発表

1D-021

海洋生物に対する心の知覚

[責任発表者] 武田 美亜:1
1:青山学院女子短期大学

 海洋を含む環境保護を啓発する説得的メッセージには,動物がシンボルやキャラクターなどの素材として用いられることがある。動物を素材として使うことがどの程度効果的かを決める要因の1つには,その動物に対して人々が心を知覚する程度がかかわると考えられる。本研究では特に海洋生物に注目し,どのように心の知覚がなされているかを検討する。
方 法
調査対象者と実施環境
 3つのサンプルを対象とした。(A)「海辺の環境教育フォーラム」参加者18名(男性13,女性5,年代は20〜60代)。選択プログラムの1つとして90分のワークショップ(WS)を行い,その中で調査を実施した。WSは擬人化およびヒト以外の様々なもの(無生物も含む)に対する心の知覚についての簡単な紹介をした後,スクリーンに7種の評定対象の写真を提示しながら調査に回答してもらった。WSに参加しなかったフォーラム参加者には振り返りの場でWSの内容を紹介し,任意でオンライン調査への回答を依頼した。調査の最初の画面で,WS時と同じ7種の評定対象の写真を提示した。(B)埼玉県内の私立大学生45名(男性21,女性23,非回答1)。心理学の授業時間中に任意で回答を依頼した。教室前方のスクリーンに,サンプルAと同じ7種の評定対象の写真を提示しながら調査に回答してもらった。(C)サンプルBと同じく埼玉県内の私立大学生44名(男性23,女性19,非回答2)。実施方法は基本的にサンプルBと同じだが,写真でなくイラスト(擬人化していないもの)を提示した。
調査項目と手続き 評定対象は,イルカ,サメ,マグロ,サンゴ,ウミガメ,あなた(回答者自身=成人),海の7種とした。「あなた」を入れた理由は評定の1つの目安とするためであった。また,実際の生態を厳密に思い出した上での評価でなく直感的なイメージを考えてもらうため,無生物である「海」を含めた。
 Gray et al. (2007)に倣って一対比較をさせたが,Grayらが用いた18項目の心的能力全てについて訊くことは回答者の負担が重すぎるため,心の知覚の2つの次元である経験性と行為性に該当する質問を1つずつ用いた(体や心の痛みを感じる能力,ものを考える能力)。調査では,7種の評定対象を総当たりで対にし(全部で21項目),左右への配置数が偏らないように調整した。それぞれの対について,どちらの方がその能力を持つかを5件法(前者の方が持つ〜どちらも同じくらい〜後者の方が持つ)で尋ねた。調査時には参考として7種の評定対象の写真(サンプルA,B)またはイラスト(サンプルC)を提示した。続いて,Gray et al. (2007)の調査で用いられた心的能力18項目それぞれについて,海洋生物がそれらの心的能力を持つかどうかを想像することがどれくらい難しいかを5件法(1.想像しにくい〜5.想像しやすい)で尋ねた(これについての報告は本稿では割愛する) 。最後に出身地,年代または年齢を尋ねた。サンプルB,Cに対しては自然や海洋生物との接触経験に関する6項目の質問を5件法(1.当てはまらない〜5.当てはまる)で尋ねた。
結果と考察
 欠損値がなかったケース(ケース数はサンプルA,B,Cの順に18,38,39)を対象に行った。サンプルごとに,経験性と行為性それぞれについてScheffe型一対比較法にのっとった分析を行った。尺度値を-2から+2として2次元に配置した(図1,2,3)。どのサンプルでも,行為性が高い評定対象は経験性も高く知覚される傾向があり,「あなた」,イルカの順に高かった。マグロはフォーラム参加者ではウミガメやサメよりも行為性,経験性ともに低い位置に布置されたが,大学生サンプルでは経験性はサメよりも高かった。サンゴは海よりも経験性は高かったが,写真を提示したサンプルA,Bでは行為性は同程度であった。イラストを提示したサンプルCでは,行為性もサンゴが海よりも高かった。
 本研究の結果は評定対象の選択や分析方法による見せかけの結果である可能性もあるため,評定対象や測定方法などを変えて引き続き検討を行う。

キーワード
心の知覚/海洋生物/一対比較


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