発表

1D-012

NIMBY問題における負担の分散が社会的受容に与える影響
除去土壌再生利用事業を用いた仮想シナリオ実験

[責任発表者] 横山 実紀:1
[連名発表者・登壇者] 大沼 進:1, 近藤 由基#:1
1:北海道大学

目 的
 本研究は,福島第一原子力発電所の事故によって発生した除去土壌のうち,低線量のものに限り,堤防や道路の基礎に再利用するという除去土壌の再生利用計画の事例を用いて,NIMBY(Not In My Back Yard)問題における合意形成促進手法を検討することを狙いとする。
 福島第一原子力発電所の事故によって生じた除去土壌の量は膨大であり,そのすべてを最終処分として管理することはコストや用地の面から現実的ではない。そこで,低線量のもの(8000Bq/kg以下 )に限り,堤防や道路などの基礎に再利用する計画が持ち上がっている(環境省,2016)。社会全体の視点から功利主義的に考えると,どこか一か所で集約することが合理的と考えられる。しかし,受け入れ地域に負担が偏るという分配的な不公正が生じ,受け入れ地域から強い反発が生まれることが想像に容易い。だが,どこにも決まらないと事業が前に進まず,貴重な土壌を再利用できず保管の状態が続く点で社会全体の損失につながる。以上から,この計画は公益としては必要だが自分の家の近くは拒否するというNIMBY(Not In My Back Yard)問題としての特徴を持つと考えられる。
 本研究では,この問題解決の糸口として,除去土壌再生利用を一か所ではなく複数自治体で行ってはどうだろうかと提案する。除去土壌の再生資材は,原理的には全国各地での利用が可能である。負担の一部への偏りに対して,複数か所が負担するとすることで,なぜ自分の地域だけが引き受けなければならないのかという不公平感が緩和されると考えられる。さらに,どこか一か所だけとするよりもどこでも利用可能なものだというフレームを強調することで,危険なものであるというスティグマなどを払拭できる可能性がある。以上を通じて,他の自治体で利用するならば自分の地域で利用してもよいという消極的な受容として,除去土壌の再生利用を受容する可能性がある。本研究では,仮想シナリオ実験を用い,回答者の住む地域の一か所だけで除去土壌を再利用するという条件と,回答者の住む地域を含む複数か所で除去土壌を再利用するという条件を設けて,複数か所で利用する条件で受容及びその関連要因が高まるかを検討する。関連要因は,忌避施設受容には分配的公正と手続き的公正の両方が重要だがとくに手続き的公正の影響が重要とするKrütli et al., (2012),受容には信頼やリスク認知だけではなくスティグマも関連するという大友ら(2014),及び,リスク・ベネフィット評価よりも他の価値から護られているという保護価値が重要とする大沼ら(2015)などを参考に選定した。

方 法
 Web調査による割り当て法(全国地域ブロック別,性別,年齢構成別)による抽出をし,仮想シナリオ実験を行った。実験参加者は,除去土壌の再生利用計画についての情報を読んだ後,参加者の住む一か所のみで利用するというシナリオを読む単独条件か,参加者の住む地域を含む複数か所で利用するという多数自治体条件かどちらかのシナリオを読んだ後に,質問項目に回答した。参加者は,各条件1000名の計2000名であった。質問項目は,表1に示す概念を各2項目ずつ程度で測定し(すべて5点尺度),信頼性係数を確認して尺度を構成した。

結 果 と 考 察
 各尺度について条件間の平均値を比較したところ,多数自治体条件のほうが単独条件よりも受容,手続き的公正,国への信頼が高く,スティグマや主観的規範,保護価値,不公平感,リスク認知は低く評価されていた(表1)。
 以上から,一か所利用と多数自治体利用では,多数自治体利用条件の方が不公平感を感じておらず,手続き的公正や受容を一か所利用条件よりもポジティブに評価していることが明らかとなった。一か所だけではなく複数自治体とすることで,不公平感だけでなく,リスク認知やスティグマを軽減し,主体への信頼も高まり,保護価値も緩和される点が興味深い発見である。これらの総体として受容に繋がると考えられる。本研究は,NIMBY的特徴を持つ除去土壌再生利用計画において,一か所だけではなく複数か所で同時に行うことが,事業を前に進める可能性を示唆した。

謝辞
本研究は,日本心理学会2018年度「災害からの復興のための実践活動及び研究」助成を受けた。

引用文献
環境省(2016)再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方.
Krütli P. et al. (2012). Soc Just Res, 25, 79-101.
大沼ら (2015). リスク研究学会誌, 25, 121-131.
大友ら (2014). リスク研究学会誌, 24, 49-59.

キーワード
NIMBY問題/社会的受容/分配的・手続き的公正


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