発表

1C-006

資源分配について話し合うことは恵まれない人への配慮を高めるか

[責任発表者] 上島 淳史:1,2
[連名発表者・登壇者] 亀田 達也:1
1:東京大学, 2:日本学術振興会

目的:資源の分配は重要な社会的決定である。分配に関して人々は様々な選好を持つため(Engelmann & Strobel, 2004),人々の意見をまとめることは困難である。本研究ではこの問題が話し合いの機会を導入することで緩和される可能性を検証した。これまでに分配について集団決定する際に最不遇の人の利益が中心的な議題となることが示されている (Frohlich & Oppenheimer, 1992)。本研究では話し合いの経験で個々人が最不遇者の利益となる分配法を支持するようになると予測した。

方法:参加者(北海道大学の学生,実験1: 156人[平均年齢19.3歳,男性99人], 実験2: 166人[平均年齢19.31歳,男性91人])は別の実験の参加者3 人にお金を分ける決定を行った。3つの分配法を設けた(図1)。3 人の受け取る総額で優れた功利主義選択肢,平等性で優れた平等主義選択肢,最不遇の人が受け取る額の大きさで優れたマキシミン選択肢である (Kameda et al., 2016)。全参加者はまず個人で40問の分配の決定を行った(フェーズ1)。次に合意経験条件(実験1: 100 人,実験2: 102人)の参加者は数問の分配課題をもう一人の実験参加者と合意の上で決定した (フェーズ2)。個人条件(実験1: 56 人,実験2: 64人)の参加者はフェーズ2も個人で分配を行った。最後にフェーズ3 で全参加者が個人で40問の分配を行った。実験1では予測を検証し実験2で実験1の結果を再現した。

結果と考察:合意形成を経験した参加者はその後の個人決定で平等主義分配を減少させてマキシミン分配を増加させる傾向が明らかになった(図2,実験1: 95% CI[0.21, 0.79],実験2: 95% CI[0.45, 0.92]; 多項ロジスティック回帰)。次に合意形成時の発話解析を行った。実験1では,低額は中額,高額よりも言及される傾向が示された(図3A,中額の係数の95% CI[-4.61, -2.16],高額の係数の95% CI[-2.29, -0.95]; ゼロ過剰ポアソン回帰)。実験2では,平等主義と功利主義に対応する情報を呈示しても(図1B),「最低」が最も言及されることを示した(図3B,係数の95% CI 中額: [-0.90, -0.55],高額: [-0.85, -0.51],ばらつき: [-0.74, -0.42],総和: [-0.81, -0.46])。実験2のフェーズ2では情報探索過程も計測した(Payne, Bettman, & Johnson, 1993,図3C)。合意形成中の参加者の48.0%の探索が「最低」から開始された一方で,個人決定中の参加者のそれは36.8%であり(図3D),合意形成中の参加者は「最低」から探索を始めやすかった(95% CI [0.02, 2.25]; ロジスティック回帰)。
 本研究では特に平等主義的な人々が合意形成の経験でマキシミン選好を高めた。この結果は,合意形成によって不平等の改善よりも不遇の改善こそが重要であると人々が気づく可能性を示唆している。

引用文献
Engelmann, D., & Strobel, M. (2004). Inequality aversion, efficiency, and maximin preferences in simple distribution experiments. American Economic Review, 94(4), 857–869.
Frohlich, N., & Oppenheimer, J. A. (1992). Choosing Justice: An Experimental Approach to Ethical Theory. University of California Press.
Kameda, T., Inukai, K., Higuchi, S., Ogawa, A., Kim, H., Matsuda, T., & Sakagami, M. (2016). Rawlsian maximin rule operates as a common cognitive anchor in distributive justice and risky decisions. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 113(42), 11817–11822.
Payne, J. W., Bettman, J. R., & Johnson, E. J. (1993). The adaptive decision maker. Cambridge, UK: Cambridge Univ Press.

キーワード
分配の意思決定/合意形成/マキシミン的配慮


詳細検索