発表

1A-019

海上保安庁職員の使命感と職務ストレス

[責任発表者] 鞠子 弘喜:1
1:筑波大学

【目的】
 本研究は,海上保安庁の最前線の現場において勤務する陸上及び船艇職員がどのような使命感を持って職務に取り組んでいるのかを明らかにし,職務を遂行するうえで生起する職務ストレッサー (ストレス要因) を探索することを目的とする。廣川(2011)は,海上保安官の日常のストレッサーが,「職場での人間関係」54.9%,「日常の業務」44.0%,「生活上・経済上の問題」22.5%,「家庭問題」17.6%,「職場以外での人間関係」7.7%であったと報告している。使命感に関する研究では,東日本大震災で職務上使命感を抱いた者を調査した,相川・松井(2016)がある。その結果,同研究では使命感を抱く人は,「自己目的型タイプ」,「目前対処型タイプ」,「社会貢献型タイプ」,「自然体型タイプ」の4類型に分類された。救助活動・援助活動や災害復旧活動を行った消防官や警察官は,任務の自覚を内包する「目前対処型タイプ」に分類されていた。
本研究では,海上保安庁職員の使命感を「課せられた職務に誇りを持ち,やりがいを感じながら遂行しようとする気概」と捉えることとする。
【方法】
 面接調査時期・方法:2018年5月下旬~6月上旬。1時間程度の半構造化面接による調査。
調査場所: 神戸海上保安部,横浜海上保安部,羽田特殊救難基地,新潟海上保安部,新潟航空基地,および停泊中の巡視船船内。
調査対象者:現場での業務を主たる業務とする海上保安庁職員の中から,陸上勤務職員及び船艇勤務職員18名(陸上勤務職員6名,船艇勤務職員12名,平均年齢28歳)。
【結果】
 職務ストレッサー:『職務ストレッサー』は,「職務」,「物理的環境」,「対人関係」,に大別され,それぞれ次の14カテゴリーを抽出した。
使命感:『使命感』は,「使命感」と「誇り」に大別され,それぞれ次の5カテゴリーを抽出した。結果はTalbe-2のとおりである。
使命感を感じる場面:「使命感を感じる場面」としての発言は,「人命に関わる案件に携わったとき」,「海難情報が入った時」,「海難現場に臨場したとき」,「密漁の取締りを実施したとき」が多かった。
数量化Ⅲ類による解析:生成された職務ストレッサーの14カテゴリーについて,数量化理論第Ⅲ類よる解析を行った。その結果,『緊張や不安を伴う職務』,『仕事が滞っている』,『船舶環境と自己の役割』,『対人関係や閉塞感』の4つに分類された。結果をFig-1に示す。
生成された使命感の5カテゴリーについて,同様に数量化理論第Ⅲ類による解析を行った。その結果,『職務的使命感』『国益を守る使命感』『社会的使命感』の3つに分類された。

【考察】
 海上保安庁職員が持つ職務ストレッサーの分類:職務ストレッサーは,14のカテゴリー(Table-1)が抽出された。これら職務ストレッサーは,「緊張や不安を伴う職務」,「仕事が滞っている」,「船舶環境と自己の役割」,「対人関係や閉塞感」の4つに分類された。この結果は,廣川(2011)の調査による日常のストレッサーである「職場の人間関係」,「日常の業務」と整合している。本研究では,これらストレッサーの内容を更に細分化したもので,職務に特化したストレス要因が明らかになった。
使命感の分類:使命感は,5のカテゴリー(Table-2)を抽出した。また,使命感は,「職務的使命感」,「国益を守る使命感」,「社会的使命感」の3つに分類された。使命感を感じる場面としては,「人命にかかわる案件に携わったとき」,「海難現場に臨場したとき」,「密漁の取締りを実施したとき」などの発言が多かった。これは,相川・松井(2016)による,「職業的使命行動」と整合しており,任務の自覚を内包する「目前対処型タイプ」に分類される。
海上保安庁職員の職務ストレッサーと,使命感に関するカテゴリーを明らかにした研究は,本研究独自の知見であると考えられる。

キーワード
海上保安庁/使命感/職務ストレス


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