発表

1C-008

背景色が社会的問題行為の道徳性評価に及ぼす影響

[責任発表者] 浅野 龍平:1
[連名発表者・登壇者] 浦 光博:1
1:追手門学院大学

背景
 道徳は善悪に関する判断の基礎であり,個人の経験や価値観が反映される。一方で,ある対象についての道徳性判断は外的要因に由来する感覚情報によって影響を受けることが明らかになっている。具体的には,嗅覚や味覚を通じて経験された生理的嫌悪感が道徳性評価に影響し,その影響は個人特性によって調整されることが示されている (Schnall et al., 2008; Eskine et al., 2011)。しかしながらこれまでのところ,感覚が道徳性評価に及ぼす影響の検証は嫌悪情動を生じる感覚に限定されており,非情動的な感覚刺激の影響については検証されていない。
 非情動的な感覚としては色の感覚があげられる。色の感覚に関して,黒い服を着ることで白い服を着るよりもスポーツにおける攻撃的な選択が促進されることが示されている(Frank & Gilovoch, 1998) が,色の影響が判断の道徳性に及ぼす影響については対象とされた状況が限定的であり,また個人特性との関連についての検証は行われていない。そのため本研究では,一般的に問題となる広範囲の社会的問題行為を用いて,それらに対する道徳性判断における白または黒の色の影響と個人特性の関連について検証することを目的とした。

方法
 ウェブ調査を通じてデータを収集した。社会的問題行為の項目として2つの先行研究 (石田ら, 2000; Zarkadi et al., 2011) で使用された計14項目を使用した。回答はPCを用いて行われ,社会的問題行為が個別に白または黒の背景上のウィンドウ内に提示された (図1)。回答者はPC画面上に提示される各項目についての道徳性を-5 (とても非道徳的) から+5 (とても道徳的) から選んで評定を行った。道徳性判断についての回答後,道徳的人生観が測定された。

結果
 道徳性判断の因子構造を決定するため,社会的問題行為への道徳性判断について探索的因子分析 (最尤法,プロマックス回転) を行った。スクリープロットより因子数は3因子とした。各因子を構成する項目の性質から,
第1因子をルール違反因子,第2因子を他者への配慮不足因子,第3因子を公序良俗違反因子と名付けた。
 各因子について道徳性を目的変数,背景と道徳的人生観を説明変数とした階層的重回帰分析を行った。因子ごとに道徳性判断における背景色と道徳的人生観の強さの交互作用を検討した。まず道徳的人生観と背景を説明変数とした重回帰分析を行った結果,道徳的人生観の主効果がルール違反因子 (R2 = .11, b = -0.96, SE = 0.14, β = -.33, t(397) = -7.00, p < .01),他者への配慮不足因子 (R2 = .03, b = -0.47, SE = 0.15, β = -.16, t(397) = -3.26, p < .01),および公序良俗因子 (R2 = .12, b = -1.00, SE = 0.14, β = -.34, t(397) = -7.25, p < .01) において有意であり,すべての因子で道徳的人生観高群では道徳的人生観低群よりも社会的問題行為を非道徳的に評価していた。また他者への配慮不足因子において,道徳的人生観と背景の交互作用が有意であった (R2 = .04, b = -0.72, SE = 0.29, β = -.12, t(396) = -2.48, p < .05)。このため単純傾斜の検定を行ったところ,道徳的人生観低群では白背景 (M = 3.39) よりも黒背景において問題行為2への道徳性を高く評価していた (M = 3.84, b = 0.44 SE =0.16, t(396) = 2.3, p < .05) (図2) 。

考察・結論
他者への配慮不足因子において道徳的人生観低群と背景色の交互作用が見られたことから,背景色が道徳性判断に与える影響は道徳的態度によって調整されることが示された。この影響は他者への配慮に関連する行為に対する判断においてのみ見られたことから,道徳的人生観低群では黒背景において白背景よりも他者の利益や安全への配慮が低下したが,道徳的人生観高群ではその低下が抑制されたことが示唆された。
 本研究から,色の感覚が道徳性評価に影響を及ぼし,それが道徳的態度の強さによって調整されることが示された。

キーワード
道徳性評価/道徳的人生観/背景色


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