発表

1B-018

旅行写真のSNS投稿における自己呈示スタイルと自意識および賞賛獲得・拒否回避欲求との関連

[責任発表者] 八城 薫:1
[連名発表者・登壇者] 花井 友美:2, 今野 久子#:2
1:大妻女子大学, 2:帝京大学

1.問題と目的
 近年,若年層を中心に注目されている旅の形の一つにインターネットで見た写真をきかっけに未知の旅行先に興味を持ち,旅先で写真を撮影し,InstagramやFacebookに投稿する「フォトジェニックな旅」がある。筆者らは,この「フォトジェニックな旅行者」が旅行及び写真撮影に対して自分なりの「こだわり」を持ち,旅行経験を通して自分らしさを確認しようという動機をもつと考え,旅行への「こだわり」と「自分らしさ」の確認という視点から検証を行っている( Hanai et al., 2018 ; Hanai et al., 2019)。本稿では,「フォトジェニックな旅行者」がSNSに旅行写真を投稿する心理的背景について,柴田 (2003)のブランドを通した自己呈示類型を参考に,自己過程の観点から検討することを目的とした。
2.方法
 調査対象者は,東京近郊に在住する15歳から85歳(男性:M40.1,SD14.4,女性:M35.8, SD13.3)の日本人9,440名(男性4,832名,女性4,608名)であった。調査は株式会社クロス・マーケティングに委託し,Web調査で行われた。調査期間は2018年8月17日から21日の5日間であった。質問内容は次の通りである。(1)SNSの利用行動(利用の有無,投稿経験の有無など)。(2)旅行時の写真の投稿経験の有無。(3)旅行写真の投稿における自己呈示スタイル(24項目5件法):柴田(2003)を基に,旅行写真の投稿に適するように文言を修正した。(4)自意識尺度(10項目7件法):菅原(1984)の21項目の尺度から公的自意識(α=.93),私的自意識(α=.93)の各尺度5項目ずつを採用して使用した。(5)賞賛獲得・拒否回避欲求尺度(小島ら,2003)の18項目の尺度から賞賛獲得(α=.91),拒否回避(α=.90)の各尺度5項目ずつを採用して使用した。
3.結果
 目的に沿って,調査対象者の中から「旅行写真の投稿経験がある」と回答した2089名(男性1,009名,女性1,080名)を分析対象とした。
(1)旅行写真の投稿における自己呈示スタイル:因子分析(主因子法・プロマックス回転)の結果,第Ⅰ因子「同調的」,第Ⅱ因子「独自的」の2因子が抽出された。尺度信頼性係数αは同調的が.94,独自的が.93であった。
(2)旅行写真の投稿における自己呈示スタイルと自意識,賞賛獲得・拒否回避欲求との関連(表1):まず旅行写真の投稿における自己呈示スタイル2尺度と自意識尺度および賞賛獲得・拒否回避欲求尺度との相関係数を算出した。その結果,自己呈示スタイルは自意識尺度,賞賛獲得・拒否回避欲求尺度のすべての下位尺度と0.1%水準で有意な正の相関が認められた。次に,旅行写真の投稿における自己呈示スタイル2尺度を従属変数,自意識尺度と賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度を説明変数とする重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。その結果,同調的自己呈示では賞賛獲得,拒否回避,公的自意識が有意な正の影響を示し,中でも賞賛獲得が強い影響を示していた。一方,独自的自己呈示では,賞賛獲得,私的自意識が有意な正の影響を示した。
4.考察
 柴田(2003)がブランドによる自己呈示を「同調的」と「独自的」の2類型で指摘したように,本研究におけるSNSへの写真投稿においても同様の構造が確認され,自身の「こだわり」と「自分らしさ」を表出したいという動機(自己志向的)と,流行に乗っている自分を表出したい同調的動機(他者志向的)での2つの志向性での説明の妥当性が確認された。さらに,同調的自己呈示スタイルには公的自意識,賞賛獲得・拒否回避欲求が正の影響を示していた。柴田(2003)は同調的自己呈示には積極的と消極的があるとしている。このことから,同調的自己呈示には「見られる自己」に対する意識から,賞賛獲得欲求による積極的な同調と,拒否回避欲求による消極的な同調の2つの過程があると考えられる。一方で独自的自己呈示スタイルでは,賞賛獲得,私的自意識が有意な正の影響を示した。独自的自己呈示は,自分の考え方や価値観を大切にしたいという「見る自己」の意識から,SNSで自分らしさを表現し,また周囲からも認められたいという欲求があることが示唆された。
5.引用文献
(1)Hanai, T., Yashiro, K., & Konno, H. (2018). Role of travel photographs as self-discovery and self-expression. Journal of Global Tourism Research, 3(2), pp.87-94.
(2)Hanai, T., Yashiro, K., & Konno, H. (2019). Photogenic Tourism as Self-Presentation. 2019 APacCHRIE & EuroCHRIE Joint Conference. (2019年5月発表予定) .
(3)柴田典子(2003).ブランドを通した自己呈示の類型とパーソナリティ 横浜市立大学紀要社会科学系列, 6, 41-80.
付記:本研究はJSPS科研費 JP18K11877の助成を受けたものです。

キーワード
フォトジェニックな旅/自己呈示/自意識


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