発表

1D-019

文化と経済からみた日中大学生の化粧意識と化粧行動

[責任発表者] 孫 暁強:1
[連名発表者・登壇者] 木藤 恒夫:2
1:久留米大学, 2:久留米大学

問 題と目 的
 孫·木藤(2017)は,日中大学生の化粧意識と化粧行動に差異があること,並びに化粧の意識と行動の関係性が異なることを報告した。意識と行動の関係性については,全体として,日本人では両者に正の相関,中国人では負の相関が認められた。この日中間での不一致は,日中両国間の化粧文化の差や経済状況に起因していると推察された。そのため,孫·木藤(2018)は,化粧意識と化粧行動に関わる文化的影響として「化粧をする理由」と「化粧をしない理由」を尋ね,経済的影響として,化粧に費やす金額及び化粧品使用の実態について調査した。その結果,日本人大学生と比べ中国人大学生は,化粧行為に対してネガティブな印象を持ち,化粧頻度は低かったものの,自由に使えるお金に占める化粧品費の割合が高いことを明らかにした。
 本研究では,上述の研究結果を踏まえ,文化·経済的背景が異なる日本と中国の大学生を対象として,新たな項目を追加して再構成した質問紙を用いて化粧意識と化粧行動に及ぼす文化·経済的要因の影響を検討する。また,化粧の意識や行動に及ぼす文化要因と経済要因の影響力の大きさについても言及する。
方 法
調査対象者:日本人大学生(女性88名,男性138名)と中国人大学生(女性225名,男性120)であった。
質問紙:文化(10項目)と経済(13項目)に関する項目を自作し,また,平松·牛田(2003)の化粧意識尺度(10項目3因子),平松·牛田(2007)の化粧場面での化粧程度(一部のみ使用,10項目)や阿部(1992)の化粧の分類(スキンケアとメーキャップのみ使用)を用い,質問紙調査を行った。
手続き:日本人の調査は質問紙を授業中に配布·回収した。中国人の調査は,中国版質問紙をインターネット上の質問紙調査作成ソフトで作成し,PCあるいは携帯端末を利用して回答を求めた。
結 果 と 考 察
 文化,経済,化粧意識,化粧行動に関する国別と性別の差異を見るため,各尺度の下位尺度を抽出した。文化·経済に関しては,多母集団因子分析で求めた結果,文化では「化粧観(例えば『社会人になったら,化粧をすべきだと思う』『日常生活の中で化粧をする必要がある』)」と「負の側面(例えば『化粧をすると悪印象を与える可能性がある』)」の2因子,経済では「化粧品の価格(例えば『化粧品を購入する時の最も大きなポイントは価格だと思う』『化粧品は贅沢品だと思う』)」と「個人の経済力(例えば『毎月のあなたが自由に使えるお金の金額については不満を感じていない』『金銭的なゆとりがあると思う』)」の2因子が抽出された。化粧行動に関しては,化粧をする場面での化粧程度について主成分分析を行った結果,「他人と接する時(例えば『異性の友人と会うとき』『学校へ行く時』」と「一人の時」の2因子,及び「スキンケア」と「メーキャップ」を合わせた4因子に分けられた。化粧意識は先行論文の通りの3因子とした。因子ごとに国と性による2要因分散分析を行ったところ,全ての因子において両要因間に有意差が認められた。
 文化と経済が化粧意識や化粧行動にいかなる影響するかを明らかにするために,国別及び性別で,文化的要因の2因子と経済的要因の4因子(前記の2因子のほか,C(化粧品費)/A(生活費)とC/B(自由に使える金額)を加えた)を独立変数,化粧意識の3因子と化粧行動の4因子を従属変数とした重回帰分析を行った。その結果,化粧行動での日本人の「他人と接する時」を除いて,化粧意識と化粧行動における決定係数はいずれも有意であった。さらに,標準偏回帰係数の有意性から判断すると,化粧意識では文化(化粧観),文化(負の側面),経済(個人の経済力)に一定の影響力があることが認められた。日本と比べ,中国の方が「負の効果」に強く影響されることを示し,それは,日本人大学生より中国人大学生における化粧に関する文化が比較的にネガティブなイメージを持っていると考えられる。化粧行動では,文化(化粧観)と文化(負の側面)に一定の影響力が認められたが,経済の各要因では有力なものは見当たらなかった。それは,調査対象者の局限性があると考えられる。総合的に見ると,経済要因に比べて文化要因(とりわけ化粧観)が化粧の意識や行動に影響を及ぼすことが見出せた。

キーワード
化粧/日中比較/大学生


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