発表

2A-017

入学前の大学イメージは大学適応をどう予測するか?

[責任発表者] 水野 邦夫:1
1:帝塚山大学

「大学全入時代」と呼ばれる昨今,大学新入生の入学後の大学適応が問題視されている。不適応に関連する要因として,これまでさまざまなものが挙げられてきたが,近年,入学前の大学生活への期待と現実のギャップに注目した研究がみられるようになった(例,千島・水野, 2015)。しかしこのような研究も,結局は入学前の大学イメージを入学から数ヶ月後に想起させたうえで回答を求めている点で,データが入学後の大学生活に影響している可能性は否めないであろう。そこで本研究は,入学前の大学合格者に対し,大学イメージへの回答を求め,それが入学後の大学適応をどのように予測するのかについて検討することを目的とした。

方 法
分析対象者 2015~2018年に近畿圏の一大学の年内入試に合格し,その後入学した者のうち,下記調査への協力に同意した291名(男子151名,女子140名)。
心理尺度 調査にあたり,下記の心理尺度を用いた。①大学観尺度(杉浦他, 2003):大学を「出会いの場」「モラトリアムの場」「勉強する場」「自分探しの場」「将来準備の場」と捉える程度を測定する。②学校生活に対する意識の調査項目(二宮, 1990)。「仲間志向」と「学校適応」の尺度からなる(ただし,調査の不備により,3項目を削減)。
調査実施時期および手続き 調査対象者の入学前(2月中旬)に入学準備のイベントが実施された際に,大学観尺度への回答を求めた。
入学後は,授業時間の一部を利用して,4月中旬・7月下旬・10月初旬・1月下旬に学校生活に対する意識の調査項目等への回答を求めた。

結 果
調査実施時の欠席等により,各実施時点に回答をしていないケースがあるため,分析によりデータ数が異なる。
各尺度の信頼性 使用した尺度のアルファ係数を算出したところ,大学観尺度は.724(入学前2月勉強の場)~.830(同2月出会いの場),仲間志向尺度は.827(入学後4月)~.854(同10月),学校適応尺度は.821(同1月)~.848(同7月)であり,尺度の信頼性は充分な高さを有していると考えられる。
入学前の大学観から入学後の大学適応の予測 入学前の各大学観得点を説明変数,入学後の各適応(仲間志向・学校適応)得点を基準変数,7月期以降は4月期の仲間・適応得点を統制変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った(表参照)。
 その結果,入学前の大学イメージを「出会いの場」と捉え,また,「モラトリアムの場」のような消極的イメージに捉えないほど,入学直後の仲間関係は良好と感じる様子が窺える。また,入学前の大学イメージをモラトリアムの場と捉えていないほど,入学直後に大学に対する適応を感じていることが窺える。

しかし,入学後しばらく経過してからは,入学前の大学イメージが大学適応にほとんど関連しないことが示された。

考 察
 はじめに,入学前に大学を「出会いの場」であり,「モラトリアムの場」ではないとイメージしているほど,入学直後の仲間関係を良好に捉えるという結果が得られた。このことから,大学での人間関係や生活に対してポジティブなイメージを持っている者は,入学後の人間関係もポジティブに捉えやすいことが考えられる。その一方で,入学前に抱いていた大学イメージが,入学後しばらく経過してからの大学適応にほとんど関連しないことも示された。これについては,新入生が入学後の大学生活を通して,それまでの大学に対するイメージを徐々に変化させ,適応していった結果,入学前の大学観にとらわれない大学生活を確立した可能性が考えられる。
 今後の課題として,まず,本研究は先行研究が問題としている入学前後のギャップについてふれられていない。この点については,今後の研究において明らかにする必要があろう。また,今回のサンプルは,結局は大学生活に適応している者や,そもそも入学意思が高いであろう年内入試に合格した者を対象とするなど一部の入学者の意向しか反映されていないことが考えられ,今後はそれらの点も考慮する必要があろう。

引用文献
千島・水野 (2015). 教心研, 63, 228-241./二宮 (1990). 学校生活における青年 久世(編)変貌する社会と青年の心理 福村出版 Pp.158-182./ 杉浦他 (2003). 日心67回論文集, 1198.

キーワード
大学観/大学新入生/適応


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