発表

1B-008

成人中・後期における余暇活動の年代・性差

[責任発表者] 丹下 智香子:1
[連名発表者・登壇者] 西田 裕紀子:1, 富田 真紀子:1, 中川 威:1,2, 大塚 礼#:1, 安藤 富士子:1,3, 下方 浩史:1,4
1:国立長寿医療研究センター, 2:日本学術振興会, 3:愛知淑徳大学, 4:名古屋学芸大学

【目的】「余暇活動」は仕事や家事以外の自由な時間に行う活動であり,生きるための活力となり得るものである。さらに余暇活動は,高齢者の身体機能や認知機能の維持に関連する可能性が示唆されるなど,長期的に心身の健康維持に関与することが推測されるため,その実態を詳細に把握することが重要と考えられる。そこで本研究は成人中・後期における余暇活動の実態について,年代・性差の観点から解明することを目的とする。
【方法】分析対象 「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の第7次調査(2010.7-2012.7)に参加し,余暇活動に関する質問票に回答した2326名(男性1177名,女性1149名。年齢:40-91歳,平均61.4±12.8歳)を分析対象とした。
余暇活動の測定 Verghese et al(2003),内閣府(2003)を参考に作成した質問票を用いて,面接調査時に過去2年間の余暇活動について訊ねた。評定は,余暇活動20項目(下記参照)に関する各活動頻度について「1. していない」,「2. 年に1回~数回」,「3. 月に1回~3回」,「4. 週に1回程度」,「5. 週に2回~3回」,「6. 毎日」の6段階で回答を求めた。
<余暇活動の項目>「新聞を読む」「本を読む」「物を書く(日記・楽しみのための執筆など)」「クイズ・クロスワードパズル」「盤ゲーム・カードゲーム(将棋・トランプなど)」「集団での討論(勉強会や集会など)」「楽器の演奏・合唱」「創作(書道・絵画・写真・和裁など)」「芸術鑑賞(映画鑑賞・音楽鑑賞・観劇など)」「パソコン(インターネット・メールなど)」「個人競技(テニス・ゴルフなど)」「チーム競技(野球・バレーボールなど)」「エクササイズ(体操・ヨガ・エアロビクス・太極拳など)」「水泳」「ウォーキング」「ジョギング」「ハイキング・登山」「釣り」「庭仕事(家庭用の野菜作り・盆栽など)」「旅行(日帰り・泊りがけを含む)」
解析 (1)余暇活動20項目の全項目合計点を算出し,全余暇活動得点とした。(2)余暇活動20項目について,探索的因子分析(Promax 回転,最尤法)を行った。その際,因子負荷行列において一つの因子だけに絶対値で.30以上の負荷を持つことを選定基準とした。そして選定された各因子の項目合計点を算出し,各下位尺度得点とした。(3)これらの各得点を従属変数,年代(40-64歳を成人中期群,65歳以上を成人後期群とした),性,年代×性の交互作用項を独立変数とする分散分析を行った。
倫理的配慮 当センター倫理・利益相反委員会の承認を得た。対象者からは書面による同意を得た。
【結果】まず探索的因子分析の結果,「知的刺激系活動」(パソコン,芸術鑑賞,盤ゲーム・カードゲームの3項目),「日課的活動」(庭仕事,ウォーキング,新聞を読むの3項目),「創造的活動」(物を書く,創作の2項目),「スポーツ系活動」(チーム競技,ジョギングの2項目),「エクササイズ系活動」(エクササイズ,水泳の2項目)の5因子が抽出された。年代・性別に算出したこれら5下位尺度得点間の相関は-.04〜.27であった。
 次に分散分析の結果の概略を述べる。知的刺激系活動得点およびスポーツ系活動得点については年代,性,年代×性の有意な効果が示され,成人中期男性が最もこれらの活動を頻繁に行っていることが示唆された(知的刺激系活動:年代,性,年代×性の順にF=367.61, p<.001,F=118.44, p<.001,F=10.44, p<.01。スポーツ系活動:F=30.97, p<.001,F=63.98, p<.001,F=5.66, p<.05)。創造的活動得点およびエクササイズ系活動得点については年代,性の有意な効果が示され,いずれも成人中期より後期,男性より女性が頻繁にこれらの活動を行っていることが示唆された(創造的活動:F=198.71, p<.001,F=51.59, p<.001,F=0.71, n.s.。エクササイズ系活動:F=4.58, p<.05,F=61.08, p<.001,F=1.75, n.s.)。日課的活動得点および全余暇活動得点については年代,年代×性の有意な効果が示され,いずれも成人後期男性が最も高得点であった(日課的活動:F=347.12, p<.001,F=0.26, n.s.F=17.98, p<.001。全余暇活動:F=12.14, p<.001,F=3.51, n.s.F=9.82, p<.01)。
【考察】本研究の結果から,余暇活動には主に認知的領域に関係する活動(知的刺激系活動,創造的活動)や身体的領域に関係する活動(スポーツ系活動,エクササイズ系活動)などがあるものの,各領域の中でも年代や性別により,異なる活動を選択的に行っている可能性が示唆された。特に年代に関しては,その時点での自己の認知機能や身体的機能に合わせて余暇活動の内容を変えている可能性も考えられるが,逆に既述のとおり,これらの機能を維持するために有効な活動が存在する可能性もあるため,今後の詳細な検討が必要であろう。
 一方,仕事や家事といった活動での時間的拘束が最も少ないであろう成人後期男性が,日課的活動得点や全余暇活動得点において最も高得点を示したように,余暇活動に費やすことができる時間は他の活動に費やす時間と連動する。そのため,余暇活動単独ではなく,仕事や家事といった活動も合わせて心身諸機能との関連を検討することが必要であろう。
【引用文献】
内閣府 (2003). 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査(平成15年度). https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h15_sougou/pdf/0-1.html.
Verghese, J., et al. (2003). Leisure activities and the risk of dementia in the elderly. The new England journal of medicine, 348, 2508-2516.

キーワード
余暇活動/成人中・後期/年代・性差


詳細検索