発表

1C-018

共同性・作動性の2次元を用いたレズビアン・ゲイ男性ステレオタイプの検討

[責任発表者] 堀川 佑惟:1
[連名発表者・登壇者] 岡 隆:2
1:日本大学, 2:日本大学

目 的
さまざまな偏見の研究において,社会的マイノリティが持たれているポジティブなステレオタイプを表す性格特性語を利用し,ネガティブな偏見を低減する試みがなされている。本研究では,異性愛者が持つレズビアン・ゲイ男性ステレオタイプについて検討する。
一般に,レズビアンやゲイ男性に対する異性愛者の非難は,伝統的な性役割からの逸脱を理由として行われやすい。Fiske, Cuddy, Glick, & Xu(2002)によると,伝統的男性ステレオタイプは高作動性・低共同性,伝統的女性ステレオタイプは高共同性・低作動性とそれぞれ表せる。以上を参考に本研究では,異性愛者にとって,伝統的男性・女性ステレオタイプのいずれがレズビアンやゲイ男性に当てはまりが良いか検討する。それらのいずれも当てはまりが悪いと考えられる場合には,個々の性格特性語レベルで当てはまりの良さを検討する。
方 法
 質問紙調査参加者114名のうち,分析対象者は異性愛者97名(男性67名,女性30名。Mage=19.06,SD=1.13)であった。
 質問紙では,沼崎・小野・高林・石井(2006)の性格特性語64語を連体修飾語の形に統一したものについて,レズビアン・ゲイ男性にそれぞれどの程度あてはまるかを,1(全く当てはまらない)から7(非常にあてはまる)の7段階で尋ねた。この語群は,2(伝統的男性対伝統的女性)×2(共同性対作動性)×2(ポジティブ対ネガティブ)の8つの下位分類を持つ。レズビアンとゲイ男性のどちらについて先に問うかは,カウンターバランスが取られた。その後,年齢,出生時の身体性,性自認,性的指向,レズビアン・ゲイ男性について「会って話した経験の有無」「実在の人物を知っているか否か」「空想上の人物を知っているか否か」を尋ねた。
結 果
 64の性格特性語それぞれについて,男性参加者からレズビアンへの評定,男性参加者からゲイ男性への評定,女性参加者からレズビアンへの評定,女性参加者からゲイ男性への評定(それぞれ以下,M→L,M→G ,F→L,F→Gとする)の4つそれぞれの平均点を算出した。以降,性格特性語64語を,この4つの変数を持つ64名のデータとみなして扱う。
 レズビアンとゲイ男性が優位に持たれているステレオタイプを表す性格特性語群を確認するため,上記4変数を従属変数として,2(ジェンダー:伝統的男性対伝統的女性)×2(共同作動:共同性対作動性)×2(感情価:ポジティブ対ネガティブ)の参加者間分散分析を実施した。M→Lについては,主効果も交互作用もみられなかった(Fs<1, ps<.32)。M→Gについては,3次交互作用が有意であった(F(1, 56)=8.45, p=.005, ηp2=.13)。全パターンの単純主効果検定を実施した結果,伝統的女性・共同性・ポジティブの語群(「優しい」「家庭的な」「親しみやすい」など; M=4.24, SD=1.02)および伝統的男性・作動性・ポジティブの語群(「自信のある」「勇敢な」「決断力のある」など; M=4.00, SD=1.00)の得点が他の語群の得点よりも有意に高いことが示された。F→LとF→Gについては,双方とも感情価の主効果が有意であり,(F→LではF(1, 56)=81.40, p<.001, ηp2=.59; F→GではF(1, 56)=60.89, p<.001, ηp2=.52)。また,双方ともジェンダーと共同作動の2次交互作用(F→LではF(1, 56)=12.42, p=.001, ηp2=.18; F→GではF(1, 56)=18.34, p<.001, ηp2=.25)が有意であったため,両評定について全パターンの単純主効果検定を実施した。それらの結果より,伝統的女性・共同性・ポジティブの語群の得点が他の語群の得点よりも,F→L(M=4.35, SD=1.29),F→G(M=4.50, SD=1.20)ともに有意に高いことが示された。
 分散分析で主効果も交互作用もみられなかったM→Lの64語について,優位なステレオタイプを示す性格特性語を検出するため,クラスター分析(平方ユークリッド距離,ウォード法)によって4クラスターに分類した。4クラスターを説明変数,評定平均点を目的変数とした一元配置分散分析を行った結果,主効果が有意であった(F(3, 60)=168.06, p<.001)。多重比較の結果,1つのクラスター(M=4.26, SD=0.23)が他のクラスターよりも有意に得点が高いことが示された(ps<.001)。このクラスターは,「うるさい」「口出しする」「意志の弱い」「弱弱しい」「気立ての良い」「協力的な」「親しみやすい」「おしとやかな」「自分勝手な」「とっつきにくい」「ごう慢な」「独立した」「意志の強い」「決断力のある」「自信のある」の15語からなり,8語群の語を1語から3語ずつ有した。M→G,F→L,F→Gについても同様にクラスター分析を行い,全て4クラスターに分類した。4評定全てで最も得点が高いクラスターに分類された語は,「気立ての良い」「協力的な」「親しみやすい」「意志の強い」の4語であった。
考 察
 異性愛者にとって,レズビアンとゲイ男性には,伝統的女性ステレオタイプが比較的当てはまりが良いことが示された。ただし例外として,男性異性愛者が持つレズビアンステレオタイプについては,本研究で扱った3次元でうまく表すことができなかった。今後の研究において,女性異性愛者が持つレズビアンステレオタイプとは区別して扱う必要があろう。
引用文献
Fiske, S. T., Cuddy, A. J. C., Glick, P., & Xu, J. (2002). Journal of Personality and Social Psychology, 82, 878-902.
沼崎 誠・小野 滋・高林 久美子・石井 国雄(2006). 首都大学東京 東京都立大学 人文学報, 369, 21-52.
本研究はJSPS科研費JP16H03734の助成を受けた。

キーワード
レズビアン/ゲイ男性/ステレオタイプ


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