発表

1D-011

大学生における音楽関連行動と心理的健康の関連(2)
―食事関連行動との比較を含めて―

[責任発表者] 小林 彩子:1
[連名発表者・登壇者] 齋田 百恵佳#:1, 小松 周平#:1, 伊藤 栞:1, 橋本 剛:1
1:静岡大学

 音楽関連行動と心理的健康の関連を検討する上で,音楽関連行動のユニークネスを明確にするために,音楽関連行動とそれ以外の行動を比較することも有用であろう。そこで本研究では,音楽以外の行動領域として食事関連行動を想定して,単独-共有という人数次元と,音楽-非音楽という領域次元による2次元4種類の行動の相互関連,および心理的健康との関連を検討することで,音楽関連行動の独自性の明確化を試みる。
方法
 調査概要は伊藤他 (2019) と同じである。分析では,伊藤他 (2019) で用いた尺度に加えて,以下の尺度を使用した。
 食事関連行動:音楽関連行動の尺度項目の音楽に該当する文言を食事に関する文言に置き換えた24項目を作成し,各項目の実行頻度を6件法で尋ねた。本研究では研究目的を踏まえて,単独/共有の食事関連行動に該当する共食行動(「身近な人と一緒に飲食店で食事をする」など2項目)と「個食行動」(「一人で飲食店で食事をする」など2項目)の2下位尺度のみを用いることとした。
結果
 まず尺度間相関を算出したところ,音楽直接共有は音楽単独接触 (r = .54, p < .001) および共食行動 (r = .36, p < .001) と正の関連を示したが,個食行動とは関連を示さなかった (r = -.01) 。音楽単独接触は,共食行動 (r = .20, p = .009) および個食行動 (r = .21, p = .006) とも正の関連を示した。共食行動と個食行動は有意傾向の正の相関を示した (r = .14, p = .06) 。
 次にそれらの行動と心理的健康の尺度間相関を算出した。その結果,孤独感に対しては,音楽直接共有 (r = -.30, p < .001) と共食行動 (r = -.35, p < .001) が有意な負の関連,個食行動が有意な正の関連を示した (r = .17, p = .03) 。音楽単独接触は有意傾向の負の関連を示した (r = -.13, p = .08) 。主観的幸福感に対しては,共食行動が有意傾向の正の関連を示したが (r = .14, p = .06),その他は有意な関連を示さなかった (音楽直接共有 r = .09; 音楽単独接触 r = .02; 個食行動 r = -.07) 。なお,孤独感と音楽直接共有の相関は男女とも有意であったが(男性 r = -.26, p = .02; 女性 r = -.35, p = .001),孤独感と音楽単独接触は男性のみで有意傾向であった(男性 r = -.18, p = .09; 女性 r = -.07, p = .51)。
 さらに,心理的健康指標を基準変数として,共食行動と個食行動を第1ステップ,音楽直接共有と音楽単独接触を第2ステップで投入した階層的重回帰分析を実施したところ,第2ステップのR2増分は有意傾向であり,共食行動 (β = -.31, p < .001)と個食行動 (β = .22, p = .003) の効果に加えて,音楽直接共有 (β = -.16, p = .07) が有意傾向の負の寄与を示した。したがって,孤独感に対する相対的影響は音楽関連行動より食事関連行動の方が大きいが,食事関連行動の効果を差し引いても,音楽直接共有が孤独感と部分的に関連することが示された。一方,幸福感を基準変数とした同様の分析ではモデルが有意とならず,幸福感に対する音楽関連行動の効果は認められなかった。
 最後に,音楽直接共有と音楽単独接触が孤独感に及ぼす交互作用効果を検討するために,孤独感を基準変数として,中心化した音楽直接共有と音楽単独接触を第1ステップ,それらの交互作用項を第2ステップで投入した階層的重回帰分析を実施した。その結果 (Figure 1) ,音楽直接共有の主効果 (b = -3.19, p < .001) に加えて,交互作用 (b = 1.25, p = .09) も有意傾向であり,全般的に音楽直接共有が多いほど孤独感が低く,かつ音楽単独接触が少ない方が,その傾向が顕著であった。このことは,音楽直接共有は多いが音楽単独接触は少ない場合に最も孤独感が低いことを示している。
考察
 音楽直接共有は男女とも孤独感と負の関連を示したが,音楽単独接触は男性においてのみ孤独感と弱い負の関連を示した。前者は,音楽による心理的健康促進効果は,対人関係を介したサポートとしての効果によるという解釈に合致するものである。一方で後者は,男性が女性よりもコーピングとして音楽を用いているのではないかという見解と整合的である。また,音楽関連行動が主観的幸福感と関連しなかったことについては,今回用いた主観的幸福感の指標は有能感や達成感などの理念的要素が強く,音楽関連行動の影響を受けにくいものであった可能性が考えられよう。
 音楽直接共有と音楽単独接触の交互作用効果については,音楽直接共有は多いが音楽単独接触は少ないというパターンがもっとも孤独感が低く,一方で音楽直接共有と音楽単独接触の両方が多いことは,むしろ孤独感を高めるかもしれないという可能性が示唆された。ただし,孤独な状況に直面した際に単独音楽聴取が促進されるという逆方向因果をはじめ,さまざまな因果関係の可能性を考慮すべきであろう。

キーワード
音楽/音楽関連行動/心理的健康


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