会適応の観点から考えても,恋人間のDVに対する予防教育が果たす役割は極めて大きく,幅広い人々を対象にした1次予防を実践していくことが望まれる。では,仮想的なDV場面の提示にもとづいて展開されることが多い1次予防において,どのような場面を提示することが予防教育の効果を高めるであろうか。本研究の目的は,大学生を対象としたDV予防プログラムで提示する場面の特徴を検討することである。具体的には,些細な言動で機嫌が悪くなってしまう場面(不機嫌場面),内緒で他の異性のいる飲み会にいっていたことがわかる場面(飲み会場面),言動を理不尽だと感じる場面(理不尽場面),人付き合いに口出ししてくる人付き合いを制限する場面(人付き合い制限場面),他の異性との付き合いを制限してくる場面(異性付き合い制限場面)の5場面の特徴を検討する。
方法
調査対象者 株式会社クロス・マーケティングが保有するインターネット・サンプルより,18―25歳である学生と社会人を条件に抽出した382名が回答した。その中から,フィラー項目に正回答をしており,かつ,スクリーニング調査と本調査で矛盾がなかった288名(男性83名,女性205名)を分析対象とした(平均年齢21.68歳,SD=2.25,恋人がいる人は112名)。
調査内容 5つのDVの場面を提示し,各場面の生起可能性(1項目,4件法),イメージしやすさ(1項目,4件法),二者の対等さ(1項目,4件法),別れの理由になる可能性(1項目,4件法),許容可能性(1項目,4件法),対処行動の行使可能性(主張行動,受忍行動,攻撃行動を各3項目,5件法)を尋ねた。その後,外向性と神経症傾向(並川他, 2012),恋愛に対するイメージ尺度(金政, 2002)から独占・束縛イメージと献身的イメージ(5件法,各3項目)と性役割肯定意識(石黒, 1998)を尋ねた。性別(1=男性,0=女性)と恋人の有無(1=有り,0=なし)はダミーコード化した。
結果と考察
 場面の特徴 5つのDV場面の生起可能性,イメージしやすさ,対等さ,別れの理由になる可能性をTable 1に示す。これらの変数について,場面(参加者内,5場面)×性別(参加者間,男性/女性)×恋人の有無(参加者間,有り/無し)の3要因分散分析を行った(場面の主効果以外の結果は発表時に紹介する)。
 いずれも場面の主効果は有意であった(Fs > 2.78)。Holm法による多重比較の結果をTable 1に示す。生起可能性は,飲み会場面が不機嫌場面や理不尽場面より有意に得点が高かったものの,その効果量は小さく(Cohen’s ds < .21),また,平均点は2点台であった。したがって,今回提示した場面の生起可能性について,回答者は概ね同程度に低いと捉えたことが伺える。また,飲み会場面は,イメージしやすさが最も高く,平均値も3点台であることから,回答者にとって比較的イメージしやすい場面であったと考えられる。
 飲み会場面や不機嫌場面は,理不尽場面や交友制限場面よりも,別れの原因になりやすいと同時に,許容可能性が低かった。加えて,不機嫌場面や飲み会場面では受忍行動を行いやすいのに対し,理不尽場面や交友制限場面では主張行動や攻撃行動を行う可能性が高かった。
 以上の結果から,飲み会場面は,イメージしやすさ,許容可能性が高さ,別れの理由へのなりにくさ,主張行動を取りにくさ,受忍のしやすさが特徴的であった。DVの激化を予防するためには,DVの初期段階やDVに至っていないネガティブな相互作用において,主張的に行動する必要がある。そのため,DV予防プログラムにおいて飲み会場面を取り上げ,その際の相互作用のあり方を考えることは,有効な手立ての一つとなりうる。
 場面の評価に影響を与える要因 各場面の評価に影響を与える要因を検討するため,階層線形モデル(ランダム切片モデル)による分析を行った。その結果,対等さは,性役割肯定意識が弱いこと(b=−0.18)と関連した。別れの理由になる可能性は,外向性が高いこと(b=0.10)や献身的イメージが弱いこと(b=−0.04),女性であること(b=−0.18)と関連した。許容可能性は,献身的イメージが強いこと(b=0.06),性役割肯定意識が弱いこと(b=−0.16),恋人がいること(b=0.12),男性であること(b=0.30)と関連した。
 これらの結果から,恋人の有無やジェンダー,ジェンダー意識,恋愛のイメージの持ち方によって,提示されるDV場面の評価が異なることが伺える。幅広い人々を対象とした1次予防では,受講する人々が有するこれらの特徴を踏まえ,場面提示を行っていく必要がある。

キーワード
DV/予防教育/1次予防


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