発表

1D-009

ポジティブなメタステレオタイプの内容が援助判断に及ぼす影響
ー水害支援金額と援助隊派遣人数を用いた検討ー

[責任発表者] 小森 めぐみ:1
[連名発表者・登壇者] 田戸岡 好香:2
1:淑徳大学, 2:高崎経済大学

 外集団に対する不安や接触回避に影響する要因としてメタステレオタイプ(自集団が外集団からどう見られていると思うかに関する信念)があげられる。これまでの研究ではネガティブなメタステレオタイプを認知するとそれを反証するために援助行動が増加することや,この傾向は他国との相互依存性を高く認知する者に限って見られることが示されている(Hopkins et al., 2007; 小林・及川,2015)。しかし援助場面においてはポジティブなメタステレオタイプも行動に影響すると考えられる。そこで本研究では,ポジティブなメタステレオタイプが相手集団への援助に及ぼす影響を検討した。
 ステレオタイプの内容は,能力次元と人柄次元に分かれることが知られている(Fiske & Cuddy, 2002)。特に,能力次元のポジティブなメタステレオタイプ(i.e. 相手は自分達を優秀だと思っているだろうという認知)は,相対的に外集団の能力を低く,人柄を高く認知させ,憐みを生起し,援助行動を促すと考えられる。そこで本研究ではポジティブなメタステレオタイプの内容を操作し,国レベルの援助行動に対する評価への影響を検討した。

方 法
【実験参加者】大学生98名(男性34,女性64)
【実験計画】メタステレオタイプ3(能力/人柄/統制)の1要因3水準参加者間計画。
【手続き】実験は「東南アジアに対する意識調査」の一部として授業時間の一部を用いて実施した。まず,本実験の題材であるタイ人の文化や生活習慣について説明し,架空のランキングで独立変数を操作した。能力群と人柄群ではタイ人がもつ日本人イメージの調査結果を示した。能力群では優れた技術をもっている等,人柄群では温かい心をもっている等を呈示した。統制群ではタイみやげのランキングを示した。参加者は2分間このページを黙読し,その後メタステレオタイプを保持する程度を内容別に回答した。
 続けて従属測度を測定した。まずタイが深刻な洪水被害を受け,諸外国からの支援が必要という400字程度の架空の記事を呈示した。次に日本政府がタイに水害支援として復興支援金の支払いと緊急援助隊の派遣を決定したとし,どの程度の援助をすべきかを金額と人数,及び程度(1.まったく必要ない~9.できる限り)で評価させた。回答のばらつきを抑えるための手がかり情報として,東日本大震災時の最大支援金額(2000億円)と援助隊派遣最大人数(8000人)を提示した。
 その後,タイの水害や支援に対する考えを尋ねる質問6項目,相互依存性2項目(小林・及川,2015),日本とタイの関係性認知2項目をいずれも7件法(1.まったくあてはまらない~7.非常にあてはまる)で尋ねた。

 結 果
【操作チェック】メタステレオタイプ測定項目の分析を行った。その結果,「タイ人は日本人を有能だと思っている」では能力群の評定(M=5.52, SD=0.91)が人柄群(M=4.56, SD=1.08)および統制群(M=4.45, SD=1.00)を有意に上回った(F(2, 95)=11.29, p<.01)。「人柄がよいと思っている」では人柄群(M=5.91, SD=0.89)の評定が能力群(M=5.21, SD=1.17)および統制群(M=4.88, SD=1.02)を有意に上回った(F(2, 95)=8.31, p<.01)。よって操作は成功した。
【仮説の検討】具体的な援助金額(億円)の判断に関しては,能力群(M=331.65, SD=487.94)人柄群(M=218.97, SD=289.23)統制群(M=383.77, SD=668.66)の間に有意な差は見られなかった。同様に,人数の判断に関しても能力群(M=5465.62, SD=3445.30)人柄群(M=4361.61, SD=3269.37)統制群(M=4427.27, SD=3047.47)の間に有意な差は見られなかった。次に,援助の程度判断に対する分析を行った。程度判断を被説明変数,条件,相互依存性評価,条件×相互依存性の交互作用項を説明変数とする強制投入の重回帰分析を実施したところ,金額において相互依存性の主効果(β=-.56)および相互依存性×人柄ダミー変数の交互作用(β=.41)が有意だった。相互依存性低者の方が援助の必要性を高く考えていたが,人柄群の参加者ではそうした結果が見られなかった(Fig 1)。

考 察
 人柄条件において一部の参加者に援助の必要性が低く評価されたことは,ポジティブなメタステレオタイプが必ずしも援助要請において効果的ではない可能性を示唆するものの,全体として従属測度の分散は大きく,仮説に一貫する結果は得られなかった。ランキング前に提示したタイの説明文での日本への言及が,全条件の参加者にポジティブなメタステレオタイプを抱かせてしまった可能性も考えられる。感情項目を含めるなど,媒介プロセスを明らかにしていく必要もあるだろう。
※本研究は科学研究費補助金(17K13910)の助成を受けて行われた。

キーワード
メタステレオタイプ/ステレオタイプ内容モデル/援助行動


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