発表

1B-009

部屋の明るさは倫理的行動に影響を与えるか
-Zhong et al.(2010)の概念的追試から-

[責任発表者] 村上 幸史:1
1:神戸山手大学

(問題)
 一般的に犯罪行動は夕方か夜に多いと言われている。これは他者の眼につきにくかったり,あるいは他者の眼を意識しづらいことが理由であると考えられる。明るさは人の非倫理的な行動にどのような影響を及ぼすのであろうか。
 Banerjee et al.(2012)では自らの非倫理的な行動を思い出すと,倫理的な行動を思い出した場合よりも,部屋が暗いと判断され,光に関係する品物を欲しがる傾向が見られている。またZhong et al.(2010)は,暗いところでは利己的な行動や非道徳的な行動が増えるという観点から,以下の研究を行っている。暗い部屋で作業した場合には,明るい部屋よりも,課題を解いた後の報酬のごまかしを増やしたり(研究1),また報酬の配分を決める独裁者ゲームを行わせた場合に,サングラスをかけると,かけない場合よりも相手に渡す配分金額を減らす傾向が見られた(研究2)。
 自らの非倫理的行動に関係なく,Meier et al.(2007)は悪い意味の単語を見た場合には,好ましい意味の単語を見た場合よりも,同じ図形を見ても暗いと判断したという結果もある。これらの傾向は日本においても,同様に当てはまるのだろうか。本研究ではZhong et al.(2010)の概念的追試を行い,これを検討した。

(方法)
参加者 大学生89名(男性41名・女性48名)
手続き 参加者には実験実習のためとして協力を求めた。初めに人数の関係で一度に行うのは難しいことを説明して,クジによって2つのグループに分かれてもらった。片方のグループには,暗室条件である隣の教室に移動してもらった。教室の形態は同じであるが,暗室条件では照明が統制条件の1/3になっており,中央部のみライトが点けられていた。この設定はZhong et al.(2010)に従っている。暗室条件の参加者にはライトのない席に座ってもらった。
 着席後,参加者には封筒を配布した。封筒には,3桁の数字が書いてある計算課題の問題用紙,回答用紙,小さな封筒が入っていることを提示した。次にこれから足し算の課題を行ってもらうこと,黒い枠で囲まれたブロックの中にそれぞれ1つだけ,足して10になる数字のペアが含まれており,5分間の間にその数字のペアをできるだけ見つけ出してもらうこと,見つけ出した数字のペアは丸で囲むこと,問題用紙や回答用紙に名前を書く必要はないことを教示した。さらに5分経過した後に,見つけた数を報告してもらい,見つけた数に応じて,抽選で5名に図書カードが当たるクジを渡すことを説明した。課題のやり方については,回答用紙の裏にも書いてあることも告げた。
 計算課題を行ってもらい,無記名の問題用紙を回収した後,回答用紙に見つけた数と性別,年齢,問題の難易度(5段階)を記入してもらった。その後クジの入っている封筒を取り出して20枚のクジを確認してもらい,このクジで抽選を行うことを強調し,数字のペアを見つけた数だけ,クジを取り出してもらった。クジの残りと回答用紙は封筒に入れてもらい回収した後,元の教室に合流して,抽選をしたあと,デブリーフィングを行った。
 本研究では匿名で回答してもらうために,回答用紙と計算課題の問題用紙を照合する必要がある。回答用紙の裏に書かれた解答例の右下の数字と計算課題の問題用紙の右下の数字が一致するようになっていた。

(結果)
 計算課題の正答数の平均値は4.96個,これに対して報告数の平均値は5.99個,クジを取った枚数の平均値は6.38枚であった。問題の難易度は3.87であった。
 次に報告数と正答数,クジを取った枚数と正答数の差をそれぞれ求めた。報告数と正答数の差については,正しく報告した者が45名,多く報告した者が39名,逆に少なく報告した者が5名であった。クジを取った枚数と正答数の差については,正しくクジを取った者が36名,多く取った者が47名,逆に少なく取った者が12名であった。
これらの値について,統制条件と暗室条件の比較を行ったところ,どちらも正の値(ごまかしをしている)であり,暗室条件の方が高かったが,t検定による有意差は見られなかった(報告数と正答数の差: t(87)=0.68, n.s. ; クジを取った枚数と正答数の差: t(60)=1.22, n.s. Figure1及びFigure2参照)。
 ただし,上記したように少なく取った者が勘違いした可能性があるため,これら12名を除いて分析したところ,暗室条件の方が高いという有意な傾向が見られた(t(50)=1.68, p<.10,Figure2修正後参照)。

(考察)
 本研究はZhong et al.(2010)の概念的追試を行った。彼らの研究では実際のコインを使用しているため,クジを用いた本研究では,明るさの効果が弱かった可能性がある。

キーワード
他者/薄暗い部屋/不正行為


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