発表

1D-014

フォロワーシップの醸成が消防組織にもたらす効果

[責任発表者] 青木 千恵:1
[連名発表者・登壇者] 清水 祐二#:1, 玄海 嗣生#:1, 松井 豊:2
1:東京消防庁, 2:筑波大学

目的
 消防組織におけるリーダーとフォロワーの関係性や相互作用の実態を明らかにするとともに,フォロワーに焦点をあて,フォロワーシップが業務にどのような影響を与えているかを分析することを目的とした。
 フォロワーシップの定義に定まったものは存在しないが,西之坊・古田(2013)は,「組織のゴールをリーダーと共有し,フォロワーがそのゴールに向かって行動することで直接的または間接的にリーダーや組織に対して発揮される影響力」と操作的に定義している。また,フォロワーシップは,上司の指導力や判断力を部下が補完し,組織成果を最大化することを狙いとしており,「独自の考え方(上司の指示が正しいのか自分なりに考え,必要があればあえて上司に提言したりする力)」と「積極的関与(上司の指示に従い,目標の達成に邁進すること)」で構成される(ケリー,1992)。本論文では,「独自の考え方」を「提案力」,「積極的関与」を「貢献力」と捉えた。「提案力」と「貢献力」の程度の組み合わせにより,「模範的フォロワー」,「順応型フォロワー」,「消極的フォロワー」,「孤立型フォロワー」,「実務型フォロワー」の5つのタイプに分けられる(表)。
方法
 東京消防庁管内の6消防署の消防司令(課長補佐又は係長)以下の階級の消防職員(再任用職員及び同等職主事を含む)1,131名に対して無記名式の質問紙調査を実施した。有効回答票数は920票であった(対象者数の81.3%)。分析対象項目は,フォロワーのタイプ(消防版フォロワーシップ尺度(独自作成)),職場の人間関係の良さ(組織風土尺度(キャンベルら,1970)),モチベーション(モチベーション尺度(ロダールとケナジー,1965)),上司のタイプ(PM指導行動測定尺度(三隅,1984)),精神健康度(K6(Kassler,2002)),パワハラ許容度(パワハラ許容尺度(独自作成)),属性とした。
結果
 ケリー (1992)が提唱した分類方法でフォロワーのタイプを分類したところ,5つのタイプの人数に偏りがでたため,提案力及び貢献力の平均点(提案力34,貢献力38)を中心とし,その中心点からそれぞれの標準偏差×0.5(提案力3,貢献力4)離れた4点を基準としたマトリックス図(図1)を作成し,分類した。「模範的フォロワー」が4割程度(39.5%,n=363人)と最も多かった。
 年齢や階級が低い若手においては「消極的フォロワー」の割合が高く,年齢や階級が上がるにつれ「模範的フォロワー」の割合が高くなった。この結果は,年齢や階級が上がると「模範的フォロワー」になる可能性が高いが,指導や環境によっては他のタイプのフォロワーになったり,「消極的フォロワー」のままの可能性もあることを意味する。
 各分析対象項目を重回帰分析しパス図で表した(図2)。職場の人間関係の良さから提案力及び貢献力へ,集団維持機能(M)から提案力及び貢献力へ,課題達成機能(P)から提案力へ有意なパスがみられた。提案力からパワハラ許容度へ,貢献力からモチベーションの高さへ有意なパスがみられた。つまり,提案力は,職場の人間関係が良く,上司に人間関係を円滑に保つ力(集団維持機能(M))があり,目標を達成できる力(課題達成機能(P))が無いと向上しやすいといえる。また,貢献力は職場の人間関係が良く,上司に人間関係を円滑に保つ力(集団維持機能(M))があれば向上しやすいといえる。したがって,「模範的フォロワー」を構成する提案力及び貢献力の向上は,職場の人間関係や上司(リーダーシップ)といった外部要素が大きな影響を与えていると考えられる。また,提案力や貢献力が向上すれば,「模範的フォロワー」になるだけでなく,モチベーションが向上したりパワハラを許容しなくなると考えられる。

キーワード
フォロワーシップ/消防組織


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