発表

1A-020

嘘をつくことに対する認識の日英比較

[責任発表者] 太幡 直也:1
[連名発表者・登壇者] ヴレイ アルダート#:2
1:愛知学院大学, 2:ポーツマス大学

 嘘をつくという行為全般をどのように考えているかは,嘘をつくことに対する認識と呼ばれる(太幡, 2015, 2016; Tabata, 2017)。太幡(2015)は,嘘をつくことに対する認識尺度を作成した。この尺度は,嘘をつくことに対する否定的認識(以下,否定的認識),嘘をつく上手さの上達可能性の認識(以下,上達可能性の認識),嘘をつく上手さの遺伝規定性の認識(以下,遺伝規定性の認識)の三つの下位尺度で構成される。
 本研究の目的は,嘘をつくことに対する認識に文化差がみられるか否かを検討することである。文化は,明示的な言語的コミュニケーションで伝えられる情報が重視されるか否かという,コミュニケーションスタイルの点で分類されている(Hall, 1976; Liu, 2016)。コミュニケーションスタイルの文化差を踏まえると,明示的な言語的コミュニケーションで伝えられる情報が重視されない文化では重視される文化に比べ,嘘をつくことは状況に依存したものであると認識されやすいため,嘘をつくことに対する認識のうち,否定的認識が弱いと予測される。本研究では,前者の文化に属するとされる日本人と,後者の文化に属するとされるイギリス人を取り上げ,嘘をつくことに対する認識尺度(太幡, 2015)の下位尺度を比較する。

方法
 調査対象者 母国で生活するイギリス人,日本人を対象に調査を実施した。イギリス人101名(男性34名,女性67名,平均年齢20.00歳(SD=4.28)),日本人149名(男性49名,女性100名,平均年齢20.30歳(SD=0.97))を分析対象とした。
 調査時期と方法 調査は2018年10月から2019年3月に実施した。オンライン上でのアンケート作成ツール(Qualtrics)にて,英語,日本語で調査サイトを作成し,大学等で調査の告知を行った。そして,告知に応じた者に調査サイト上で調査に参加してもらった。なお,イギリス人を対象とした調査は,第一著者が英語により調査サイトを作成した後,2名のネイティブの校閲を経てから実施した。
 質問項目 嘘をつくことに対する認識尺度(太幡, 2015)の否定的認識(7項目; e.g., 「どんな理由であれ,嘘はついてはいけない」),上達可能性の認識(4項目; e.g., 「嘘をつくことに慣れれば,嘘をついていない時と同じような振る舞いができる」),遺伝規定性の認識(3項目; e.g., 「親が嘘をつくことが下手だと,子どもも下手である」)に,「1.全くそう思わない」から「7.非常にそう思う」の7件法で回答するように求めた。なお,併せて,日常生活において嘘をつく際の言語的方略についても回答するように求めていた。本稿では割愛する。

結果と考察
 嘘をつくことに対する認識尺度の下位尺度の平均値を算出し,分析に用いた(イギリス:α=.66~.85,日本:α=.66~.86)。国ごと下位尺度間の相関係数を,Table 1に示す。国を独立変数,嘘をつくことに対する認識尺度の下位尺度得点を従属変数とする多変量分散分析では,国の効果が有意であった(HotellingのT2=.13, F(3, 246)=10.53, p<.001, ηp2=.11)。下位尺度ごとに比較した結果を,Table 2に示す。日本はイギリスに比べ,否定的認識,上達可能性の認識が低かった(t(248)=4.38, 3.03, ps<.001, d=0.56, 0.39)。
 以上の結果は,嘘をつくことに対する認識に文化差がみられることを示唆するものである。文化差がみられた認識のうち,否定的認識については,コミュニケーションスタイルの文化差(Hall, 1976; Liu, 2016)に基づく予測を支持する結果が得られた。また,上達可能性の認識について,日本の方がイギリスよりも低い理由としては,少なくとも意識レベルでは,日本人の自己評価が欧米に比べて低いため(e.g., Kitayama, Markus, Matsumoto & Norasakkunkit, 1997),上手に嘘をつくことに対する自己効力感が低いことが反映された可能性が考えられる。

キーワード
嘘をつくことに対する認識/文化差/コミュニケーションスタイル


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