発表

1B-010

旅行キャリアの発達過程(3)
年代別でみた印象深い旅の経験と同行者

[責任発表者] 林 幸史:1
[連名発表者・登壇者] 岡本 卓也:2
1:大阪国際大学, 2:信州大学

目 的
 旅行キャリアとは,個人の旅行史における経験内容とそれにもとづくスキルや知識,さらには,過去の経験に対する意味づけや将来の旅行構想までをも含む概念である(林・岡本, 2018a)。人はその生涯において,ライフステージや社会的役割の影響を受けながら,旅行キャリアを発達させていく。これまで,林・岡本(2018a)は,下位技能の習熟,適切な問題解決のための知識の獲得,適切な評価基準の獲得という熟達者の3つの特徴を踏まえ,旅行熟達尺度を開発した。そして,円滑な移動,荷物の最少化,トラブル対処,評価基準の確立,肯定的解釈,記憶の集積という6因子構造を確認するとともに,旅行経験量との関連を認めている。さらに林・岡本(2018b)では,旅行熟達尺度を用いて,旅行キャリアの浅い低年初心者は,予定調和の体験を楽しむことで満足を感じるのに対して,経験を積んだ高年上級者は,不確実性の高い偶発的な体験を楽しむことで満足を感じることを明らかにした。これらの知見は,人は旅行経験を蓄積しながら,観光旅行のスキルや知識を獲得していくこと,またそれに伴い旅の楽しみ方も変化することを示している。
 旅行キャリアの形成には,旅行経験の質や量による影響はもちろん,ライフステージによる影響も大きく関与している。本稿では,個人の旅行経験の質的な側面として印象深い旅の経験(memorable tourism experiences:MTEs)に着目した。ライフステージの変遷に応じてMTEがどのように変化するのかを明らかにしたい。

方 法
【調査対象者】45~49歳,55~59歳のweb調査会社のモニター600名(男性300名, 女性300名)で,これまでの人生で印象深い旅行の思い出が「ある」と回答した人。
【調査内容】(1). 20代,30代,40代,50代の頃の印象深い旅の経験内容の自由記述, (2). 印象深い旅の経験内容のラベリング(健康回復,娯楽追求,新奇経験,文化見聞,自然体感,関係強化,現地交流,自己拡大から1つ選択), (3).各年代での同行者(一人旅,夫婦二人旅,夫婦と子の家族旅行,親戚や祖父母との親族旅行,親友との二人旅,友人とのグループ旅行,職場の団体旅行)。

結 果
【年代による印象深い旅の経験の違い】年代とMTEについてχ2検定を実施したところ,有意な連関が認められた(χ2 (21) = 95.26, p<.001)。図1は,残差分析の結果をモザイクプロットで示した結果である。長方形の横幅は,その年代でMTEとして選択された割合を表現している。塗りつぶされた長方形は他の年代と比べて,MTEとして選択されることが有意に多く,斜線の長方形は有意に少ないことを示している。20代の頃の旅行では,新奇経験,関係強化,自己拡大に関わる

旅の経験が印象深いものとして選択される傾向にあり,30代では,娯楽追求に関わる経験が,40代では,健康回復に関わる経験が,50代では,健康回復と文化見聞に関する旅の経験がそれぞれ印象深い経験として選択される傾向にある。
【年代による同行者の違い】年代と旅の同行者についてχ2検定を実施したところ,有意な連関が認められた(χ2 (18) = 392.03, p<.001)。図2は,残差分析の結果をモザイクプロットで示した結果である。20代では,親友との二人旅,友人とのグループ旅行,職場の団体旅行が有意に多く,30代では,夫婦と子の家族旅行が有意に多く,40代では,夫婦と子の家族旅行と,親族旅行が有意に多く,50代では夫婦二人旅が有意に多いことが認められた。

考 察
 人は,ライフステージに応じて旅の同行者を変えながら,旅の経験内容も変化させていることが明らかになった。今後は,MTEの変容パターンに基づき旅行者をセグメントするなどして,熟達度との関連についても検討したい。学会当日は,テキストマイニングによる分析に基づくMTEsの具体的な内容等についても報告する予定である。

※本研究はJSPS科研費 17H02254の助成を受けた。

キーワード
旅行キャリア/印象深い旅の経験/旅行熟達


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