発表

1B-015

WHR0.7は本当に好まれるのか?
-日本人女性の現実に即したシルエット図を用いた検討-

[責任発表者] 鈴木 公啓:1
[連名発表者・登壇者] 岸本 泰蔵#:2, 今井 浩#:2
1:東京未来大学, 2:ワコール

問題
 ウエストのくびれは,第二次性徴に伴いあらわれてくるものであり,妊娠・出産が可能であることのシグナルとなる。そのため,女性のウエストのくびれは,魅力の評定において大きな影響力を有している。具体的には,ウエストがくびれているほど良い評価され,基本的は,ウエストとヒップの比(Waist-Hip Ratio; WHR)が0.7が最も魅力的とされている。Singh(1993)による検討以降,多くの国や文化において同様の基準が見いだされてきている。
 しかし,それらの多くは測定方法に問題があるといえる。まず,古い研究においては,手書きのシルエット図を用いており,その点でWHRの反映という点で妥当性が低い。また,近年はコンピュータグラフィックを用いたシルエット図が用いられているが,基本的には外国のソフトウエアが用いられており,そこのパラメータに基づいたシルエット作成は,日本人の体型にそぐったものになるという保障はない。そして,そもそもWHRを調整する際に,実態に基づいた値の調整になっていないことが大きな問題といえる。例えば,WHRが0.7であっても,ウエストを60cmとするのか,65cmとするかで全体像は変わってくる。どこを基準とするかが不明なまま,ソフトウエア上でただ値が調整されて生み出されたシルエット図が用いられている現状がある。
 このような状態において,実態に基づいたシルエット図を用いてWHRの魅力評価への影響を確認することは重要であろう。そして,そのためには,実データを元にしたシルエット図作成が重要である。
 そこで,本研究は,実データに基づいたWHR評価用の新たなシルエット図を作成し,人々のWHRに対する評価を明確にすることを目的とする。また,女性の身体の魅力評価においては,バストも影響を有していることが知られているため,バストについても実データに基づいて評価可能とする。つまり,WHRとWBR(Waist-Bust Ratio)を同時にコントロールしたシルエット図を作成したうえで,魅力に関する評価を行う。
目的
 WHRとWBRそしてBMIが魅力の評定に及ぼす影響について明らかにする。
方法
 対象:男性168名,平均年齢20.49,SD=1.33,女性239名,平均年齢20.08,SD=0.99)を対象とした。
 シルエット図:今回は,20代のシルエット図を作成することとした。株式会社ワコールが保有する延べ2142人の女性のデータを用いて作成した。当該データは,3Dスキャンと手作業によるマルチン式計測により計測したデータで構成されている。
 まず,20代のデータを抽出した後,さらに,身長が153~164cmの388件を抽出した。その後,BMIを元に,16以上18未満,18以上20未満,20以上22未満,22以上24未満の4つの層に分割した。そして,各層において,まずはWHRとWBRのそれぞれにおいて高群と低群に分割し,各象限における平均的身体を作成した。その上で,黒川・伊藤・篠崎・中野(1984)によるパターンベクトルの手法を用いて,WHRとBHRのパラメータを変化させ,WHRとWBRのそれぞれ,0.6,0.7,0.8,0.9をパラメータを代入し,BMI毎に16体のコンピュータマネキンを作成した。その上で,向かって上に18度,右に30度の角度にて平面に投射したものをシルエット図として採用した。最終的に,BMIが4層,WHRとBHRそれぞれ4パターンの組み合わせの16種で計64のシルエット図を作成した。これらについては,呈示の際にはカウンターバランスをおこなった。
 評価:それぞれのシルエット図について,全体を確認後,最も魅力的と思うシルエット図を一つ選択するように求めた。
結果
 男性において,BMI,WHR,WBRのそれぞれのパラメータ毎に魅力的として選択された割合(魅力度)をまとめたものを,Figure 1に示す。WHRはその値が大きいほど魅力度が大きく,WBRは逆U字で0.7が最も魅力度が大きく,そして,BMIは16-17が他に比べ最も魅力度が大きいことが示された。なお,女性における魅力度の分布は,男性とほぼ同様であった。
考察
 これまで多くの研究において,WHRは0.7が最も魅力的と評定されることが示されているが,改めて検討をおこなったところ,その結果は再現されなかった。今回は実際に日本において生活している人々の身体のバリエーションに基づいた刺激による検討であり,生態学的妥当性は極めて高い。架空のパラメータを元にし作成された刺激とは異なっており,それが影響している可能性がある。また,そもそも現代の若者において,WHRが魅力に影響していない可能性,つまり,ウエストのくびれが性的魅力のシグナルになっていない可能性もある。
 一方,バストが大きい方が,また,痩せている方が魅力的という結果も確認された。バストの影響とウエストの影響の違いについては,今後考察をおこなう予定である。

キーワード
ボディイメージ/WHR/シルエット図


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