発表

2A-008

サービス場面における誠実な謝罪と道具的な謝罪の非言語表出の検討

[責任発表者] 山本 恭子:1
[連名発表者・登壇者] 木村 昌紀:2, 逢坂 美希#:3
1:神戸学院大学, 2:神戸女学院大学, 3:所属なし

問題
 謝罪は,負事象との関連が社会的に疑われるような状況下で個人が試みる言語的説明の1つである(大渕,2015)。この謝罪の有効性は,謝罪時の言語行動のみならず,非言語行動の影響も受ける。例えば,謝罪時に共感的な発言があるとサービスへの満足度が高まること(Roschk & Kaiser, 2013),罪悪感の表情表出(田村,2009)や謝罪のしぐさの顔文字(荒川・鈴木,2004)が怒りを軽減することが報告されている。しかしながら,これらの研究は謝罪を受ける側の評価に注目をしており,謝罪する側が実際にどのような表出行動を行うかを検討した研究は見当たらない。
 謝罪には,自分の責任を認めて心からなされる誠実な謝罪と,罰の回避など何らかの目的のために行われる道具的な謝罪がある(中川・山崎,2005)。誠実な謝罪は経験した感情と表出が一致しているのに対して,道具的謝罪はそれらが不一致であるため,表出行動が異なる可能性がある。飲食店などのサービス場面では,店側の不手際について謝罪をする場合(誠実な謝罪)もあれば,顧客からの理不尽なクレームに対してやむを得ず謝罪をする場合(道具的な謝罪)もあり,両者の比較を行うのに適していると考えられる。また,場面に応じて謝罪を適切に行えるかには,セルフモニタリング(Snyder, 1974)の個人差が関与すると推測される。
 本研究では,カフェ店員として顧客に謝罪するロールプレイを通して,誠実な謝罪と道具的な謝罪に伴う非言語行動の違いを検討することを目的とした。また,その際にセルフモニタリングが影響を及ぼすかについても検討した。
方法
 実験参加者 女子大学生53名(平均年齢19.85±1.03歳)。誠実謝罪条件27名と道具的謝罪条件26名に無作為に割り当てた。
 刺激映像 謝罪のためのシナリオとして,カフェの店員と顧客のやり取りの映像を用意した。内容は,席についた顧客に店員が水を提供する際,水がこぼれて顧客の服にかかってしまい,怒られてしまうというものであった。誠実謝罪条件では店員のミスが原因であり,道具的謝罪条件では顧客が手を滑らせたことが原因となっていた。
 質問紙 1)操作チェック:謝罪原因の所在を問う2項目,7件法。2)主観的感情:罪悪感などの13項目,5件法。3)謝罪表出の自己評定:謝罪の際に意識した行動を測定する23項目,5件法。4)セルフモニタリング尺度(岩淵,1996):25項目,5件法。
 手続き セルフモニタリング尺度への回答を求めた後,刺激映像を視聴してもらった。視聴後,操作チェックと主観的感情の質問紙に回答を求めた。その後,参加者には店員役になり,映像の続きとして顧客に向かって謝罪を行ってもらい,その様子をビデオカメラで撮影した。謝罪のセリフは「大変申し訳ありません。すぐにおしぼりをお持ちいたします。」に統一した。その後,謝罪表出の自己評定に関する質問紙に回答を求めた。最後にネガティブ感情軽減のため,快映像を視聴してもらった。
 表出行動のコーディング 2名のコーダーがsigsaji(荒川・鈴木,2004)を用いて,視線,顔向け,発言の累積時間の計測を行った。分析には2名の平均値を用いた。
結果
 主観的感情について謝罪条件を独立変数とする対応のないt検定を行った。その結果,誠実謝罪条件では罪悪感,申し訳なさの得点が高く,道具的謝罪条件では怒り,反発心の得点が高かった。
 セルフモニタリング尺度を因子分析(最尤法,プロマックス回転)したところ,他者志向性と演技性の2因子が抽出された。謝罪表出の各指標について,謝罪条件,演技性,謝罪条件×演技性の交互作用項を説明変数とする階層的重回帰分析を行った。分析にはHADを使用した(清水,2016)。その結果,視線の累積時間(図1)において,交互作用が有意であった(R2=.16,β=-.36,t(38)=2.42, p<.05)。誠実謝罪条件では,演技性が高いほど視線時間が長くなっていた。また,演技性低群では道具的謝罪の方が誠実謝罪よりも有意に視線時間が長かった。顔向けの累積時間についても,交互作用が有意であり,同様の結果が認められた(図1)。他者志向性については,有意な交互作用は見いだされなかった。
考察
 セルフモニタリングの演技性が高い場合には,視線・顔向け行動に誠実謝罪と道具的謝罪の差が見いだされなかった。これは,演技性が高い場合には誠実謝罪と道具的謝罪で同様の振る舞いができることを示している。一方で,演技性が低い場合には,道具的謝罪と比べて誠実謝罪で視線や顔向けの累積時間が短かった。罪悪感を生じる時には相手の目を避けることが指摘されている(Yu, Duan,& Zhou, 2017)。誠実謝罪では罪悪感が喚起されていたことから,演技性の低い者は感情を反映した回避的な表出行動をしたと考えられる。
 注)本研究は第3著者の神戸女学院大学2016年度卒業論文のデータを再分析・考察したものである。

キーワード
誠実な謝罪/道具的な謝罪/非言語行動


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