発表

2A-015

RFQ(Regulatory Focus Questionnaire)の日本語版作成と信頼性および妥当性の検討

[責任発表者] 松岡 弥玲:1
[連名発表者・登壇者] 太幡 直也:1, 三ツ村 美沙子:1, 高橋 純子#:2, 高木 浩人:1
1:愛知学院大学, 2:コロンビア大学

問題と目的 本研究の目的はHiggins, Friedman, Harlow, Idson, Ayduk, & Taylor (2001)の制御焦点尺度(RFQ: Regulatory Focus Questionnaire)の日本語訳を作成し,信頼性,妥当性について検討することである。Higgins (1997)は,Regulatory focus theoryにおいて,理想や達成に焦点づけ,獲得を求める自己制御(0→+1が成功,0→0は失敗)であるPromotion focus(促進焦点)と,安全や責任に焦点づけ,喪失を避けることを求める自己制御(0→0が成功,0→-1が失敗)であるPrevention focus(予防焦点)とを区別した。これらの自己制御によって引き起こされる感情は異なり,Promotion focusは上機嫌な感情や落胆と関連し,Prevention focusは,静かな感情や動揺と関連する。RFQは,このようなPromotion focus,Prevention focusに関わると想定される主観的な経験(親の養育態度など)を尋ねる項目によって構成されている。RFQにはいくつかの日本語訳があるものの(山上,2008;遠藤, 2011など),原版のRFQ尺度は,疑問文の項目と平叙文の項目とが混在し,日本語に訳す上で困難さがある。本研究では,日本語と英語のバイリンガルである第4著者と共同で翻訳することで英語でのニュアンスを反映しつつ,より平易な日本語版を作成することを目的とする。
方法 対象者 大学生120名(男性59名,女性61名,平均年齢20.49歳, SD=0.88)であった。質問紙の構成 1. RFQの日本語版(11項目) Higgins et al.(2001)のRFQについて,原版の作者の承諾を得て日本語版を作成した。日本語と英語のバイリンガルである第4著者が日本語訳を作成し,その後著者5名での議論を経て,表現の適切さ,文の明瞭さが十分になるまで修正を繰り返した。妥当性の検討のために,2.促進予防焦点尺度(尾崎・唐沢,2011)3. 行動抑制システム尺度(BIS:嫌なことがあるとすぐに逃げ出してしまうなど)・行動促進システム尺度(BAS:なりふり構わず欲しいものは手に入れるなど)(安田・佐藤,2002)4. 一般感情尺度(小川ら,2000)5. 特性罪悪感尺度(大西,2008)を用いた。
結果と考察 1. RFQの因子分析結果 RFQ尺度について因子分析(主因子法,バリマックス回転)を行ったところ,想定されていたPreventionとPromotionの2因子に分かれた。因子負荷量の低い項目を削除後,再度因子分析を行った(Table 1)。信頼性の検討 信頼性係数はPrevention 4項目(α=.74),Promotion 6項目 (α=.68)であった(Table 1)。2. 妥当性の検討 諸変数との関連(Table2)については,Promotionは,想定通りに促進予防焦点尺度の利得接近得点(利得を追求し無利益を避ける傾向)や(r=.38, p<.001),BAS(ゴールの達成に向けて行動を賦活する)との間に正の相関がみられた(接近ドライブr=.33, p<.001; 報酬応答性r=.33, p<.001; 新たな報酬体験の追求r=.21, p<.05)。一般感情尺度との関連についても,「やる気に満ちた」「快調な」などの情動と正の相関がみられた(順にr=.50, p<.001;r=.48, p<.001)。以上の結果からPromotionの妥当性が示されたと考えられる。一方,Preventionは,一般感情尺度との関連において関連すると想定された「静かな」とは正の相関がみられ(r=.25,p<.01),「動揺した」とは有意な負の相関が得られた(r=-.18,p<.05)。以上の結果はPreventionの妥当性を示す結果だと考えられる。
 なお,損失回避やBISとは無相関であり,BASのうちの接近ドライブ(項目例:なりふり構わず欲しいものは手に入れる)と新たな報酬体験の追求(項目例:面白そうなことがあればじっとしていられない)との間に負の相関がみられた(順にr=-.28, p<.01;r=-.29, p<.01)。このPreventionとBIS/BASとの関連はPreventionの項目内容から考えると,親の言いつけを守る傾向の高い人ほど,欲しいものを手にいれようとせず,新たな報酬体験をしようとしないということになる。日本の伝統的な子育てを検討した小嶋(1989)は,日本では子育ての目標として調和的な人間関係を維持することや,過度の刺激や過保護を避け,幼少時から衣食の面でやや不足がちの環境のもとで育てることが推奨されていたと述べており,このような日本の子育ての特徴が,PreventionとBASとの結果に反映された可能性が考えられる。
 以上,本研究の結果からは,RFQの日本語版について,信頼性および妥当性が確認できたと考えられる。

キーワード
制御焦点/信頼性/妥当性


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