発表

1C-012

援助要請態度と援助者の探索過程3
気質の援助要請態度への影響

[責任発表者] 太田 仁:1
1:奈良大学

問 題
援助要請の実行に関わる個人の認知的枠組みについて太田(2007)は,援助要請態度をAllport,G.W.(1935)に基づき援助内容を特定せず広義に「援助授受の経験を通して体制化された精神的,神経的な援助要請の準備状態であり,他者への援助要請について指示的ないし力動的な影響を及ぼすもの」と定義している。水野・石隈(1999)は,被援助志向性を心理社会的援助を念頭に「個人が,情緒,行動的問題および現実生活における中心的な問題で,カウンセリングやメンタルヘルスサービスの専門家,教師などの職業的な援助者および友人・家族などのインフォーマルな援助者に援助を求めるかどうかについての認知的枠組み」としている。双方ともに個人の特性と環境との相互作用により形成される点で共通する。これらの認知的傾向を左右する要因に気質が挙げられる。気質は,(1)比較的安定的で,パーソナリティ気質の根幹を成す(2)幼少期の早い段階から顕れる(3)動物研究において,対応関係を持つ行動気質がある(4)自律神経系や内分泌系といった生理学的反応もしくは大脳生理学的,遺伝的な諸要因と関連している(5)人生経験などの環境刺激と遺伝子型の相互作用によって変化するとその定義が要約される(高橋ら,2007)。以上の定義から気質は態度や志向性形成の先行要因と位置付けることができよう。気質の代表的な理論にはEysenck (1967)の「生物学的パーソナリティ理論」やGray (1987)の「強化感受性理論」があり,援助要請への接近・回避を説明する理論としては, Behavioral Inhibition System (行動抑制系;以下 BIS)と Behavioral Activation System(行動賦活系;以下 BAS)の 2つの動機づけによって制御されるとするGrayの理論が適合する。以上から, 「強化感受性理論」により気質の援助要請態度への影響過程を検討する。
方 法
対 象 女子大学に所属する学生(全員女性)1年生20名,2年生35名,3年生8名,4年生7名 の70名過半数の回答に不備のあった8名を除いた62 名を分析対象とした。
質問紙 気質の測定 BIS/BAS尺度(高橋ら,2007)=BIS因子から5項目,BAS駆動3項目BAS3項目,報酬刺激探求3項目。援助要請態度の測定 被援助志向性尺度(田村ら,2001)=第1因子「援助の欲求」(=肯定的態度)を肯定的援助要請態度の指標とし,第2因子「援助関係に対する抵抗感」(=否定的態度)を否定的援助要請態度の指標とするため各因子から3項目。以上の各項目について5件法により回答を求めた。 
結 果・考察
上記尺度の各因子を合計し,BIS,BAS駆動,BAS報酬,BAS刺激探求,肯定的態度と否定的態度の平均値,標準偏差を算出した(Table1参照)。 なお,各変数の内定整合性を示すα係数は.7を超えていた。平均値は各変数とも中央値より高い平均値示した。特にBISは,17/20と高い値を示した。次に,BISとBASを構成する「駆動」「報酬」「刺激」の3変数を独立変数とし,援助要請態度を従属変数として重回帰分析を行った(Fig1参照)。BISから肯定的態度と否定的態度の双方へ正の有意な標準回帰係数が確認された。
BISは,潜在的な脅威刺激やその予期に際して注意を喚起し,自らの行動を抑制するように作用する(Gray,1982)。援助要請の肯定・否定双方の態度への有意な影響は,援助要請に対する懐疑的な気質を反映しており,潜在的援助要請者のアンビバレントな態度を示しているといえよう。BASについては,「報酬」から「肯定的態度」へ有意な正の標準回帰係数が確認され,「駆動」からは,援助欲求へ負の標準回帰係数が確認された。「刺激」から「肯定的態度」への有意な標準回帰係数は,確認されなかった。BASは,報酬や罰の不在により活性化される動機づけシステムで, 目標の達成に向けて行動を解発する機能を担う(Gray, 1994)。下位尺度の「報酬」は,報酬の存在や予期に対するポジティブな反応を表す気質であり,援助要請による肯定的な予期の認知を促進していると考えられる。望まれる目標への持続的な追求を表す気質である「駆動」から肯定的態度への負の影響については,援助要請を追及推進の阻害要因として認知する過程が想定されよう。

キーワード
気質/態度/志向性


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