発表

1A-014

鉄道旅客の至急度と乗車姿勢が駅間停車中の不安になる時間と車外に出たい時間に与える影響

[責任発表者] 菊地 史倫:1
[連名発表者・登壇者] 山内 香奈:1
1:鉄道総合技術研究所

目 的
 人身事故や地震等の原因で運行停止を伴う輸送障害が発生した場合,鉄道旅客を列車内から早期に救済するため,走行中の列車は最寄り駅まで走行し,停車することが推奨されている(国土交通省,2018)。ただし,事故や災害の状況や列車の在線状況によって最寄り駅まで走行することができず,駅間に停車することがある。列車が駅間停車した場合,車内の旅客は運転再開して最寄り駅に到着するまで車内に閉じこめられることになり,不安や閉塞感を持つと考えられる。また,事故や災害の状況によって駅間停車が長時間に渡ることがあり,このような状況から旅客を救済するため鉄道事業者は非常はしご等を用いて,列車外に旅客を避難させることがある。駅間停車中の列車から旅客を適切に救済するためには,鉄道事業者が想定する旅客を避難させるべき時間と,旅客が避難したくなるまでの時間が一致する必要がある。また,旅客が目的地へ急いで移動しているような至急度や,車内での乗車姿勢(座位,立位等)によって,列車内に留まることができる時間が異なる可能性がある。そこで,本研究では旅客の立場から駅間停車中の列車における適切な対応方針を探ることを目的として,駅間停車直後の旅客の認知と感情を把握し,移動時の至急度や車内の乗車姿勢が駅間停車してから旅客の不安が高まるまでの時間と,車外に出たくなるまでの時間に与える影響について検討を行った。
方 法
 参加者 鉄道を週3から4日以上利用し,過去に利用しようとした列車の運行が20から30分以上停止した経験および乗車していた列車が駅間に20から30分以上停止した経験を持つ関東地方在住の19から79歳の928人(男性473人・女性455人)であり,平均年齢は47.77歳(SD = 10.97)であった。 実験計画 「移動時の至急度(普通条件・急ぎ条件)」と「車内の乗車姿勢(立位条件・座位条件)」の2要因参加者間計画であった。 手続き Web調査による場面想定実験を実施した。参加者は人身事故が原因で駅間停車をした想定場面のシナリオを読み,下記の調査項目を評価した。 調査項目 駅間停車直後の不安,閉塞感と早期案内に対する期待を6件法(1:全くそう思わない―6:非常にそう思う)で評価させた。駅間停車してから(1)旅客の不安が高まる始端時間と終端時間,(2)車外に出たくなる始端時間と終端時間を分単位で回答させた。ただし,(1)と(2)について(a)停車直後から不安を感じる/車外に出たい,(b)何分停車しても不安を感じない/車外に出たくならないの選択肢を設け,これらを選択した人は時間を回答しなかった。 有意水準 推測統計の有意水準はα= 0.05に設定した。
結果 と 考察
 駅間停車直後の不安,閉塞感と早期案内に対する期待ついて中央値3.5を基準値とする1群のt検定を行ったところ,全て有意な差が見られた(t(927) > 4.45)。不安はM = 4.07(SE = 0.04),閉塞感はM = 4.00(SE = 0.04),期待はM = 3.67(SE = 0.04)であった。列車が駅間停車をする状況は旅客に不安や閉塞感をもたらし,早期に停車理由を案内しないと不安や閉塞感をさらに高めることが示唆された。
 駅間停車後の時間経過により旅客の不安が高まるかは,一定時間経過後に不安が高まる旅客は全体の76.94%,停車直後から不安が高まるのは16.49%,不安を感じないのは6.57%であった。したがって,多くの旅客が停車直後から一定時間経過後に不安が高まることが示された。また上記(1)の始端と終端時間の平均値について実験計画に基づく分散分析を行ったところ,「車内の乗車姿勢」の主効果のみが有意であった(F(1,710) = 28.28)。座位条件よりも立位条件のときに不安が高まるまでの時間が短かった(d = .40)。
 駅間停車後の時間経過により車外に出たくなるかは,一定時間経過後に車外に出たい旅客は全体の74.46%,停車直後から出たいのは11.85%,出たくならないのは13.69%であった。したがって,多くの旅客が停車直後から一定時間経過後に車外に出たくなることが示された。また,上記(2)の始端と終端時間の平均値について実験計画に基づく分散分析を行ったところ,全ての主効果が有意であった(F(1,687) = 7.20, 27.86)。普通条件よりも急ぐ条件で,座位条件よりも立位条件で車外に出たくなるまでの時間が短かった(d = .20, .40)。さらに,交互作用が有意であった(F(1,687) = 5.36)。それぞれの単純主効果を検討したところ,至急度に関わらず座位条件よりも立位条件で時間が短かった(d = .77, .23)。また,座位条件でのみ,普通条件よりも急ぐ条件で時間が短かった(d = .51)。したがって,移動時の至急度よりも車内の乗車姿勢は不安が高まる時間や車外に出たくなるまでの時間に影響を与えることが示された。ただし,本研究は場面想定実験であったため,至急度よりも乗車姿勢による身体負担の方が想起しやすかった影響の可能性もある。
 以上の結果から,駅間停車時の車外避難を検討する際には旅客の乗車姿勢を考慮する必要性が示唆された。

キーワード
鉄道/災害/避難


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