発表

1D-016

幸福感尺度における快楽次元と超越次元
ポーランド・日本・フィリピンの比較

[責任発表者] 一言 英文:1
[連名発表者・登壇者] ジモテルペトロヴシカ マグダレナ#:2, ダツ ジェス#:3
1:福岡大学, 2:ステファン・ヴィシンスキ大学, 3:香港教育大学

 序論
幸福感の文化的含意を踏まえた文化的幸福感の尺度研究は(Hitokoto & Uchida, 2015),これまで主に日米比較を用いて行われてきた。本研究は,一般的な幸福感の尺度との弁別性(Keyes, Shmotkin & Ryff, 2002)に配慮しながら,文化的幸福感の尺度に対する独立的・協調的自己観の説明力について,フィリピン,日本,ポーランドの間で比較した。仮説は,国を超えて,文化的幸福感の尺度に対して協調的自己観の説明力が見られることであった。
 方法
倫理審査を経た上で,ポーランド人学生278名(女性224),日本人学生,(女性258名),フィリピン人学生(女性135)を対象に調査を実施した。文化的幸福感の尺度として「協調的幸福感尺度」(Interdependent Happiness 9項目.83<α<.86; Hitokoto & Uchida, 2015),「ミニマリスト・ウェル・ビーイング尺度」(感謝/Gratitude下位尺度8項目.82<α<.86; 肯定的脱関与/Peaceful disengagement下位尺度8項目.64<α<.73; Kan, Karasawa, & Kitayama, 2009),「関係関与的肯定的感情」(Engaged positive 3項目.58<α<.68; Kitayama et al., 2000),「関係関与的否定的感情」(Engaged negative 3項目.45<α<.66),「関係脱関与的肯定的感情」(Disengaged positive 2項目.37< r <.52, p<.001),「関係脱関与的否定的感情」(Disengaged negative 2項目.19< r <.57, p<.001),「低活性肯定的感情(Low arousal positive 3項目.57 <α<.60)」,「低活性否定的感情(Low arousal negative 2項目.26< r <.43, p<.001)」「高活性肯定的感情(High arousal positive 3項目.59 <α<.77)」,「高活性否定的感情(High arousal negative 2項目.22< r <.37, p<.001)」を用いた(Lee et al., 2000; Tsai, 2007)。各種感情は,肯定的なものから否定的なものを差し引いた得点(affect balance)を算出して用いた。一般的な幸福感の尺度として,人生満足感尺度(Satisfaction with Life 5項目.77 <α<.86; Diener et al., 1985),活性状態尺度(Flourishing 8項目.82 <α<.94: Diener et al., 2009),「一般的肯定的感情」(General positive 3項目.59<α<.81)と「一般的否的感情」(General negative 3項目.69 <α<.83)を用いた。また,文化的自己観尺度(独立的自己観下位尺度10項目.76 <α< .84; 協調的自己観下位尺度10項目.65 <α< .83; Park & Kitayama, 2012)を用いた。独立的自己観下位尺度はポーランド,フィリピン,日本の順で高く(F(2, 1137)=66.94, p<.001), 協調的自己観下位尺度はフィリピンと日本の2国がポーランドより高い(F(2, 1136)=14.49, p<.001) 結果となり,概ね国操作を支持していた。
 結果
文化的幸福感と一般的な幸福感の両下位尺度得点を算出し,国ごとに探索的因子分析を行った。3ヶ国に共通し,感情の尺度得点が負荷する「快楽的ウェル・ビーイング(Hedonic well-being; HWB)」と,協調的幸福感やミニマリスト・ウェル・ビーイング,活性状態などが負荷する「超越的ウェル・ビーイング(Transcendental well-being; TWB)」との2次元を抽出した(表参照)。これら2次元の因子得点を被説明変数,独立的(Independent self)・協調的(Interdependent self)自己観を説明変数にパス解析を行った結果,3ヶ国でHWBは独立的自己観によって説明され(.30<β<.44, p<.001),TWBは協調的自己観(.20<β<.44, p<.001)および独立的両自己観(.40<β<.51, p<.001)によって説明されることが明らかになった(図参照)。また,HWBに対する独立的自己観の説明力はポーランドで日本より強く(p<.05),TWBに対する協調的自己観の説明力はフィリピンで他国より強い(p<.05)ことも明らかになった。
 論議
文化的な含意を踏まえた幸福感の尺度は文化的自己観によって説明されることが示された。協調的自己観のみならず独立的自己観もTWBを説明したことは,幸福感を測定する尺度一般に存在する,自己の肯定性を参照する要因によって見られたものと考える。また,文化的な含意を踏まえた幸福感の尺度が活性状態と同じ因子に含まれたことは,文化の中で成長する強みとして幸福感の文化的含意を捉えられる可能性を示唆している。
 表(上)および図(下)

キーワード
幸福感/文化/自己


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