発表

1C-007

PDゲームにおける視線分析
攻撃性と意思決定前後の関係性の視線に及ぼす影響

[責任発表者] 安念 保昌:1
1:愛知みずほ大学

序と目的
社会的状況における協調行動の意思決定を模索するモデルとして囚人のジレンマゲーム(PD)において,PD選択の影響を与えるのは,選択前の情報と参加者の行動特性である。その認知過程を見るため様々な視線分析が行われてきた(Hristova & Grinberg,2005; 2008; 2010; Tanida & Yamagishi, 2010; 栗原・小林, 2015)が,性格特性との関わりで,意思決定に関与する視線分析はなされてこなかった。今回,参加者の行動特性については,攻撃性を取り上げる。意思決定前の自分と相手の選択情報が,現時点での意思決定との関係で,視線行動がどのように影響を受けるのか,さらに,現時点での自分と相手の選択結果が,次の自分の意思決定への意図との関係で,視線行動がどのような影響を受けるのかを,攻撃性との関わりで調べた。
方法
実験参加者:質問紙調査は87名(男22名,女65名)の学生に実施し,その内視線研究に28名(男子13名,女子15名)に協力してもらった。実験機材: Eye tracking glass (pupil Labs)視線観測装置。手続き:攻撃性にかかわる7項目(松崎ら,2004)のほか,日ごろのゲーム行動に関する質問紙に回答してもらった。そのあとで,PDゲーム実験に参加協力の了承が得られた人に,後日視線観測装置を装着して,実験を行った。参加者は,最初に,視線装置を装着し,キャリブレーションを行った後,視線観測装置に慣れてもらうため練習を行い,ゲームの操作を十分理解した上で,PDを行った。PDの対戦相手は,実験室外にいる匿名の相手であることを告げた。実際には,TFTを使用した。 従属変数:PDの各回(前回の結果の表示から,選択して現時点の結果が表示されるまで)の以下の画面上に固着した場所の順序を記号で記録し(1秒以上の場合,その秒ごとに記録),その回数を従属変数とした:視線移動数; 自:自分のID; 今:自分の今回の得点; 計:自分の累積点; 空:自分の空欄; 手:自分の出した手; 協:協調選択ボタン; 裏:裏切選択ボタン; 相:相手のID; 数:相手の今回の得点; 結:相手の累積点; 白:相手の空欄; 敵:相手の出した手。 倫理的配慮:調査・実験中不快を感じたらいつでも止めることができ,個人情報は一切取らないことなど了解を得た人のみデータを取得した。
結果と考察
  自分と相手の選択とそれによる次の自分の選択の決定,参加者の攻撃性および,それらの交互作用を独立変数とし,PDゲームのインターフェイスの各部位への視線固着回数および視線移動回数を従属変数とする,多変量回帰分析を行った。その各目的変数に対する重回帰分析の標準偏回帰係数を表1に示す。
 大まかな違いとしては,前回の選択情報の参照による現時点の意思決定にかかわる視線固着部位は,自分の今回の得点,自分の累積点,相手の今回の得点に様々な有意差がみられた(表1上)。とりわけ,「相手の今回の得点」への視線固着回数において,4次の交互作用が1%水準で有意となり,単純傾斜分析を行った結果,総じて調和状態が維持され,攻撃性が低いほどそこへの固着回数が高まることが分かった。
 これに対し,現時点の選択情報から次回の選択決定への意思にかかわる視線固着部位として自分の出した手,協調選択ボタンにおいて,様々な有意差がみられた(表1下)。ここではとりわけ,自分の出した手において,4次の交互作用が1%水準で有意となり,単純傾斜分析を行った結果,概ね調和状態が維持され,攻撃性が低いほどそこへの固着回数が高まることが分かった。
 視線固着の計測は,両者の選択が決定して得点が払われてから,次の両者の選択が決定する直前までであるが,前回の対戦状況の情報によって選択してしまった状況(n-1)回目とn回目の現在の状況から次の手を選択しようとしている状況が視線の固着部位に対してほぼ同じ影響を持つはずであるが,影響の分布が大きく異なっていることが示された。このことは,各回の視線固着回数に前半の現在の意思決定を確認する領域と,現在の情報をもとに次の意思決定を模索する領域に分かれていることを意味し,それぞれが異なる影響を持ち,それがさらに,参加者の持つ攻撃性と深く絡んでいることが示唆された。これを単なる回数の分析として行うには限界があり,今後,この視線の推移構造を調べていく必要がある。
文献
松崎展也・渡辺広人・佐藤公代 (2004), テレビゲームの攻撃性に関する教育心理学的研究愛媛大学教育学部紀要,51,45-52.
Tanida, S., and Yamagishi, T.(2010), Testing Social Preferences Through Differential Attention to Own and Partnerʼs Payoff in a Prisonerʼs Dilemma Game., LETTERS ON EVOLUTIONARY BEHAVIORAL SCIENCE, 1(2), 31-34.
謝辞
この研究は,愛知みずほ大学人間科学部の学生鷲野祐典による平成30年度卒業論文のデータの一部を再分析したものである。

キーワード
囚人のジレンマゲーム/視線行動/攻撃性


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