発表

1A-013

対人認知における髪色の効果に関する実験的研究
処理人物との関係性に関連づけて

[責任発表者] 土肥 伊都子:1
1:神戸松蔭女子学院大学

目的
対人認知に関して,古くはAsch(1946)が言語情報を用いて印象形成における初頭効果を明らかにしたが,社会生活では,言語情報よりも顔情報の方が最初に触れる機会が多いと考えられる。その顔情報については,第一印象の変化のしにくさ(Berry,1990)や,認知資源が不足した場合に顕著となる利用可能性(川西,1995) などが明らかにされてきた。
そこで本研究では,顔情報の一つである髪色が金髪か黒髪かにより,第一印象がどう異なるのか,女性の同一人物の髪色だけを画像処理によって変えた刺激材料を提示して検討する。また,そのモデルと実験参加者との関係性により,印象形成がどう異なるかについても検討する。仮説は以下の通りである。第一に,金髪よりも黒髪の方が,良い印象を持たれるであろう。第二に,モデルとの関係が深い場合には,顔情報からの一般的な印象形成だけに依存することなく精査する傾向が強まるため,黒髪の方が好印象になるという傾向は弱まるであろう。
方法
Googleフォームを用いて,髪色条件別の2種類の実験材料一式(教示文,顔刺激,評定項目)を作成した。このURLを,インターネット上の学修支援システムの授業用の掲示板に掲載した。そして授業時間内に,女子大学生63名にいずれかの髪色の条件に割り当て,各自のスマートフォンを用いて,評定項目へ回答させた。女性モデルは23歳で,Hair Color Lab のアプリを用いてを金髪,あるいは黒髪に加工した。髪色以外の顔や背景は全く同一である。
教示文は,モデルとの関係性が深い方から,アルバイト仲間の場合には,「この写真の女性はあなたとアルバイト先で一緒に働くことになっているとします。あなたはその彼女にどのような印象を持ちますか。」と尋ねた,友人の友人の場合には,「・・・あなたの友達と偶然であったときその友達と一緒にいた人です。・・・」とし,赤の他人の場合は,「・・・街であなたとすれ違った人です。・・・・」とした。
3種類の関係性の場合全てについて,金子・門脇(2001)が髪型に関するイメージ実験で用いた項目の中から30項目を選び,5件法のSD法の形容詞対で印象を評定させた。
結果
 印象評定項目を因子分析(最尤法,プロマックス回転)し,「堅実性」「柔軟性」「独自性」「協調性」の4因子を抽出し,因子負荷量が0.4以上の項目の得点を加算し印象得点とした。
 この4印象得点に対して,2(髪色:金髪・黒髪)×3(関係性:アルバイト,友人の友人,赤の他人)の混合2要因の分散分析を行った。①堅実性は,髪色の主効果が有意であった(F(1,57)=6.749,p<.05)。すなわち,金髪(M=21.5)よりも,黒髪(M=25.9)の方が,堅実性の評価が高かった。②柔軟性は,いずれの効果もなかった。③独自性は,傾向レベルで交互作用効果が有意であった(F(1.76,107.46)=3.00(p<.10))。単純主効果の検定としてTukeyの多重比較検定(p<.10)の結果,金髪の場合,赤の他人は友人の友人の関係よりも,独自性が高く評価された(Fig.1)。④協調性は,F(1.73,103.86)=3.165(p<.10)となり,交互作用効果が傾向レベルで有意であった。Tukeyの検定(P<.10)の結果,黒髪の場合,アルバイトは友人の友人よりも,協調性の評価が低かった(Fig.2)。 
考察
 金髪よりも黒髪の方が好印象を持たれやすいという第一の仮説は,堅実性の点で支持された。第二の仮説についても,協調性に関しては支持され,アルバイト仲間という深い関係性で,黒髪の協調性の評価は低かった。これは,深い関係の相手に対しては認知資源が節約されることなく精査されたため,ポジティビティ・バイアスが生じにくいことによるものと解釈できる。そして,独自性については,友人の友人の場合よりも,赤の他人という浅い関係で,金髪が黒髪よりも高いという評価となった。これは,精査の必要性が低いと金髪への独自性の評価がより強まるものと解釈した。
*本研究は,神戸松蔭女子学院大学人間科学部 2019年卒 西濱凛音から,データの提供を受けた。

キーワード
対人認知/髪色/ポジディビティ・バイアス


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