発表

2A-011

日常的攻撃行動尺度の作成と信頼性・妥当性の検討

[責任発表者] 石橋 加帆:1
[連名発表者・登壇者] 桐生 正幸:1
1:東洋大学

目的 心理学的攻撃研究において攻撃性を測定する際には質問紙がよく使用されてきた。日本では特に安藤・曽我・山崎・島井・嶋田・宇津木・大芦・坂井(1999)の日本版Buss-Perry攻撃性質問紙(以後,日本版BAQとする)が使用されることが多い(佐藤・高橋・杉山・堺・嶋田,2007)。しかし,日本版BAQの行動側面における項目が日常生活で経験されるような,舌打ちや無視などの身近な攻撃行動を測定できているかは疑問である。また,日常生活では対物攻撃も行われる。ロボットに対するいじめは目撃した人に不快感を与えることが示されており(Pütten, A., Krämer, N., Hoffmann, L., & Sobieraj, S., 2013),対物攻撃も他者に対して影響を及ぼすものであると考えられる。そこで,本研究では攻撃行動を「生物および無生物に対して物理的または心理的に危害を与える行為。また,行為の対象者がその行為によって不快な気持ちになると推測される行為(舌打ち,陰で悪口を言うなど)。」と定義する。そして,日常生活で経験される攻撃行動を測定できる日常的攻撃尺度を作成し,その信頼性と妥当性を明らかにすることを目的とする。

方法予備調査:調査参加者は東京都の大学生11名(男性6名,女性5名)で,14日間,毎日その日に行った攻撃行動について(1)時間(2)対象(3)原因(4)攻撃行動の内容(5)当時の感情の5項目を日記に書いてもらった。
日常的攻撃行動尺度の項目の作成:予備調査の日記の内容から攻撃行動を表す項目を28項目作成した。項目を作成する際には,(1)内容が重複するものは整理する,(2)一部の個人や集団に特有の表現を除く,(3)日常生活に近い表現を用いる,以上3点について留意した。
本調査:調査参加者は東京都の大学生208名(男性67名,女性141名)であった。質問紙の内容は,日本版BAQの24項目と日常的攻撃行動尺度の28項目に対して「まったくあてはまらない(1点)」から「非常によくあてはまる(5点)」の5件法で回答するものであった。調査実施時は,インフォームドコンセント後に配布した同意書に署名した後に質問紙に回答するよう指示し,回答終了後にはディブリーフィングを行った。
分析:日本版BAQと日常的攻撃行動尺度に対してそれぞれ探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,各因子のChronbachのα係数を算出した。次に,各尺度の因子間で相関分析を行った。

結果 探索的因子分析を行った結果,日本版BAQでは安藤ら(1999)と同様の怒り,敵意,身体的攻撃,言語的攻撃の4因子が得られた。日常的攻撃行動尺度では,28項目のうち最終的に14項目が採択され,直接的対人攻撃,間接的対人攻撃,対物的攻撃の3因子が得られた(Table1参照)。日常的攻撃尺度各因子のα係数は.76-.85の間であった。次に,各尺度の因子間で相関分析を行った結果,対物的攻撃と言語的攻撃との間では負の相関が見られた(r=-.03, n.s.)が,それ以外の因子間では正の相関関係が見られ,ほとんどが有意であった。ただ,間接的対人攻撃と対物的攻撃は日本版BAQの各因子との相関が低く,特にこれら2因子と攻撃性の行動側面を表す言語的攻撃,身体的攻撃との相関において有意であったのは,間接的攻撃と身体的攻撃との間だけであった(r=.24, p<.01)。

考察 まず,探索的因子分析の結果(Table1参照)から,直接的対人攻撃,間接的対人攻撃,対物的攻撃の3因子からなる日常的攻撃行動尺度が作成された。さらに,算出されたα係数が3因子とも許容範囲内であったため,内的整合性は満たされていることが示された。次に,相関分析の結果から,日常的攻撃行動尺度の各因子は,攻撃性を測定する日本版BAQの各因子と正の相関関係が見られ,日常的攻撃行動尺度は攻撃行動を測定していることが示された。さらに,相関が低かった間接的対人攻撃と対物的攻撃は,日常生活で行われているが,日本版BAQでは測定できていないことが示された。本研究では調査参加者が全て大学生であったことなどから,今後は幅広い年代を対象にした研究を行っていく必要があるだろう。

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