発表

1B-012

身近な他者に相談出来ないときのインターネット利用の検討 (3)
―困りごとを抱えた時のネット利用と援助要請諸変数との関連―

[責任発表者] 紀 日奈子:1
[連名発表者・登壇者] 稲田 尚史:2
1:九州産業大学, 2:九州産業大学

問題と目的 悩みを抱えたときに他者に相談したくても出来ない状況にある者や,他者を頼らない者が存在する(末木, 2013など)。このような人々にとって,身近にあるインターネット(以下,ネット)は,悩みを抱えた際の資源となり,得られる情報は問題解決への手がかりになり得ることが考えられる。紀・稲田(2017, 2018)の研究において,他者に直接相談しづらい悩みを抱えた際に,ネット検索をする者は多数存在し,リテラシーを意識しながら情報を得ようとする実態がうかがえた。こうした情報行動を取る場合,どのような期待や不安を抱くのかを詳細に把握するため,紀・稲田(2018)で作成した尺度項目にネット環境要因を加味し,身近な他者へ相談しづらい「困りごとに関するインターネット情報取得利益コスト尺度」を作成した。作成した尺度と,ネット利用,対人援助に関する諸変数との相関を吟味することにより,他者を頼りづらい状況でネットに対し援助希求をすることと,対人援助希求様態との関連を検討する。
方法
<被調査者> 大学生118名(男性51名,女性67名)。平均年齢19.38歳(SD=1.71)。
<主な測定内容> (1)困りごとに関するインターネット情報取得利益コスト尺度(以下,利益コスト尺度):ネット利用にメリットがあるという「ポジティブ評価(11項目,α=.83)」,デメリットを感じるとされる「ネガティブ評価(9項目,α=.82)」,情報が簡単に得られ活用できる「利便性評価(4項目,α=.78)」,情報探索時に感じる「情報検索ストレス(5項目,α=.74)」,計29項目・5件法。(2)身近な他者へ相談しづらい悩み(経験頻度):木村・水野(2004)を参考に項目を作成した,「対人・社会面(4項目,α=.71)」と「心理・健康面(4項目,α=.82)」の2因子から成る計9項目・5件法。(3)ネット利用志向性項目:身近な他者に相談しづらい悩みを抱えた際にネット利用を試みる度合い1項目・4件法。(4)特性被援助志向性尺度(田村・石隈, 2006):「被援助に対する懸念や抵抗感の低さ」,「被援助に対する肯定的態度」から構成される計13項目・5件法。(5)援助要請スタイル尺度(永井, 2013):「自立型」,「回避型」,「過剰型」の特徴を表す計12項目・7件法。
結果
<利益コスト尺度と特性被援助志向性尺度の関連> 「被援助に対する懸念や抵抗感の低さ」は,「ネガティブ評価」と負の相関(r=-.56),「情報検索ストレス」と負の相関(r=-.20)を示した。また,「被援助に対する肯定的態度」は,「ポジティブ評価」と正の相関(r=.28),「ネガティブ評価」と負の相関(r=-.23),「利便性評価」と正の相関(r=.26),「情報検索ストレス」と正の相関(r=.19)が示された。
<利益コスト尺度と援助要請スタイル尺度の関連> 「自立型」と「ポジティブ評価」(r=.26),「有効性評価」(r=.20)との間に正の相関が示された。また「回避型」と「ネガティブ評価」の間に正の相関が示された(r=.40)。
<ネット利用志向性について> 困りごとを抱えた際にネット上から情報収集を試みるかについて,「かなりある」,「よくある」と回答した者は,全体の7割(85人)に及んだ。「ネット利用志向性」と「ポジティブ評価」(r=.49)および「利便性評価」(r=.34)との間に正の相関,悩み経験頻度の「心理・健康面」との間に正の相関(r=.22),「被援助に対する懸念や抵抗感の低さ」との間に負の相関(r=-.33),「被援助に対する肯定的態度」との間に正の相関(r=.22)が示された。
考察 利益コスト尺度得点と特性被援助志向性各下位因子得点との相関をみると,被援助に対して肯定的であることとネット利用に対するネガティブイメージの低さ,およびポジティブイメージの高さと関連することがうかがえる。また,被援助に対する抵抗感とネット利用のネガティブイメージとの間に関係性があることが示された。さらに,援助要請スタイル尺度得点との相関から,「自立型」とネット利用のポジティブなイメージとの関係が推察され,「回避型」とネット利用のネガティブなイメージとの関係性が示唆された。以上により,対人援助希求とネット環境での援助希求とは基本的に類似していると考えられる。しかし「ネット利用志向性」について,ネット利用の「ポジティブ評価」や,「利便性評価」の高さがネットの利用志向性と関連している反面,援助要請スタイルとの関連は認められなかったことから,その差異について更に検討が必要である。また,被援助に対する懸念や抵抗感の低さとネット利用志向性の低さとの関連が示唆された。これは,対人援助希求での懸念や抵抗感が低い者はネット利用志向性が低いことを示すのに対し,対人的な援助要請が難しい者がネットで援助希求する可能性を示唆するものとして興味深い。一方で,悩み経験頻度とネット志向性との関係においては,「心理・健康面」の悩み経験頻度が高いと,ネットでの援助希求を行う傾向があることが示された。このことから,自身の心身の健康に関する悩みに関して,ネットでの情報探索によって問題解決を図ろうとすることが示唆された。

キーワード
インターネット利用/援助要請スタイル/被援助志向性


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