発表

1B-013

身近な他者に相談出来ないときのインターネット利用の検討 (4)
―困りごとを抱えたときのネット利用と援助要請諸変数との関連 (2)―

[責任発表者] 稲田 尚史:1
[連名発表者・登壇者] 紀 日奈子:2
1:九州産業大学, 2:九州産業大学

問題と目的 紀,稲田(2019)において,「困り事に関する情報取得利益コスト尺度改訂版」を作成し,他者を頼りづらい状況でインターネット(以下,ネット)利用により援助希求を行うことと,対人的援助希求との関係について検討した。その結果,特性被援助志向性の高さは,ネット利用のポジティブイメージやネット利用志向性と関連し,対人的援助希求とネット利用による援助希求とは基本的に類似していることが認められた。しかしながら,援助要請スタイルとネット利用志向性との関連が認められず,また,被援助に対する懸念や抵抗の強さとネット利用志向性の高さとの関連が認められるなど,ネット利用と対人的な援助希求とで異なる部分の存在が示唆されている。本研究では,ネットからの情報取得様態の類型化を試み,各類型と対人援助要請における援助希求様態との関連を検討する。
方法
<被調査者> 大学生118名(男性51名,女性67名)。平均年齢19.38歳(SD=1.71)。
<主な測定内容> (1)困り事に関する情報取得利益・コスト尺度改訂版(以下,利益・コスト尺度):「ポジティブ評価」,「ネガティブ評価」,「利便性評価」,「情報検索ストレス」,4因子29項目。(2)身近な他者へ相談しづらい悩み(経験頻度):「対人・社会面」と「心理・健康面」2因子9項目。(3)ネット利用志向性項目: 1項目。(4)特性被援助志向性尺度(田村・石隈, 2006):「被援助に対する懸念や抵抗感の低さ」,「被援助に対する肯定的態度」2因子13項目 (5)援助要請スタイル尺度(永井, 2013):「自立型」,「回避型」,「過剰型」3因子12項目。
結果
<ネットからの情報取得様態の類型化> 利益・コスト尺度の「ポジティブ評価」,「ネガティブ評価」,「利便性評価」,情報検索ストレス」の各因子得点を投入変数として,クラスター分析(Ward法)を行ったところ,3クラスターが抽出された。各クラスターの特徴を明らかにするため,各因子得点について,クラスターを要因として一元配置分散分析を行ったところ,ポジティブ評価(F(2,115)=56.81, p<.001), ネガティブ評価(F(2,115)=14.09, p<.001), 利便性評価(F(2,115)=81.56, p<.001), 情報検索ストレス(F(2,115)=3.17, p<.05)の主効果が有意であった。第1クラスターは「ポジティブ評価」が高,「ネガティブ評価」が低,「利便性評価」が高,「情報検索ストレス」が高,第2クラスターは,「ポジティブ評価」が中,「ネガティブ評価」が中,「利便性評価」が中,「情報検索ストレス」が高,第3クラスターは,「ポジティブ評価」が低,「ネガティブ評価」が高,「利便性評価」が低,「情報検索ストレス」が低の特徴を持つことが示された。
<ネット利用志向性とクラスターとの関連> ネット利用志向性について,クラスターを要因として一元配置分散分析を行ったところ,主効果が有意となり(F(2,115)=7.98, p<.01),第3クラスターのネット利用志向性が有意に低いことが示された。
<援助要請スタイルとクラスターとの関連> 援助要請スタイル尺度の3下位因子のそれぞれについて,クラスターを要因として一元配置分散分析を行ったところ,「自立型」の主効果のみが有意となった(F(2,115)=5.54, p<.01)。「自立型」得点は第1クラスターで最も高く,次いで第2クラスター,第3クラスターは最も低いことが示された。
<特性被援助指向性尺度とクラスターとの関連> 特性被援助し構成尺度の2下位因子について,クラスターを要因として一元配置分散分析を行ったところ,懸念や抵抗感の低さ(F(2,115)=3.09, p<.05), 肯定的態度(F(2,115)=6.15, p<.01)で主効果が有意であった。「被援助に対する懸念や抵抗感の低さ」について,第1クラスターと第2クラスターとの差に有意傾向,「被援助に対する肯定的態度」において,第3クラスターで有意に低い得点が認められた。
考察
 身近な他者に相談できないときにネット利用により情報取得を試みる際の,利益・コストをどのように捉えるかについて,クラスター分析により類型化を行ったところ,ネット利用をポジティブに捉え,利便性も高く評価する第1クラスター,ポジティブ評価,ネガティブ評価,および利便性評価ともに中程度の第2クラスター,ネガティブ評価が高く,利便性評価が低い第3クラスターの3類型が抽出された。
 ネット利用の頻度を尋ねた「ネット利用志向性」との関連では,ネット利用に関する「ネガティブ評価」が高くなるとネット利用が少ないことが示された。また,第1・第2クラスター間でネット利用頻度が変わらないことから,ポジティブ評価があまり高くない場合でも,ネガティブ評価が一定レベルを超えなければ,ネット利用による情報取得が行われていることが示唆された。これは,近年のネットでの情報検索に対する親和性の高さと関連している可能性が考えられる。援助要請スタイル因子の「自立型」得点が第2クラスターでやや低く,第3クラスターで最も低いことを勘案すると,第2クラスターは,対人的援助要請はやや苦手であるが,ネットによる情報収集は行うことができ,第3クラスターは,対人的援助要請,ネット利用による情報取得ともに適切に行いにくい特徴を持つことが推察される。また,第2クラスターでは,「被援助に対する懸念や抵抗感」が第1クラスターよりも高い傾向にあるが,ネット利用頻度は第1クラスターと変わらず,ネットでの情報取得に対する一定の懸念や抵抗はネット利用の抑制要因にはなりにくいものと考えられる。また,情報検索によって受けるストレスは,第3クラスターのみが低く,第1,第2クラスターでは高かったことから,「情報検索ストレス」はネット利用頻度が上がると高まるが,利用を抑制する要因とはなりにくいことが示唆される。

キーワード
インターネット利用/援助要請スタイル/被援助志向性


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